企画もの
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Rule of Love -氷室の場合-
体育館点検のため今日の部活は中止になった代わりに、グラウンドで走り込みだけ行って本日は解散となった。
秋を過ぎると夕暮れも早く訪れるが、まだ夕陽も沈んでないうちから下校できるのはすごく久しぶりだった。
秋田の空気は澄んでいて、美味しい。山側に沈む夕陽も特別キレイだ。
もちろん、バスケの強豪校だから陽泉へ編入してきたのだが、美しい景色を見る度にいい場所にやって来たなと実感した。
オレンジ色が照らすロマンチックな帰り道、部活も早く終わったしどこか寄っていこうか、繁華街の方でも出ようかと、琴音と一緒に歩いていた時のこと。
彼女は突然俺の目を見て告げてきた。
俺が目を合わせようとすると恥ずかしがってあまり見てくれないくせに、何で急に?と思ったらどうやら伝えたいことがあったみたいだ。
「…キス以上のことはウィンターカップが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
「Really?じゃあ、観たい映画があるんだけど、今度、午後練がない日にでも一緒に行こうか」
「に、日本語通じてない…っ!」
――突然、何を言い出すのかと思ったら…ガッカリするようなこと、か。
驚かなかったわけじゃないが、まぁ…冷静にスルーしてやった。
「最近耳が遠くてね、都合の悪いことはちょっと聞こえ難いんだ。で、何の話だったかな?くだらない提案なら受け付けないよ」
「いや耳遠くなったなんて初めて聞いたけど!?…あのね、キス以上のことをしたら色々と…妨げになっちゃうと思うんだ。私は氷室くんの邪魔したくないから…、だから、」
「練習に集中出来なくなってしまうんじゃないかって心配してるんだろ?そんなことで俺の集中力は切れたりしないよ。お構いなく」
俺は琴音の手を引き寄せて強引に繋ぐと、彼女は抵抗さえしないがそのままガックリと項垂れた。
ガックリしたいのは俺の方だ。
キミは、俺がどれだけキミのことを好きなのかってまだ分かっていないんだな。
最初は確かにキミの方が俺のことを好きだった。俺は、元気のいい変わった先輩だな、ぐらいしか思っていなかったけど、次第にその物珍しさに惹かれていって、仕舞いには俺の方が夢中にさせられていた。
トラップだったのかと今では思う。だが、かかってしまった後ではもう遅かった。
晴れて付き合うことになったというのに、手を繋ぐのもキスをするのも時間がかかった。
俺を好きだというキミは、恥ずかしがってすぐに逃げてしまうからだ。
なのに、何故、さらに二人の関係がスローペースになる必要があるのか理解出来なかった。
俺は我慢強い方じゃない。すぐにでも奪ってやりたいと思っているが、嫌われたくないという一心でキス以上の手出しは今まで我慢し、いざチャンスがあればこれから…とか、思ってたんだけど。
日本育ちの子はピュアでシャイって本当だな。琴音はその典型だ。
アメリカじゃ付き合えばとっくに男女の関係になるのが当たり前だった。文化の違いみたいなものなのかな。
繋いだ手に力がこもって、絶対に離してやらないと俺はそのまま自分の方へ引っ張ったら、彼女はよろけて俺の肩へ寄りかかった。
手放したくない。拒絶もされたくない。離れるなんてもう無理だ。そうさせたのは琴音の方なのに。
押し黙った俺を見上げた瞳は、まるで汚れを知らないような色をしている。
琴音は何か考えているのか、眉間に皺を寄せながら少し声を張って俺に告げてきた。
「私が構うの!…氷室くんは平気でも、私が集中できなくなっちゃうかもしれない。マネージャーの仕事もあるのに…」
「それなら尚更好都合だ。仕事に集中出来なくなるぐらい、琴音はもっと俺に夢中になればいいと思ってるよ」
小さく笑って言い返せば、琴音はムッとして頭を俺の肩にぐりぐりと押しつけてきた。
子供のささやかな反抗みたいで可愛い。俺は本音しか言わない。この人には建前やオブラートに包んだ言葉は通じないって分かってるからだ。
俺たちが話し合っても、意見が反発し合ってきっと堂々巡りなんだろな、と思いきや、唇を尖らせて彼女は呟いた。
よく見ると顔が赤い。夕陽のオレンジに照らされて気づかなかったが、相当恥ずかしがっているみたいだ。
「…もう、すでに夢中だから、こんなお願いしてるんだよ?これ以上、氷室くんのことを知って好きになったら困る。もう何も集中できなくなっちゃうかもしれない。私はみんなに絶対優勝して欲しいから。そのためにもマネージャーとして出来ることを精一杯したいから。お願い、わかってよ…」
滅多に聞けない彼女の本音を聞けた気がして、俺は一瞬、瞬きを忘れた。
…何だ、そうか。俺の、独りよがりじゃなかった。
同時に、また彼女の魅力の1つを知ってしまった気がして、再び罠にかかった気分になる。
嘘もつかない、虚勢もない、変なプライドもなく、いつも素直で真っ直ぐなキミに真っ向から気持ちを向けられたら敵うわけないんだ。
途端に力がぬけて強いぐらい握っていた彼女の手を、今度はそっと優しく繋ぎ直す。
俺がどれだけキミのことを好きなのかってまだ分かっていないと思っていたけれど、その逆も然り、だったんだね。
「……OK。わかったよ、約束する」
「かっ、顔が近いよ!」
顔覗き込んで鼻先を近づけると、琴音は驚いて俺と距離をとろうと後ずさった。
が、それを俺は許さないとばかりに手を再び引っ張った。ガクンと前のめりになった彼女と、顔の位置を合わせて待ちかまえていた俺の唇が一瞬触れ合う。
指切りの代わりだよ、と言って微笑むと、琴音は空いた方の手で唇を押さえて顔を真っ赤にさせていた。
でも、今日に限ってオレンジ色のせいでキミの顔色がちゃんと見えないなんて勿体ないなァ。
「今日は俺が折れた。なら今度は、俺がどれだけ君に夢中だってことを身を以って知ってもらう番だ。……年末が楽しみだね」
体育館点検のため今日の部活は中止になった代わりに、グラウンドで走り込みだけ行って本日は解散となった。
秋を過ぎると夕暮れも早く訪れるが、まだ夕陽も沈んでないうちから下校できるのはすごく久しぶりだった。
秋田の空気は澄んでいて、美味しい。山側に沈む夕陽も特別キレイだ。
もちろん、バスケの強豪校だから陽泉へ編入してきたのだが、美しい景色を見る度にいい場所にやって来たなと実感した。
オレンジ色が照らすロマンチックな帰り道、部活も早く終わったしどこか寄っていこうか、繁華街の方でも出ようかと、琴音と一緒に歩いていた時のこと。
彼女は突然俺の目を見て告げてきた。
俺が目を合わせようとすると恥ずかしがってあまり見てくれないくせに、何で急に?と思ったらどうやら伝えたいことがあったみたいだ。
「…キス以上のことはウィンターカップが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
「Really?じゃあ、観たい映画があるんだけど、今度、午後練がない日にでも一緒に行こうか」
「に、日本語通じてない…っ!」
――突然、何を言い出すのかと思ったら…ガッカリするようなこと、か。
驚かなかったわけじゃないが、まぁ…冷静にスルーしてやった。
「最近耳が遠くてね、都合の悪いことはちょっと聞こえ難いんだ。で、何の話だったかな?くだらない提案なら受け付けないよ」
「いや耳遠くなったなんて初めて聞いたけど!?…あのね、キス以上のことをしたら色々と…妨げになっちゃうと思うんだ。私は氷室くんの邪魔したくないから…、だから、」
「練習に集中出来なくなってしまうんじゃないかって心配してるんだろ?そんなことで俺の集中力は切れたりしないよ。お構いなく」
俺は琴音の手を引き寄せて強引に繋ぐと、彼女は抵抗さえしないがそのままガックリと項垂れた。
ガックリしたいのは俺の方だ。
キミは、俺がどれだけキミのことを好きなのかってまだ分かっていないんだな。
最初は確かにキミの方が俺のことを好きだった。俺は、元気のいい変わった先輩だな、ぐらいしか思っていなかったけど、次第にその物珍しさに惹かれていって、仕舞いには俺の方が夢中にさせられていた。
トラップだったのかと今では思う。だが、かかってしまった後ではもう遅かった。
晴れて付き合うことになったというのに、手を繋ぐのもキスをするのも時間がかかった。
俺を好きだというキミは、恥ずかしがってすぐに逃げてしまうからだ。
なのに、何故、さらに二人の関係がスローペースになる必要があるのか理解出来なかった。
俺は我慢強い方じゃない。すぐにでも奪ってやりたいと思っているが、嫌われたくないという一心でキス以上の手出しは今まで我慢し、いざチャンスがあればこれから…とか、思ってたんだけど。
日本育ちの子はピュアでシャイって本当だな。琴音はその典型だ。
アメリカじゃ付き合えばとっくに男女の関係になるのが当たり前だった。文化の違いみたいなものなのかな。
繋いだ手に力がこもって、絶対に離してやらないと俺はそのまま自分の方へ引っ張ったら、彼女はよろけて俺の肩へ寄りかかった。
手放したくない。拒絶もされたくない。離れるなんてもう無理だ。そうさせたのは琴音の方なのに。
押し黙った俺を見上げた瞳は、まるで汚れを知らないような色をしている。
琴音は何か考えているのか、眉間に皺を寄せながら少し声を張って俺に告げてきた。
「私が構うの!…氷室くんは平気でも、私が集中できなくなっちゃうかもしれない。マネージャーの仕事もあるのに…」
「それなら尚更好都合だ。仕事に集中出来なくなるぐらい、琴音はもっと俺に夢中になればいいと思ってるよ」
小さく笑って言い返せば、琴音はムッとして頭を俺の肩にぐりぐりと押しつけてきた。
子供のささやかな反抗みたいで可愛い。俺は本音しか言わない。この人には建前やオブラートに包んだ言葉は通じないって分かってるからだ。
俺たちが話し合っても、意見が反発し合ってきっと堂々巡りなんだろな、と思いきや、唇を尖らせて彼女は呟いた。
よく見ると顔が赤い。夕陽のオレンジに照らされて気づかなかったが、相当恥ずかしがっているみたいだ。
「…もう、すでに夢中だから、こんなお願いしてるんだよ?これ以上、氷室くんのことを知って好きになったら困る。もう何も集中できなくなっちゃうかもしれない。私はみんなに絶対優勝して欲しいから。そのためにもマネージャーとして出来ることを精一杯したいから。お願い、わかってよ…」
滅多に聞けない彼女の本音を聞けた気がして、俺は一瞬、瞬きを忘れた。
…何だ、そうか。俺の、独りよがりじゃなかった。
同時に、また彼女の魅力の1つを知ってしまった気がして、再び罠にかかった気分になる。
嘘もつかない、虚勢もない、変なプライドもなく、いつも素直で真っ直ぐなキミに真っ向から気持ちを向けられたら敵うわけないんだ。
途端に力がぬけて強いぐらい握っていた彼女の手を、今度はそっと優しく繋ぎ直す。
俺がどれだけキミのことを好きなのかってまだ分かっていないと思っていたけれど、その逆も然り、だったんだね。
「……OK。わかったよ、約束する」
「かっ、顔が近いよ!」
顔覗き込んで鼻先を近づけると、琴音は驚いて俺と距離をとろうと後ずさった。
が、それを俺は許さないとばかりに手を再び引っ張った。ガクンと前のめりになった彼女と、顔の位置を合わせて待ちかまえていた俺の唇が一瞬触れ合う。
指切りの代わりだよ、と言って微笑むと、琴音は空いた方の手で唇を押さえて顔を真っ赤にさせていた。
でも、今日に限ってオレンジ色のせいでキミの顔色がちゃんと見えないなんて勿体ないなァ。
「今日は俺が折れた。なら今度は、俺がどれだけ君に夢中だってことを身を以って知ってもらう番だ。……年末が楽しみだね」