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Rule of Love -黒子の場合-
日も暮れて街灯が夜道を照らす帰り道、手を繋いだまま琴音さんと歩いた。
分かれ道まで来て、何だか手を離すのが名残惜しくなった時、彼女の方から「近くの公園でお話しない?」と誘ってきてくれた。
練習後で体は疲労しているが、少しでも琴音さんと長く居たい気持ちのが上回る。僕はもちろん、頷いた。
二人で手を繋いでベンチに座るも、どうやら今日は彼女が妙な雰囲気だ。不思議に思っていた矢先、以前から伝えたかったという話を切り出された。
「今はウィンターカップに向けて集中したほうがいいと思うから…。キス以上のことはそれが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
「………っ」
「…く、黒子くん?」
彼女の提案には驚かなかったが、僕はすぐに相槌を打てなかった。
僕のことを何よりも大事に考えてくれていて、その上でのお願い事なのだからすぐに頷くべきだというのは分かっていた。
彼女が伝えようとしていることは充分、承知しているつもりだ。
僕はまだ女の人を知らない。
彼女もまだ経験したことがないと、以前それとなく聞いたときに教えてくれた。
好きな者同士が体を重ねる事を、互いに知ってしまえばどうなるのかというのは容易に想像が出来た。
今だってこんなに、僕は彼女を好きなんだ。黙り込んでる僕の手を握って心配してくれる琴音さんをよそに、僕はドキドキしていた。
抱きしめる度にその柔らかい体つきに驚く。男と女ではこんなにも作りが違うのかと。
キスをする度に感動する。柔らかくて心地よくて、気持ちが触れたところから伝わっていくみたいでいちいち感動してしまう。
だから今以上に琴音さんを知ってしまえば、僕はのめり込んでしまうだろう。
もしかしたら僕だけでなく、彼女も。
それが、少しでもバスケに集中できなくなる要因になると危惧して琴音さんは提案してくれているのだ。
WCが控えている僕のことを思ってこそだというのは充分伝わっている。気遣いに感謝すべきだ。
なのに、何故だろう……なんて、自問自答は時間の無駄だった。
相槌の代わりに深く息を吐いた後、少し戸惑っている琴音さんに向き直って僕は告げた。
「正直に言います。僕のことを気遣って提案してくれてるのはすごく嬉しいです。…でも、それと同じぐらい残念がってる自分がいます」
そうだ。本音を隠す相手じゃないのだから、ここは正直に伝えるべきだ。
「本当は琴音さんにもっと触れたい」
彼女は目を大きく見開いて驚いて、瞬きを繰り返した後、白い頬が上気して朱色に染まっていた。
ストレートに気持ちを打ち明けたのは僕の方なのに、それを聞いた彼女の方が真っ赤になっていた。
困らせてしまったかな。だけど、本音を伝えたことは後悔していない。
繋いでいた手を彼女の方から一度離し、また繋ぎ直すと同時に琴音さんは口を開いた。
「わ、私も同じ風に思ってるよ?でも今一番に優先しなくちゃいけないことはバスケだから…。自分がその妨げになるようなことになったら、きっと後悔する」
僕の目を真っ直ぐ見つめて伝える彼女の気持ちに、嘘は1つもないだろう。いつだって真剣だ。
このチームで日本一になる“夢”のことを、第一に考えてくれている。
僕もはじめから彼女の提案を否定する気はなかった。ただ、子供のワガママのような本心を伝えたかっただけなのだ。
それに対して、“私も同じ風に思っている”と言ってもらえたから、…今の僕にはそれで充分だ。
「ここであなたの気遣いを無下にして傷つけてしまったら、僕も後悔してしまいそうです」
街灯に照らされる琴音さんの表情が穏やかになったのが見てわかった。ただ頬はまだ染まったままで何とも愛らしい。
この人にお願いされたら何でも叶えてしまいたくなってしまう。
そんな風に誰かに想いを寄せることは幸せなことなんだと、教えてくれたのも琴音さんだ。
「お互いに約束しましょう」
「…黒子くん、ありがとう」
繋いでいる手と反対の手を胸の位置まで上げて、僕は小指を立てる。
すると、それに気づいた琴音さんは自分の細い小指を僕の小指に絡め、二人で固く指切りを交わした。
「冬の大会での活躍、楽しみにしてるからね。その…、黒子くんとならこの先のことも、全部」
見慣れた柔らかい笑顔に、心が自然と安堵していく。
「琴音さんはいちいち可愛いことを言うので、我慢する方も大変ですね」
小指をほどいて手を解放しつつ再び本音を告げれば、長い睫が動いて彼女は照れくさそうに視線を下に向けた。
もっと遠回しな言い方をした方がよかっただろうか。でもやっぱり、僕の心の内を知っておいて欲しいから。
触れたい。でも、今はバスケが第一優先。その為の我慢。その為の約束。
「あなたが楽しみにしてくれてること全部、期待に応えられるよう頑張ります」
お互い、顔を見合わせて笑うと、そこからあたたかい空気が生まれていくみたいだ。
琴音さんが応援してくれるなら、僕は頑張れる。
あなたが僕との全てを楽しみにしてくれているのと同じで、僕もあなたとのこれからを全て楽しみにしています。
今日の約束には意味があったのだと証明しよう。
そして全てが終わったら、大事に大事に、僕はあなたに触れるだろう。
日も暮れて街灯が夜道を照らす帰り道、手を繋いだまま琴音さんと歩いた。
分かれ道まで来て、何だか手を離すのが名残惜しくなった時、彼女の方から「近くの公園でお話しない?」と誘ってきてくれた。
練習後で体は疲労しているが、少しでも琴音さんと長く居たい気持ちのが上回る。僕はもちろん、頷いた。
二人で手を繋いでベンチに座るも、どうやら今日は彼女が妙な雰囲気だ。不思議に思っていた矢先、以前から伝えたかったという話を切り出された。
「今はウィンターカップに向けて集中したほうがいいと思うから…。キス以上のことはそれが終わるまでしないって、お互いに約束しよう?」
「………っ」
「…く、黒子くん?」
彼女の提案には驚かなかったが、僕はすぐに相槌を打てなかった。
僕のことを何よりも大事に考えてくれていて、その上でのお願い事なのだからすぐに頷くべきだというのは分かっていた。
彼女が伝えようとしていることは充分、承知しているつもりだ。
僕はまだ女の人を知らない。
彼女もまだ経験したことがないと、以前それとなく聞いたときに教えてくれた。
好きな者同士が体を重ねる事を、互いに知ってしまえばどうなるのかというのは容易に想像が出来た。
今だってこんなに、僕は彼女を好きなんだ。黙り込んでる僕の手を握って心配してくれる琴音さんをよそに、僕はドキドキしていた。
抱きしめる度にその柔らかい体つきに驚く。男と女ではこんなにも作りが違うのかと。
キスをする度に感動する。柔らかくて心地よくて、気持ちが触れたところから伝わっていくみたいでいちいち感動してしまう。
だから今以上に琴音さんを知ってしまえば、僕はのめり込んでしまうだろう。
もしかしたら僕だけでなく、彼女も。
それが、少しでもバスケに集中できなくなる要因になると危惧して琴音さんは提案してくれているのだ。
WCが控えている僕のことを思ってこそだというのは充分伝わっている。気遣いに感謝すべきだ。
なのに、何故だろう……なんて、自問自答は時間の無駄だった。
相槌の代わりに深く息を吐いた後、少し戸惑っている琴音さんに向き直って僕は告げた。
「正直に言います。僕のことを気遣って提案してくれてるのはすごく嬉しいです。…でも、それと同じぐらい残念がってる自分がいます」
そうだ。本音を隠す相手じゃないのだから、ここは正直に伝えるべきだ。
「本当は琴音さんにもっと触れたい」
彼女は目を大きく見開いて驚いて、瞬きを繰り返した後、白い頬が上気して朱色に染まっていた。
ストレートに気持ちを打ち明けたのは僕の方なのに、それを聞いた彼女の方が真っ赤になっていた。
困らせてしまったかな。だけど、本音を伝えたことは後悔していない。
繋いでいた手を彼女の方から一度離し、また繋ぎ直すと同時に琴音さんは口を開いた。
「わ、私も同じ風に思ってるよ?でも今一番に優先しなくちゃいけないことはバスケだから…。自分がその妨げになるようなことになったら、きっと後悔する」
僕の目を真っ直ぐ見つめて伝える彼女の気持ちに、嘘は1つもないだろう。いつだって真剣だ。
このチームで日本一になる“夢”のことを、第一に考えてくれている。
僕もはじめから彼女の提案を否定する気はなかった。ただ、子供のワガママのような本心を伝えたかっただけなのだ。
それに対して、“私も同じ風に思っている”と言ってもらえたから、…今の僕にはそれで充分だ。
「ここであなたの気遣いを無下にして傷つけてしまったら、僕も後悔してしまいそうです」
街灯に照らされる琴音さんの表情が穏やかになったのが見てわかった。ただ頬はまだ染まったままで何とも愛らしい。
この人にお願いされたら何でも叶えてしまいたくなってしまう。
そんな風に誰かに想いを寄せることは幸せなことなんだと、教えてくれたのも琴音さんだ。
「お互いに約束しましょう」
「…黒子くん、ありがとう」
繋いでいる手と反対の手を胸の位置まで上げて、僕は小指を立てる。
すると、それに気づいた琴音さんは自分の細い小指を僕の小指に絡め、二人で固く指切りを交わした。
「冬の大会での活躍、楽しみにしてるからね。その…、黒子くんとならこの先のことも、全部」
見慣れた柔らかい笑顔に、心が自然と安堵していく。
「琴音さんはいちいち可愛いことを言うので、我慢する方も大変ですね」
小指をほどいて手を解放しつつ再び本音を告げれば、長い睫が動いて彼女は照れくさそうに視線を下に向けた。
もっと遠回しな言い方をした方がよかっただろうか。でもやっぱり、僕の心の内を知っておいて欲しいから。
触れたい。でも、今はバスケが第一優先。その為の我慢。その為の約束。
「あなたが楽しみにしてくれてること全部、期待に応えられるよう頑張ります」
お互い、顔を見合わせて笑うと、そこからあたたかい空気が生まれていくみたいだ。
琴音さんが応援してくれるなら、僕は頑張れる。
あなたが僕との全てを楽しみにしてくれているのと同じで、僕もあなたとのこれからを全て楽しみにしています。
今日の約束には意味があったのだと証明しよう。
そして全てが終わったら、大事に大事に、僕はあなたに触れるだろう。