呪術廻戦
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
遥かなエンパシー
-高専編1-
「イタズラな風がーーーッ!」
渡り廊下を歩いてる途中、背後から走って来る足音が聞こえて声の主に気づいて振り向くも、もう遅い。私のスカートは、両手で乱暴に捲り上げられた。仕事服にしてるセットアップのスーツをクリーニングに出した翌日は、白シャツにカーディガンを羽織り、黒のロングスカートというオフィススタイル。その服装の日に限って、何故、五条くんに見つかってしまうんだろう。そしてもう、スカート捲りなど小学生で卒業して欲しいと心から願った。
彼の目的は二歳年上の事務教員のパンツを見ることではない。暇つぶしが目的なのだ。悪戯というよりは嫌がらせだ。最初やられた時にはあっさりと下着を見られてしまったが、何度も同じ目に合えばそれなりに対策を思いつくもので…五条くんはスカートの中身を目にして、舌打ちしてげんなりとした表情を見せた。いや、いくら何でも失礼では…?と、心の中で呟くも、声に出したところで無視されるだろう。
「スパッツ履くとか小学生かよ」
「五条くんが捲りに来るから履いてるんです。小学生はどっちですか…」
「そうだよ悟。スパッツが見えたら意味がない。呪力操作で太ももギリギリまでゆっくり捲らないと。履いてるかどうかわからないスリルを楽しむのが正解さ」
クス、と小さく笑いながら彼の後を追って歩いてきた夏油くんは、窘めるような口調で十倍くらいおかしなことを告げた。彼は最初に出会った頃は五条くんの悪戯を止める側だったのに、ここ最近は五条くんの悪影響を受けてか、手は出してこないけど悪ノリ台詞が多くなってきた。
180cm超えの長身の男子学生に囲まれ、萎縮してしまう。呪術高専の事務教員を務めて二年目になり、色々と慣れたつもりではあったが、この二人を前にするとオオカミを前にしたウサギの気持ちになってしまう。いじめられる…。改めてみると二人ともタイプの違う美男子で見惚れてしまいそうになる――ただし、幼稚な言動でウットリすうるような時間は即、打ち消される。
呪術高専至上、最強と言われる二人――五条くんと夏油くん。
御三家のひとつ、五条家に六眼持ちとして生まれた五条くんは既にお墨付きの実力で現代の呪術師最強と噂されている。
夏油くんは一般の家庭に生まれながらも、その才からスカウトされて呪術高専にやってきた天才肌である。同じ年に才能に恵まれた二人が現れ、出会い、徐々に気が合う仲となって………先生のスカート捲りとはいかがなものか。
「先生ェ、大丈夫ですかぁ」
ひらひらと手を振りながら二人の間に割って入ってくれる優しい女子生徒、家入さんも彼らと同学年になる。呪術界でも反転術式を使える貴重な人材だ。この回復術を他者に使用できる術師は片手で数える程しかいないらしく、感覚的なセンスが必要なようだ。
「ほんと、こいつ等クズ過ぎる」
「もう、二人とも!家入さんにまでゴミクズって言わせないで下さい!」
「琴音センセ、そこまで言ってませんって。はは、ウケる」
つい口が滑ってしまったが時既に遅し。再びにじり寄る五条くんの前に、家入さんが割り込んで壁になってくれた。守ってくれる唯一の天使に見える。教員が生徒を頼りにするなよという話はさておき、こういう時、同性は頼りになるものだ。
「五条も夏油も、貴重な人材を生徒からのセクハラで辞めさせたいの?学長に怒られるどこじゃ済まないよ」
「バレなかったらいいんですぅ~~」
「ぶりっこはやめて下さい、五条くん…」
「琴音先生は私たちを訴えるなんてしないさ、ねぇ?」
「静かに恫喝しないで下さい、夏油くん…」
サングラスの奥で目を細めて笑う五条くんの肩を叩き、家入さんは中庭の方からのしのしと歩いてくる夜蛾学長を指さした。ガッシリした体型が少しずつ加速して、まるで熊が猛突進してくる姿を思い浮かべた。驚きのあまり動けず固まった二人組が、学長の愛の鉄拳を受けるまであと数十秒――。ガツン!と鈍い音がして彼方へ吹っ飛ぶ二人を見守ってこそ、セクハラを受けた私が報われる瞬間だ。学長が、女性教員へのセクハラを許さないマトモな方でよかった。青い空に響く家入さんの笑い声に混ざって、私も小さく笑い声を立てた。
学業と任務の両立も大変だし、この子達は日々呪いを祓っては日本の平和に貢献している。想像を絶する悲惨な光景も体験してきた事だろう。束の間だとしても、普通の学生みたいな楽しい時間が少しでも多く過ごせますようにと願うばかりだった。
□ □ □
スーツをクリーニングに出す時だけ着用する、黒のロングスカート。これを身に纏っている日は二年前の回想が頭の中に過っては、懐かしくなり、胸がキリリと痛んだ。
私の行動で運命が変わるとも誰かを救えたとも思えないが、それでもあの頃に戻れたらと――、目付きが変わってしまった五条くんを目の当たりにする度に思う。例の事件の後、一見あっけらかんとしてるような日もあるが、口元は笑っていてもサングラスから見え隠れする眼光の鋭さが怖かった。
単独任務で向かった集落の人間を百人以上呪殺して、夏油くんは呪術高専を追放された。二年経過した今でも彼は見つかることなく、『最悪の呪詛師』として指名手配されている。
最悪の形で同級生と決別することになった二人――五条くんと家入さんは、今年の春で四年生に進級した。彼らは今も任務をこなしつつ修行や勉強に励み、術師としての腕を磨き続けている。
事務教員として就職した当時は十九だった私も歳を重ね、今年で二十一歳になった。
-高専編1-
「イタズラな風がーーーッ!」
渡り廊下を歩いてる途中、背後から走って来る足音が聞こえて声の主に気づいて振り向くも、もう遅い。私のスカートは、両手で乱暴に捲り上げられた。仕事服にしてるセットアップのスーツをクリーニングに出した翌日は、白シャツにカーディガンを羽織り、黒のロングスカートというオフィススタイル。その服装の日に限って、何故、五条くんに見つかってしまうんだろう。そしてもう、スカート捲りなど小学生で卒業して欲しいと心から願った。
彼の目的は二歳年上の事務教員のパンツを見ることではない。暇つぶしが目的なのだ。悪戯というよりは嫌がらせだ。最初やられた時にはあっさりと下着を見られてしまったが、何度も同じ目に合えばそれなりに対策を思いつくもので…五条くんはスカートの中身を目にして、舌打ちしてげんなりとした表情を見せた。いや、いくら何でも失礼では…?と、心の中で呟くも、声に出したところで無視されるだろう。
「スパッツ履くとか小学生かよ」
「五条くんが捲りに来るから履いてるんです。小学生はどっちですか…」
「そうだよ悟。スパッツが見えたら意味がない。呪力操作で太ももギリギリまでゆっくり捲らないと。履いてるかどうかわからないスリルを楽しむのが正解さ」
クス、と小さく笑いながら彼の後を追って歩いてきた夏油くんは、窘めるような口調で十倍くらいおかしなことを告げた。彼は最初に出会った頃は五条くんの悪戯を止める側だったのに、ここ最近は五条くんの悪影響を受けてか、手は出してこないけど悪ノリ台詞が多くなってきた。
180cm超えの長身の男子学生に囲まれ、萎縮してしまう。呪術高専の事務教員を務めて二年目になり、色々と慣れたつもりではあったが、この二人を前にするとオオカミを前にしたウサギの気持ちになってしまう。いじめられる…。改めてみると二人ともタイプの違う美男子で見惚れてしまいそうになる――ただし、幼稚な言動でウットリすうるような時間は即、打ち消される。
呪術高専至上、最強と言われる二人――五条くんと夏油くん。
御三家のひとつ、五条家に六眼持ちとして生まれた五条くんは既にお墨付きの実力で現代の呪術師最強と噂されている。
夏油くんは一般の家庭に生まれながらも、その才からスカウトされて呪術高専にやってきた天才肌である。同じ年に才能に恵まれた二人が現れ、出会い、徐々に気が合う仲となって………先生のスカート捲りとはいかがなものか。
「先生ェ、大丈夫ですかぁ」
ひらひらと手を振りながら二人の間に割って入ってくれる優しい女子生徒、家入さんも彼らと同学年になる。呪術界でも反転術式を使える貴重な人材だ。この回復術を他者に使用できる術師は片手で数える程しかいないらしく、感覚的なセンスが必要なようだ。
「ほんと、こいつ等クズ過ぎる」
「もう、二人とも!家入さんにまでゴミクズって言わせないで下さい!」
「琴音センセ、そこまで言ってませんって。はは、ウケる」
つい口が滑ってしまったが時既に遅し。再びにじり寄る五条くんの前に、家入さんが割り込んで壁になってくれた。守ってくれる唯一の天使に見える。教員が生徒を頼りにするなよという話はさておき、こういう時、同性は頼りになるものだ。
「五条も夏油も、貴重な人材を生徒からのセクハラで辞めさせたいの?学長に怒られるどこじゃ済まないよ」
「バレなかったらいいんですぅ~~」
「ぶりっこはやめて下さい、五条くん…」
「琴音先生は私たちを訴えるなんてしないさ、ねぇ?」
「静かに恫喝しないで下さい、夏油くん…」
サングラスの奥で目を細めて笑う五条くんの肩を叩き、家入さんは中庭の方からのしのしと歩いてくる夜蛾学長を指さした。ガッシリした体型が少しずつ加速して、まるで熊が猛突進してくる姿を思い浮かべた。驚きのあまり動けず固まった二人組が、学長の愛の鉄拳を受けるまであと数十秒――。ガツン!と鈍い音がして彼方へ吹っ飛ぶ二人を見守ってこそ、セクハラを受けた私が報われる瞬間だ。学長が、女性教員へのセクハラを許さないマトモな方でよかった。青い空に響く家入さんの笑い声に混ざって、私も小さく笑い声を立てた。
学業と任務の両立も大変だし、この子達は日々呪いを祓っては日本の平和に貢献している。想像を絶する悲惨な光景も体験してきた事だろう。束の間だとしても、普通の学生みたいな楽しい時間が少しでも多く過ごせますようにと願うばかりだった。
□ □ □
スーツをクリーニングに出す時だけ着用する、黒のロングスカート。これを身に纏っている日は二年前の回想が頭の中に過っては、懐かしくなり、胸がキリリと痛んだ。
私の行動で運命が変わるとも誰かを救えたとも思えないが、それでもあの頃に戻れたらと――、目付きが変わってしまった五条くんを目の当たりにする度に思う。例の事件の後、一見あっけらかんとしてるような日もあるが、口元は笑っていてもサングラスから見え隠れする眼光の鋭さが怖かった。
単独任務で向かった集落の人間を百人以上呪殺して、夏油くんは呪術高専を追放された。二年経過した今でも彼は見つかることなく、『最悪の呪詛師』として指名手配されている。
最悪の形で同級生と決別することになった二人――五条くんと家入さんは、今年の春で四年生に進級した。彼らは今も任務をこなしつつ修行や勉強に励み、術師としての腕を磨き続けている。
事務教員として就職した当時は十九だった私も歳を重ね、今年で二十一歳になった。