企画もの
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やわらかな誘惑
「…な、何してるショお前!?」
自室に入るなり俺の目に飛び込んできた光景は、正座をして俺がベッドの下に隠していたグラビア雑誌をマジマジと食い入るように見ている琴音の姿だった。これが驚かずにいられるか。いや、無理ショ。
ピンクのパンプスが玄関にキチンと揃えて置いてあったのを見つけて、またアイツ茶でも飲みに来てんのかって思ってリビング覗いたらいねぇから階段駆け上がって部屋入ったら…コレだ。俺の嫌な予感はたいてい当たる。
俺に気づくと琴音は開いていた冊子を慌てて閉じ床に置いて、手をパタパタと胸の前で仰ぎだす。
「座りながら携帯いじってたらイヤホンジャックがベッドの下に落っこちちゃって…それであの、見つけるつもりはなかったんだけど……」
何もかも見られちまった後の弁解を聞くほど辛いもんはない。俺が読んでるグラビアは海外モデルのもあるから、こいつにはかなり刺激が強かったんじゃないか?
「勝手に見てゴメン!」
手の平を合わせて素直に謝るコイツを前にとても怒る気にはなれなかった。驚きはしたがただの偶然で見つけちまったもんなら怒る事の程でもないだろうし。
小さい頃からよく知ってる仲なのだから、俺の趣味が『グラビア』って事も琴音は既に知ってるしな。
別にいいショ、と俺が呟いて部屋に入り後ろ手でドアを閉めると、安心したように琴音は笑っていた――そして、閉じていったん床に置いていたグラビア冊子を今度は堂々と開く。
おい、待て、何でまた見るんだ!?
時々、予想もつかないことをやる女だとは常々…だが今日ほどそれを強く思った日はない。
「でも、はじめて知ったよ。裕ちゃんってこーゆーボイ~ンとしてるのが好きなんだねぇ。私だって、…よいしょ、よいしょ」
ギンガムチェックのノースリーブワンピース…夏だからってカーディガンも羽織ってない。剥き出しになった肩に白い腕。俺より一回り小さいその両手で、琴音は自分の胸をわしっと掴んで寄せはじめた。
そのかけ声、色気がなさすぎるだろ。「よいしょ」ってお前…。
自分が触っているわけじゃないが、目の前で何度も寄せられる胸を見ればその柔らかさは一目瞭然。ワンピース越しに自分の胸を自分で触る琴音の小さな手、力をこめた指を見ればわかる。想像以上にマシュマロのようだ。
「あ、寄せれば谷間できる!ほら!」
アハハと笑うこいつは、俺が幼馴染だからって完全に油断してるッショ。その谷間の中に人指し指でも突っ込んでやろうかって気になるが、マジでやったとしてもきっとそれも笑って済まされそうだ。
「裕ちゃん、どうかな」
谷間が目の前にある。触りたい、出来れば後ろから遠慮なくまさぐりたい…って、言えるわきゃない言葉を飲み込んで俺は至極冷静を装ってその目の前にある胸から目を逸らした。目の毒とはこの事だ。
「バっ、バカな事言ってんなショ」
最初の一言目が上ずってしまい心の中の動揺が出ちまって、背中に汗が伝った。まったく冷静を装えてやしない。焦るな、焦るなよ裕介。ほんのちょっと生で、目前で、谷間を見せられたぐらいで動揺しちまうなんて、何か色々、ホラ、カッコ悪ィだろ。
真夏の午後、窓越しで狂ったように煩いセミの鳴き声が聞こえて、俺もいっそ狂っちまえれば楽なのになぁと淡々と思う。
「グラビアモデルたちはこのスタイルが売りで、仕事なんだよ」
俺が目の前に両手の平を差し出すと、琴音も自分の胸から手を離して俺の手の上に手をちょこんと乗せた。子供をあやす様な真似だが、これでいい。
「比べなくたってお前はそのままでいいッショ」
ぎゅ、と両手を握るとクーラーで冷えた手がひんやりと感じた。容易く包めるぐらいの小さい手だ。
「そのままが一番いい」
俺の手の熱が伝染していって、琴音の手もじわじわと温かさを取り戻していく。じわじわ、じわじわと……ア?
さっきから黙って俯いてる目の前の顔を覗き込めば、琴音は頬を赤らめて口元をニンマリとさせていた。
自分の胸を掴んで谷間を作って俺に平気で見せてきた奴が、俺の言葉ひとつで頬を赤らめる。何でだ。わかんネェ奴っショ。俺の理解の範疇を超えてんのに、可愛いって思っちまうのは何でだ。
理由は探すまでもない。自分の好きな子ならどんな表情でも行動でも、それが理解できなくても贔屓目で見ちまうもんなんだって、お前に教わったんだ。
「そんな嬉しいこと言われたら調子に乗っちゃいそう」
俺の手から自分の手をそろりと離してから、琴音は今度は手の平をピタリとあわせて自分の指と俺の指を絡ませた。これ、貝殻繋ぎってやつだ。
「裕ちゃんの指、キレイで長いね。羨ましい」
目を細めてうっとりした表情で俺の手を見つめる琴音の頬は、まだ紅色に染まったままだ。こんなにコイツを間近で顔を見たのは久々だ。視線を手元に落としているせいで伏し目がちになるこいつの長い睫の方がよほどキレイだと思った。
ホントはさ、俺がお前のこと好きって、お前にはもうバレてんのかも知れないな。そうだとしたら見せられた谷間だって誘ってるとしか思えねぇ。天然なのか策士なのか、どっちにしても俺の気持ちは変わないんだろうけど。
不意に、繋ぐ指に少しだけ力をこめられたような気がした。琴音は落としていた視線を俺に向けて顔を赤くして口を一文字に結んでいる。さっきまで照れ笑いの表情だったのに、どうしたんだ。
「さっきの“そのままが一番いい”って言葉、嘘じゃない?」
「俺ぁ嘘や世辞は下手だってお前知ってん――」
発しかけた言葉が止まってしまったのは、琴音が俺の手を繋いだままグイッと引いて自分の胸の方に寄せたからだ。貝殻繋ぎは解け、今度は俺の手の上から小さな手が添えられる形になった。
「……確かめてみる?」
熱を帯びた声。赤らんだ頬。こいつは冗談で言ってるわけじゃなさそうだと長年一緒にいた感覚で分かる。
心臓がバクバクとやかましい。鼓動は速まり、琴音の胸に触れるか触れないかの距離にある俺の指先にまで熱い血が巡る。
俺は試されてんのか?触るだけじゃ済まなくなるかも知れないっつーのに、こいつは男ってのを分かっちゃない。
「冗談にしとくんなら今だぞ、止めんの」
少し間をおいた後に琴音は首を横に振った。なぁ、今日がこんな日になるって誰が想像してた?お前はきっと夏の暑さで頭がやられちまったに違いない。そして俺もまたその一人なんだろう。どう考えたって太陽に遊ばれてる。
琴音の手に導かれて、俺の指先は魅惑の感触まであと数ミリ。
「…な、何してるショお前!?」
自室に入るなり俺の目に飛び込んできた光景は、正座をして俺がベッドの下に隠していたグラビア雑誌をマジマジと食い入るように見ている琴音の姿だった。これが驚かずにいられるか。いや、無理ショ。
ピンクのパンプスが玄関にキチンと揃えて置いてあったのを見つけて、またアイツ茶でも飲みに来てんのかって思ってリビング覗いたらいねぇから階段駆け上がって部屋入ったら…コレだ。俺の嫌な予感はたいてい当たる。
俺に気づくと琴音は開いていた冊子を慌てて閉じ床に置いて、手をパタパタと胸の前で仰ぎだす。
「座りながら携帯いじってたらイヤホンジャックがベッドの下に落っこちちゃって…それであの、見つけるつもりはなかったんだけど……」
何もかも見られちまった後の弁解を聞くほど辛いもんはない。俺が読んでるグラビアは海外モデルのもあるから、こいつにはかなり刺激が強かったんじゃないか?
「勝手に見てゴメン!」
手の平を合わせて素直に謝るコイツを前にとても怒る気にはなれなかった。驚きはしたがただの偶然で見つけちまったもんなら怒る事の程でもないだろうし。
小さい頃からよく知ってる仲なのだから、俺の趣味が『グラビア』って事も琴音は既に知ってるしな。
別にいいショ、と俺が呟いて部屋に入り後ろ手でドアを閉めると、安心したように琴音は笑っていた――そして、閉じていったん床に置いていたグラビア冊子を今度は堂々と開く。
おい、待て、何でまた見るんだ!?
時々、予想もつかないことをやる女だとは常々…だが今日ほどそれを強く思った日はない。
「でも、はじめて知ったよ。裕ちゃんってこーゆーボイ~ンとしてるのが好きなんだねぇ。私だって、…よいしょ、よいしょ」
ギンガムチェックのノースリーブワンピース…夏だからってカーディガンも羽織ってない。剥き出しになった肩に白い腕。俺より一回り小さいその両手で、琴音は自分の胸をわしっと掴んで寄せはじめた。
そのかけ声、色気がなさすぎるだろ。「よいしょ」ってお前…。
自分が触っているわけじゃないが、目の前で何度も寄せられる胸を見ればその柔らかさは一目瞭然。ワンピース越しに自分の胸を自分で触る琴音の小さな手、力をこめた指を見ればわかる。想像以上にマシュマロのようだ。
「あ、寄せれば谷間できる!ほら!」
アハハと笑うこいつは、俺が幼馴染だからって完全に油断してるッショ。その谷間の中に人指し指でも突っ込んでやろうかって気になるが、マジでやったとしてもきっとそれも笑って済まされそうだ。
「裕ちゃん、どうかな」
谷間が目の前にある。触りたい、出来れば後ろから遠慮なくまさぐりたい…って、言えるわきゃない言葉を飲み込んで俺は至極冷静を装ってその目の前にある胸から目を逸らした。目の毒とはこの事だ。
「バっ、バカな事言ってんなショ」
最初の一言目が上ずってしまい心の中の動揺が出ちまって、背中に汗が伝った。まったく冷静を装えてやしない。焦るな、焦るなよ裕介。ほんのちょっと生で、目前で、谷間を見せられたぐらいで動揺しちまうなんて、何か色々、ホラ、カッコ悪ィだろ。
真夏の午後、窓越しで狂ったように煩いセミの鳴き声が聞こえて、俺もいっそ狂っちまえれば楽なのになぁと淡々と思う。
「グラビアモデルたちはこのスタイルが売りで、仕事なんだよ」
俺が目の前に両手の平を差し出すと、琴音も自分の胸から手を離して俺の手の上に手をちょこんと乗せた。子供をあやす様な真似だが、これでいい。
「比べなくたってお前はそのままでいいッショ」
ぎゅ、と両手を握るとクーラーで冷えた手がひんやりと感じた。容易く包めるぐらいの小さい手だ。
「そのままが一番いい」
俺の手の熱が伝染していって、琴音の手もじわじわと温かさを取り戻していく。じわじわ、じわじわと……ア?
さっきから黙って俯いてる目の前の顔を覗き込めば、琴音は頬を赤らめて口元をニンマリとさせていた。
自分の胸を掴んで谷間を作って俺に平気で見せてきた奴が、俺の言葉ひとつで頬を赤らめる。何でだ。わかんネェ奴っショ。俺の理解の範疇を超えてんのに、可愛いって思っちまうのは何でだ。
理由は探すまでもない。自分の好きな子ならどんな表情でも行動でも、それが理解できなくても贔屓目で見ちまうもんなんだって、お前に教わったんだ。
「そんな嬉しいこと言われたら調子に乗っちゃいそう」
俺の手から自分の手をそろりと離してから、琴音は今度は手の平をピタリとあわせて自分の指と俺の指を絡ませた。これ、貝殻繋ぎってやつだ。
「裕ちゃんの指、キレイで長いね。羨ましい」
目を細めてうっとりした表情で俺の手を見つめる琴音の頬は、まだ紅色に染まったままだ。こんなにコイツを間近で顔を見たのは久々だ。視線を手元に落としているせいで伏し目がちになるこいつの長い睫の方がよほどキレイだと思った。
ホントはさ、俺がお前のこと好きって、お前にはもうバレてんのかも知れないな。そうだとしたら見せられた谷間だって誘ってるとしか思えねぇ。天然なのか策士なのか、どっちにしても俺の気持ちは変わないんだろうけど。
不意に、繋ぐ指に少しだけ力をこめられたような気がした。琴音は落としていた視線を俺に向けて顔を赤くして口を一文字に結んでいる。さっきまで照れ笑いの表情だったのに、どうしたんだ。
「さっきの“そのままが一番いい”って言葉、嘘じゃない?」
「俺ぁ嘘や世辞は下手だってお前知ってん――」
発しかけた言葉が止まってしまったのは、琴音が俺の手を繋いだままグイッと引いて自分の胸の方に寄せたからだ。貝殻繋ぎは解け、今度は俺の手の上から小さな手が添えられる形になった。
「……確かめてみる?」
熱を帯びた声。赤らんだ頬。こいつは冗談で言ってるわけじゃなさそうだと長年一緒にいた感覚で分かる。
心臓がバクバクとやかましい。鼓動は速まり、琴音の胸に触れるか触れないかの距離にある俺の指先にまで熱い血が巡る。
俺は試されてんのか?触るだけじゃ済まなくなるかも知れないっつーのに、こいつは男ってのを分かっちゃない。
「冗談にしとくんなら今だぞ、止めんの」
少し間をおいた後に琴音は首を横に振った。なぁ、今日がこんな日になるって誰が想像してた?お前はきっと夏の暑さで頭がやられちまったに違いない。そして俺もまたその一人なんだろう。どう考えたって太陽に遊ばれてる。
琴音の手に導かれて、俺の指先は魅惑の感触まであと数ミリ。