企画もの
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Rule of Love -宮地の場合-
部活前のちょっとした時間、早めに部室に来たらたまたま鉢合わせたマネージャーの汐見は、俺を見るなり「ちょっと来て」と勢いよく俺の手を引いた。
こいつがこーゆー強引なアクションを起こすのは珍しい。
俺が文句1つ言う前に、あっさりとひと気のない体育館に裏連れて来られた。
もしかして、こんな場所で彼氏の俺に甘えてくる…とか?…いや、それはねーな。
俺がスタメンに決まった日からグッと距離が近づいて付き合いはじめたが、そもそもアイツが甘えてくるなんてレアイベントそうそうなかったんだ。
こんな、行事でもない何でもない日に甘えてくるワケがない。
そもそも、部活前の空いた時間とはいえ、そんなに長い時間はとれない。それはマネージャーのこいつも同じはずだ。
何か用か?、と相変わらずぶっきらぼうにしか言えない俺に汐見は向き直り、わざとらしく咳払い1つしてから口を開いた。
「…キス以上のことはウィンターカップが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
言いずらそうにちょっと顔を赤らめて言うもんだから、不覚にも可愛いって思っちまった。
その言葉の意味に『はぁ!?』と素っ頓狂な声を出して聞き返しそうになったが、待て。俺よ、待て。
ここで取り乱したりしたらアホだ。驚いたけれどすぐに頭で納得はしたし、汐見が伝えてきた意図だって言わなくても既に分かってることだった。
こいつはドジでマヌケだが、意味のないお願いはしてきたりはしない。
「…わかった。つーか、そんな事言うためだけにわざわざこんなとこに連れて来たのか」
ハァ、とため息をつきながらそう返すと、俺がすぐ納得したことに少し驚いていた。
「…う、うん。ごめんね」
「どうした?」
「そんなあっさり了解してくれるとは思わなくて…、理由は聞かないの?」
聞いて欲しかったのか?と、言いそうになったが、俺は飲み込んだ。
それとも、あっさり了解しないような奴に見えたのか…こいつは俺をどう見てんだ。
確かに、付き合ってからというものの、甘い空気になってイチャついたのはほぼ数回。…キスはもうしてるものの、何とも絶滅的な数値。
それとも、こんなに進展がないのは俺のアイドル好きが原因か。いいや、そうじゃない。みゆみゆは相変わらず応援しているが、こいつのことはちゃんと好きだし。こいつも俺を好きなはずなのだが、高三にもなって進展がスローペースである。別に、そんなん早けりゃいいってもんじゃないが。
ただ、俺たちは不器用なだけだ。お互い好きで付き合って、そこそこに大事にしあっているっつー確信はある。
俺の吐く暴言や口の悪さにもにもこいつは女なのによくぞ耐えてるって感心さえする。
純粋に、付き合ってることを楽しみたい――と思う反面、心の中にそれよりも優先する事があるんだ。
俺にもこいつにも。それはたった1つ。今しかできないことだ。
「聞かなくたって分かるだろ。今、優先すべきもんは何かって話だ。俺ら三年はもう次の冬の大会で最後になる。その後はすぐ受験も控えてる。これ以上にないってぐらい大事な時期だからな」
頭を掻きながら、わざわざ説明することでもなかっただろうかと思った。まぁ説明しても差し支えないだろうが。
この答えは正解のはずだ。その証拠に、汐見は静かに頷いていた。
本当はWCで頭がいっぱいなのだが、その上、大学受験もあるんだな。自分で口にしたものの、グッと重いプレッシャーがのしかかる。
部活をしていることで成績を落とさないように勉強も頑張ってきたから、このままの調子なら志望大学の合格圏まで届く。しかし、気は一切抜けない。
「そうだよね…うん、確かに…うん…」
目の前のこいつは、二度、三度頷いて、少し寂しそうな表情を見せた。
何か言い辛そうにもごもごしているので俺は苛立つ気持ちを抑えながら声をかけた。
部活の時は物事もハキハキ言うし、主将の大坪にも、監督にさえ意見があればハッキリと告げているのに、それ以外の時となるともごもごすることがある。
未だにこいつの強気スイッチがどこににあるのか俺は知らない。
何だよ?言いたい事があるならハッキリ言え――と、俺は相変わらずの口調で問いかけた。
まさか、汐見から驚くような事を告げられるとは思わずに。
「自分で聞いておいて何だけどさ、宮くんあまりにもあっさり了解したから、…あの、宮くんは私と、その、…あんまりしたくないのかなって…」
今、こいつ、何て――?
一瞬、息をするのを忘れたぐらい驚いたのは、柔らかい声でとんでもないことを告げられたせいだ。
頬は変わらず赤くなり、触れたらあったかいんだろうなとよからぬことが頭を過ぎった。
何と返せば正解なのか分からない。ただ考えるより先に俺は息継ぎなしで早口で捲し立てていた。
「はぁ?寝ぼけたこと言うな。好きな女としたくねぇ男がこの世の何処にいるんだよ?居たらいますぐ俺の前に連れて来い。んな腑抜た奴は軽トラで轢いてやる」
ああ、しまった。言っちまった。
気づいた時には、照れながらも笑顔になる汐見の顔が目前。
自分の意志では止めることはできず、俺の顔にも血が昇る。部活前にドッと疲れが押し寄せて来た。
こいつはちゃんと言ってやらないとすぐ不安がるから、勢いまかせに声に出しちまったことは結果よかったのかもしれない。
「とにかくだ…。そのルール俺も乗った。お前の気遣いはちゃんと伝わってるから安心しとけ」
照れくさくて目を合わせられずに、視線は横に移動させて俺は何にもない壁ばかり見つめていた。
「…うん、ありがとう宮くん。大会と受験が終わったら、私をちゃんと貰ってね」
「……馬鹿だろ、お前」
ふふっ、と笑うこいつが理解できない。そんでもって笑った顔が可愛く見えてくる俺自身も理解不能だ。
“貰って”と、何故、それを今言うんだ。
顔どころか、全身の血が沸騰してしまう程、俺の方が恥ずかしくなっただろうが。
頬を赤らめてるこいつよりも遙かに、俺の顔のが赤くなっているに違いない。顔を真っ赤にして揺れる理性と戦い沈黙する俺。男の俺の気持ちも察せず暢気に微笑むこいつ。
…おい、誰か。この甘ったるい空気をどうにかしてくれ。こそばゆくて仕方ない。
部活前のちょっとした時間、早めに部室に来たらたまたま鉢合わせたマネージャーの汐見は、俺を見るなり「ちょっと来て」と勢いよく俺の手を引いた。
こいつがこーゆー強引なアクションを起こすのは珍しい。
俺が文句1つ言う前に、あっさりとひと気のない体育館に裏連れて来られた。
もしかして、こんな場所で彼氏の俺に甘えてくる…とか?…いや、それはねーな。
俺がスタメンに決まった日からグッと距離が近づいて付き合いはじめたが、そもそもアイツが甘えてくるなんてレアイベントそうそうなかったんだ。
こんな、行事でもない何でもない日に甘えてくるワケがない。
そもそも、部活前の空いた時間とはいえ、そんなに長い時間はとれない。それはマネージャーのこいつも同じはずだ。
何か用か?、と相変わらずぶっきらぼうにしか言えない俺に汐見は向き直り、わざとらしく咳払い1つしてから口を開いた。
「…キス以上のことはウィンターカップが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
言いずらそうにちょっと顔を赤らめて言うもんだから、不覚にも可愛いって思っちまった。
その言葉の意味に『はぁ!?』と素っ頓狂な声を出して聞き返しそうになったが、待て。俺よ、待て。
ここで取り乱したりしたらアホだ。驚いたけれどすぐに頭で納得はしたし、汐見が伝えてきた意図だって言わなくても既に分かってることだった。
こいつはドジでマヌケだが、意味のないお願いはしてきたりはしない。
「…わかった。つーか、そんな事言うためだけにわざわざこんなとこに連れて来たのか」
ハァ、とため息をつきながらそう返すと、俺がすぐ納得したことに少し驚いていた。
「…う、うん。ごめんね」
「どうした?」
「そんなあっさり了解してくれるとは思わなくて…、理由は聞かないの?」
聞いて欲しかったのか?と、言いそうになったが、俺は飲み込んだ。
それとも、あっさり了解しないような奴に見えたのか…こいつは俺をどう見てんだ。
確かに、付き合ってからというものの、甘い空気になってイチャついたのはほぼ数回。…キスはもうしてるものの、何とも絶滅的な数値。
それとも、こんなに進展がないのは俺のアイドル好きが原因か。いいや、そうじゃない。みゆみゆは相変わらず応援しているが、こいつのことはちゃんと好きだし。こいつも俺を好きなはずなのだが、高三にもなって進展がスローペースである。別に、そんなん早けりゃいいってもんじゃないが。
ただ、俺たちは不器用なだけだ。お互い好きで付き合って、そこそこに大事にしあっているっつー確信はある。
俺の吐く暴言や口の悪さにもにもこいつは女なのによくぞ耐えてるって感心さえする。
純粋に、付き合ってることを楽しみたい――と思う反面、心の中にそれよりも優先する事があるんだ。
俺にもこいつにも。それはたった1つ。今しかできないことだ。
「聞かなくたって分かるだろ。今、優先すべきもんは何かって話だ。俺ら三年はもう次の冬の大会で最後になる。その後はすぐ受験も控えてる。これ以上にないってぐらい大事な時期だからな」
頭を掻きながら、わざわざ説明することでもなかっただろうかと思った。まぁ説明しても差し支えないだろうが。
この答えは正解のはずだ。その証拠に、汐見は静かに頷いていた。
本当はWCで頭がいっぱいなのだが、その上、大学受験もあるんだな。自分で口にしたものの、グッと重いプレッシャーがのしかかる。
部活をしていることで成績を落とさないように勉強も頑張ってきたから、このままの調子なら志望大学の合格圏まで届く。しかし、気は一切抜けない。
「そうだよね…うん、確かに…うん…」
目の前のこいつは、二度、三度頷いて、少し寂しそうな表情を見せた。
何か言い辛そうにもごもごしているので俺は苛立つ気持ちを抑えながら声をかけた。
部活の時は物事もハキハキ言うし、主将の大坪にも、監督にさえ意見があればハッキリと告げているのに、それ以外の時となるともごもごすることがある。
未だにこいつの強気スイッチがどこににあるのか俺は知らない。
何だよ?言いたい事があるならハッキリ言え――と、俺は相変わらずの口調で問いかけた。
まさか、汐見から驚くような事を告げられるとは思わずに。
「自分で聞いておいて何だけどさ、宮くんあまりにもあっさり了解したから、…あの、宮くんは私と、その、…あんまりしたくないのかなって…」
今、こいつ、何て――?
一瞬、息をするのを忘れたぐらい驚いたのは、柔らかい声でとんでもないことを告げられたせいだ。
頬は変わらず赤くなり、触れたらあったかいんだろうなとよからぬことが頭を過ぎった。
何と返せば正解なのか分からない。ただ考えるより先に俺は息継ぎなしで早口で捲し立てていた。
「はぁ?寝ぼけたこと言うな。好きな女としたくねぇ男がこの世の何処にいるんだよ?居たらいますぐ俺の前に連れて来い。んな腑抜た奴は軽トラで轢いてやる」
ああ、しまった。言っちまった。
気づいた時には、照れながらも笑顔になる汐見の顔が目前。
自分の意志では止めることはできず、俺の顔にも血が昇る。部活前にドッと疲れが押し寄せて来た。
こいつはちゃんと言ってやらないとすぐ不安がるから、勢いまかせに声に出しちまったことは結果よかったのかもしれない。
「とにかくだ…。そのルール俺も乗った。お前の気遣いはちゃんと伝わってるから安心しとけ」
照れくさくて目を合わせられずに、視線は横に移動させて俺は何にもない壁ばかり見つめていた。
「…うん、ありがとう宮くん。大会と受験が終わったら、私をちゃんと貰ってね」
「……馬鹿だろ、お前」
ふふっ、と笑うこいつが理解できない。そんでもって笑った顔が可愛く見えてくる俺自身も理解不能だ。
“貰って”と、何故、それを今言うんだ。
顔どころか、全身の血が沸騰してしまう程、俺の方が恥ずかしくなっただろうが。
頬を赤らめてるこいつよりも遙かに、俺の顔のが赤くなっているに違いない。顔を真っ赤にして揺れる理性と戦い沈黙する俺。男の俺の気持ちも察せず暢気に微笑むこいつ。
…おい、誰か。この甘ったるい空気をどうにかしてくれ。こそばゆくて仕方ない。