【第1話】二千年後のあなたへ
深夢人
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ハンネスの元を去り、イヴはノアールに乗ってゆっくりとイェーガー先生の家を目指した。
カーンコーンカーン
もうすぐ着くという時、ウォール・マリアと外を繋ぐ、門の鐘が鳴る音がした。
調査兵団が壁外調査から帰ってきたのだ。
しかし、イヴに気にする素振りはなく、そのままイェーガー先生の家へ向かった。
『ノアールは此処で待っててね。』
目的の家の前に着くと、イヴはノアールから降りた。
ノアールの手綱を近くの柵にくくりつける。
コンコン
「はーい。」
ドアをノックすると、中から元気な女性の声が聞こえた。
『お久し振りです。イヴです。』
そう言うと、すぐにドアが開いた。
「イヴちゃんっ!久し振りっ!」
そう顔を見せたのは、イェーガー先生の妻のカルラだ。
『お久し振りです。カルラさん。先生はいらっしゃいますか?』
「やぁ。久し振りだね。イヴ。」
イヴの声を聞き付けてか、奥にいたグリシャ・イェーガーも顔を覗かせた。
『お久し振りです。イェーガー先生。』
イヴがニッコリと挨拶すると、グリシャはドアの前を開け、中へ入るよう促した。
『お邪魔します。』
それに答え、素直に中に入る。
パタンッ
「それで、今日はどうしたんだい?」
グリシャが先程まで座っていたであろう席の向かいにイヴは座った。
『今日はあたしの用事ではなく、お向かいに住んでいるご夫婦のお薬を頼まれたんです。』
イヴはそう言いながら、シンシアに渡されたメモをグリシャに渡した。
グリシャはそれを受けとると、中を確認する。
「あぁ。シフォンド夫妻の…キールの偏頭痛の薬だね。」
『えぇ。』
「ちょっと、待ってなさい。」
グリシャはそう言うと、奥に姿を消した。
カチャッ
「はい。これでも飲んで待っててね。」
グリシャが奥に消えるのと同時に、カルラが紅茶をテーブルに置いた。
『ありがとうございます。』
お礼を言い、一口飲んでからイヴは尋ねた。
『今日、エレン君とミカサちゃんは?』
いつもならイヴが顔を見せると、嬉しそうに寄ってくる2人が今日はいなかった。
「あの子たちなら、今、薪を取りに行っているわ。」
『そうなんですか。顔を見られなくて残念です。』
イヴは俯き加減にそう言うと、また一口紅茶を飲んだ。
「やぁ、待たせたかな?」
ちょうど、グリシャが薬を持ってきた。
『いえ。カルラさんとお話ししていたので…。』
「そうか…はい。これが、薬だ。」
グリシャは紙袋に包まれた物をイヴに渡した。
『ありがとうございます。』
イヴは引き替えに、シンシアから預かったお金をグリシャに渡す。
グリシャはそれを確認すると、必要な分だけ取り、残りをイヴに返した。
『では、あたしはこれで失礼しますね。紅茶、ごちそうさまでした。』
お礼を言いながらイヴは立ち上がる。
「お昼、食べていけば?」
カルラがそれを止める。
『そうしたい所なんですけど、用事があるので、また今度でも大丈夫ですか?』
イヴは少し困ったように笑いながら、カルラに断りを入れた。
「そう。残念ね。」
カルラの表情は本当に残念そうだ。
『また今度、ミートパイを持ってくるので、その時にお願いしても大丈夫ですか?』
イヴはその深翠色の双眸をしっかりとカルラに向け、微笑んだ。
まるで、約束だ…と言うように。
「イヴちゃんのミートパイを出されたら、諦めるしかないわね。約束よ?」
『はい。では、お邪魔しました。』
イヴはそう言って、ドアに手を掛けた。
ギィ
「また今度。」
グリシャも声を掛ける。
イヴは2人に会釈をし、ノアールに乗ってその場を去るのだった。