企画もの
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シースルーピンク
本日土曜日。午前授業を終えてから、早々と部室へ向かう。
部活前に飯でも食おうかとやって来れば、そこには先客がいた。
ドアを開けて人の気配がするロッカーの方に視線を移せばそこには見慣れた小柄な後姿。そして、微かな塩素のニオイ。
ちわっス、と軽く声をかければその人物は俺の方を見ていつもの笑顔を見せた。
三年のマネージャー、琴音さん。
ドジでおっちょこちょいで一生懸命、基本的には朗らかで、ふわふわとしたやわらかい雰囲気を纏う彼女こそ、俺の好きな人。
ちなみに告白はまだしてない。いや、出来てない。
「ちょっとね、探し物。もしかしたら昨日ロッカーの中に置いてきたままなんじゃないかと思って…」
部室の中には俺達が使っているロッカーと少し離れた位置に女子マネ用のロッカーがある。
女子マネたちはここで着替えたりはしないが荷物を置く場所はちゃんと用意されていた。
…探し物をしてるっつーわりには、部室のカーテン締め切ったままだし、こんな暗いんじゃ手元が見え難いだろうに。
慌ててるから気づかなかったのか。ホントこの人ドジだよなァ…ま、そんなところもカワイイんだけどさ。
俺は荷物を部室の隅っこにあるパイプ椅子の上に置いて、窓際のカーテンを全開にした。
燦々とした太陽の光が差し込んで部室の中は見違えるぐらいに明るくなった――…そして、ある事に気づく。
…す、透けてる。
俺は心の中でぽつりと呟いた。
琴音さんがロッカーの中で探し物をしている後姿。よく見れば水気を含んでしっとりとした髪、肩にかけているスポーツタオル。
そして問題なのが、制服から透けた下着…暗いままならば気づかなかったのに、カーテンを全開にしちまったことで日差しがありありと真実を映し出す。
こ、この人…、制服の下は直にブラかよ!?って叫びだしそうになった衝動を飲み込むも、心臓がバクバクとうるさく反応しはじめた。
いつもは何か着てるから透けずに済んでるんだろうけど、今日に限って何だって、そんな、俺と二人きりの時に。
「今日プールだったんスか?」
微かな塩素のニオイと濡れた髪がその証拠なのに。
聞くまでもないような質問をして、俺はヘラヘラと笑いながら出来るだけいつも通りを装った。
「うん、さっきの授業がプールだったんだ。泳いだ後って何ですごくお腹空くんだろうね。もうペコペコだよ」
他愛のない会話をしながらもロッカーの中をガサゴソと探し続ける琴音さん。
そしてその琴音さんに相槌を打ったり話を振ったりしながら後ろ姿をガン見してる俺。
目が一点に釘付け過ぎてヤバイ。加えて、風呂上りと同じような濡れた髪もヤバイ。
ブラの色、ピンクだ、ピンク。
女子としてはまったくもって無難な色だし前方のデザインは見てないけどおそらくシンプルなものだと思われる。
ホークアイをもってしてもそこまでは分からなかった…つーか当たり前だろ!俺!
暑さのせいで思考が沸いてるって自覚は、ある。
好きな人と狭い空間で一緒にいるだけで幸せっつーのは嘘じゃない。
ただ健全な男子高校生にとっては、好きな人の制服から透けた下着も、濡れた髪も、興奮材料でしかない。
うちの制服、女子はセーラー服なのだが夏と冬とじゃ色がガラリと変わる。冬は濃紺で白ライン、夏は白セーラーで紺ラインだ。
セーラー服だってよくよく見りゃエロ過ぎる。清純さが際立つ上に、そこから透けるピンク色って百点満点だろ。
「…あのさ、さっきから何探してんの?」
冷静さを取り戻せとばかりに頭を振って、その小柄な後姿に話しかけると、琴音さんは“ハートのネックレス”と応えた。
ピンクゴールドの細いチェーンで、中央に小さなハートがついているという――…俺の見間違いでなければソレ、琴音さんの足元に落っこちてるんだけど…?
おそらくロッカーをガサゴソやってるうちに足元に音もなく落ち、それに気づかないまま琴音さんはロッカーの中のどこかにあると信じて探してるワケだ。
相変わらずのドジなところが可愛くて、俺は思わずブハッと吹き出した。
俺の笑い声に振り返り、キョトントと目を真ん丸くした彼女はまだ知らない。
俺は近づいて足元に落ちているネックレスを拾い上げると「これでしょ?」と言って指に引っかけて彼女の前に差し出して見せた。
「そ、それ!えっ、何で?どこにあったの?」
「琴音さん、足元に落っこちてんのにチョー探してっからさぁ~、いや~ウケた」
ニッコリと笑顔になる琴音さんにいつもなら癒される俺だが、頭の片隅で制服から透けた下着のことが頭から離れない。
向かい合ってる今、胸の前で祈るようなポーズをして俺に礼を言う琴音さんの腕が下に降りたら、きっと見えてしまう。
前も多分透けてると思われる。
「高尾くんにはホークアイがあるから、最初から頼んで一緒に探してもらえばよかったよ」
「探し物に限らずとも、琴音さんの頼みとあらばこの高尾、いつでも喜んで」
ふざけて執事風にかしこまると琴音さんはまた声を立てて笑った。
指にひっかけたままのネックレス、このまま本人に渡そうとするも、彼女は予想外なことをお願いしてきた。
「ふふ、じゃあ執事さんに早速お願いしちゃおうかな。ネックレスつけてもらってもいい?」
細いチェーンだからつけるのに時間がかかるんだ、と言いながら、琴音さんは肩にかけていたスポーツタオルを肩から外した。
そして濡れた髪をひとまとめにして右側によせて、うなじを晒した状態にして俺に背中を向ける。
何とかいつもみたいに会話して平静を保ててたはずなのに、誤魔化せたはずなのにまた心臓がうるさく鳴り始め、体の中の血が熱くなる。
――俺が琴音さんのこと好きだって知ってたら、こんな無防備な後ろ姿向けてこねーよなぁ。
鼻先が髪に近づくとプールのニオイ。俺、別に特別このニオイが好きってわけじゃなかったんだけど好きになりそうだわ。
ネックレスなんて10秒あればつけてやれる。うなじより下に視線を落とせば誘惑のピンク色。
夏のセーラーの色、白にしたのはどいつだよチクショウ。
頭が沸騰しそうだ。体中の熱という熱が息を通じて体外へ出ていきそう。
何だ、俺、こんなヨユーなく好きなんだなぁ。そんなこととっくにわかってんのに、さらに今自覚を強要されてる場面だ。
キリキリと張り詰めた糸が、音に振動するみたいに震えているイメージが頭の中に浮かぶ。
俺の理性がその糸だ。今にもプツリと切れかけそうな糸。
「…琴音さん、ちょっとごめん」
ネックレスを付け終えて彼女の両肩に手を添えると、無防備に目の前に晒されている白いうなじに唇を当てた。
ほんの少し唇を当てて、ふざけたことしてゴメン!って笑って済ませるはずだったのに、想像以上に滑らかな肌にもはや唇を当てるだけじゃあ終わらない。
「た、高尾くん?」
白いうなじに啄ばむようにキスをした後、ペロリと舌先で舐めると少ししょっぱい汗とプールの味。
唇と舌の温かい感触に琴音さんはおそらく混乱しているんだろう。
告白する前に何やってんだろう、俺。とんでもなく変態だ。
抵抗して突き飛ばしてくれるのを俺は待っている。早く、早くしてくれ。
「もう、くすぐったいよ!」
大きな声をだして俺を振り解いて振り返る彼女の目は、涙目どころかいつもと変わらず真ん丸な無垢な瞳だった。
まるで怖がってなんかなくて、この人、鈍感なのか肝が据わってるのがよく分からない。
俺が謝ればこんな悪戯、すぐに許してくれそうな目してる。
隙だらけの純真さは時折残酷だ。琴音さんは優しすぎるにもほどがある。
俺はこの夏、あと何度この隙に遭遇するだろう。
そしてその隙に付け入って悪いコトしようとしてる俺。…最低だ。
自分で自分のこと嫌いになっちまう前に、ちゃんと言わなくちゃな。
あんたのことが好きだって、さ。
本日土曜日。午前授業を終えてから、早々と部室へ向かう。
部活前に飯でも食おうかとやって来れば、そこには先客がいた。
ドアを開けて人の気配がするロッカーの方に視線を移せばそこには見慣れた小柄な後姿。そして、微かな塩素のニオイ。
ちわっス、と軽く声をかければその人物は俺の方を見ていつもの笑顔を見せた。
三年のマネージャー、琴音さん。
ドジでおっちょこちょいで一生懸命、基本的には朗らかで、ふわふわとしたやわらかい雰囲気を纏う彼女こそ、俺の好きな人。
ちなみに告白はまだしてない。いや、出来てない。
「ちょっとね、探し物。もしかしたら昨日ロッカーの中に置いてきたままなんじゃないかと思って…」
部室の中には俺達が使っているロッカーと少し離れた位置に女子マネ用のロッカーがある。
女子マネたちはここで着替えたりはしないが荷物を置く場所はちゃんと用意されていた。
…探し物をしてるっつーわりには、部室のカーテン締め切ったままだし、こんな暗いんじゃ手元が見え難いだろうに。
慌ててるから気づかなかったのか。ホントこの人ドジだよなァ…ま、そんなところもカワイイんだけどさ。
俺は荷物を部室の隅っこにあるパイプ椅子の上に置いて、窓際のカーテンを全開にした。
燦々とした太陽の光が差し込んで部室の中は見違えるぐらいに明るくなった――…そして、ある事に気づく。
…す、透けてる。
俺は心の中でぽつりと呟いた。
琴音さんがロッカーの中で探し物をしている後姿。よく見れば水気を含んでしっとりとした髪、肩にかけているスポーツタオル。
そして問題なのが、制服から透けた下着…暗いままならば気づかなかったのに、カーテンを全開にしちまったことで日差しがありありと真実を映し出す。
こ、この人…、制服の下は直にブラかよ!?って叫びだしそうになった衝動を飲み込むも、心臓がバクバクとうるさく反応しはじめた。
いつもは何か着てるから透けずに済んでるんだろうけど、今日に限って何だって、そんな、俺と二人きりの時に。
「今日プールだったんスか?」
微かな塩素のニオイと濡れた髪がその証拠なのに。
聞くまでもないような質問をして、俺はヘラヘラと笑いながら出来るだけいつも通りを装った。
「うん、さっきの授業がプールだったんだ。泳いだ後って何ですごくお腹空くんだろうね。もうペコペコだよ」
他愛のない会話をしながらもロッカーの中をガサゴソと探し続ける琴音さん。
そしてその琴音さんに相槌を打ったり話を振ったりしながら後ろ姿をガン見してる俺。
目が一点に釘付け過ぎてヤバイ。加えて、風呂上りと同じような濡れた髪もヤバイ。
ブラの色、ピンクだ、ピンク。
女子としてはまったくもって無難な色だし前方のデザインは見てないけどおそらくシンプルなものだと思われる。
ホークアイをもってしてもそこまでは分からなかった…つーか当たり前だろ!俺!
暑さのせいで思考が沸いてるって自覚は、ある。
好きな人と狭い空間で一緒にいるだけで幸せっつーのは嘘じゃない。
ただ健全な男子高校生にとっては、好きな人の制服から透けた下着も、濡れた髪も、興奮材料でしかない。
うちの制服、女子はセーラー服なのだが夏と冬とじゃ色がガラリと変わる。冬は濃紺で白ライン、夏は白セーラーで紺ラインだ。
セーラー服だってよくよく見りゃエロ過ぎる。清純さが際立つ上に、そこから透けるピンク色って百点満点だろ。
「…あのさ、さっきから何探してんの?」
冷静さを取り戻せとばかりに頭を振って、その小柄な後姿に話しかけると、琴音さんは“ハートのネックレス”と応えた。
ピンクゴールドの細いチェーンで、中央に小さなハートがついているという――…俺の見間違いでなければソレ、琴音さんの足元に落っこちてるんだけど…?
おそらくロッカーをガサゴソやってるうちに足元に音もなく落ち、それに気づかないまま琴音さんはロッカーの中のどこかにあると信じて探してるワケだ。
相変わらずのドジなところが可愛くて、俺は思わずブハッと吹き出した。
俺の笑い声に振り返り、キョトントと目を真ん丸くした彼女はまだ知らない。
俺は近づいて足元に落ちているネックレスを拾い上げると「これでしょ?」と言って指に引っかけて彼女の前に差し出して見せた。
「そ、それ!えっ、何で?どこにあったの?」
「琴音さん、足元に落っこちてんのにチョー探してっからさぁ~、いや~ウケた」
ニッコリと笑顔になる琴音さんにいつもなら癒される俺だが、頭の片隅で制服から透けた下着のことが頭から離れない。
向かい合ってる今、胸の前で祈るようなポーズをして俺に礼を言う琴音さんの腕が下に降りたら、きっと見えてしまう。
前も多分透けてると思われる。
「高尾くんにはホークアイがあるから、最初から頼んで一緒に探してもらえばよかったよ」
「探し物に限らずとも、琴音さんの頼みとあらばこの高尾、いつでも喜んで」
ふざけて執事風にかしこまると琴音さんはまた声を立てて笑った。
指にひっかけたままのネックレス、このまま本人に渡そうとするも、彼女は予想外なことをお願いしてきた。
「ふふ、じゃあ執事さんに早速お願いしちゃおうかな。ネックレスつけてもらってもいい?」
細いチェーンだからつけるのに時間がかかるんだ、と言いながら、琴音さんは肩にかけていたスポーツタオルを肩から外した。
そして濡れた髪をひとまとめにして右側によせて、うなじを晒した状態にして俺に背中を向ける。
何とかいつもみたいに会話して平静を保ててたはずなのに、誤魔化せたはずなのにまた心臓がうるさく鳴り始め、体の中の血が熱くなる。
――俺が琴音さんのこと好きだって知ってたら、こんな無防備な後ろ姿向けてこねーよなぁ。
鼻先が髪に近づくとプールのニオイ。俺、別に特別このニオイが好きってわけじゃなかったんだけど好きになりそうだわ。
ネックレスなんて10秒あればつけてやれる。うなじより下に視線を落とせば誘惑のピンク色。
夏のセーラーの色、白にしたのはどいつだよチクショウ。
頭が沸騰しそうだ。体中の熱という熱が息を通じて体外へ出ていきそう。
何だ、俺、こんなヨユーなく好きなんだなぁ。そんなこととっくにわかってんのに、さらに今自覚を強要されてる場面だ。
キリキリと張り詰めた糸が、音に振動するみたいに震えているイメージが頭の中に浮かぶ。
俺の理性がその糸だ。今にもプツリと切れかけそうな糸。
「…琴音さん、ちょっとごめん」
ネックレスを付け終えて彼女の両肩に手を添えると、無防備に目の前に晒されている白いうなじに唇を当てた。
ほんの少し唇を当てて、ふざけたことしてゴメン!って笑って済ませるはずだったのに、想像以上に滑らかな肌にもはや唇を当てるだけじゃあ終わらない。
「た、高尾くん?」
白いうなじに啄ばむようにキスをした後、ペロリと舌先で舐めると少ししょっぱい汗とプールの味。
唇と舌の温かい感触に琴音さんはおそらく混乱しているんだろう。
告白する前に何やってんだろう、俺。とんでもなく変態だ。
抵抗して突き飛ばしてくれるのを俺は待っている。早く、早くしてくれ。
「もう、くすぐったいよ!」
大きな声をだして俺を振り解いて振り返る彼女の目は、涙目どころかいつもと変わらず真ん丸な無垢な瞳だった。
まるで怖がってなんかなくて、この人、鈍感なのか肝が据わってるのがよく分からない。
俺が謝ればこんな悪戯、すぐに許してくれそうな目してる。
隙だらけの純真さは時折残酷だ。琴音さんは優しすぎるにもほどがある。
俺はこの夏、あと何度この隙に遭遇するだろう。
そしてその隙に付け入って悪いコトしようとしてる俺。…最低だ。
自分で自分のこと嫌いになっちまう前に、ちゃんと言わなくちゃな。
あんたのことが好きだって、さ。