長編
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「名前ー帰んぞー」
教室の掃除を終え、鞄に手をかけた所で名前を呼ばれる
夏真っ只中、ましてやまだ5時前で外も明るいというのに何故か隆くんはこうして迎えに来るようになった
男子には揶揄われるし女子にはヒソヒソされるってんでやめろというのにやめないのだ
それもこれも例の事件のせいだろうけど、私も詳しくは知らない
「で、結局どういう話になってんの?」
「8月3日、武蔵祭りの日に決戦だってよ」
急に「今日から帰り送るわ」と押しかけてきて数日
パーちんの機嫌とかも関係してんのかと思って、訳を話さなきゃ送られてやらん。と逃げ回ったら渋々教えてくれた
被害の中に強姦もあって心配なんだろう
人数が多けりゃ流石に勝てる自信も減るわけで、安心してもらう為にも送られてあげてる訳だ
「ふうん、随分と血の気の多い祭りだね」
「危ねーからあんま近づくんじゃねえぞ、祭り楽しんでろ」
「わかってるよ、あー私は、愛美愛主には喧嘩売らないし、買わない事をここに誓いまーす」
胸に手を当てて冗談交じりに約束した
約束は守る人間、というのを隆くんもよく知ってるからか「ん」という短い返事以外何も言わなかった
まだ15のガキなんだから危ないことはやめろと言いたい気持ち半分、信念持ってやってんなら思う存分不良やらせてやりたい半分
大なり小なり怪我はするだろうけど、死人が出るまでは行かないと思うし
しかし8月に入って状況が大きく変わった
「は?パーちんが…?」
ルナとマナに会いに三ツ谷家に来たのだが、隆くんから聞かされた話に頭が追いつかなかった
8月3日を予定していた愛美愛主との抗争は数日前に決着が着いたらしいけど、パーちんが相手さんの
パーちんも元から自首するつもりでやったとか
「それでマイキーとドラケンが喧嘩してんのね…」
「知ってたのか?」
「エマちゃんから聞いた」
先日泣きながら電話をして来た彼女
内容はよく分からなかったが「マイキーとドラケンが喧嘩しちゃった…どうしよう」って泣きじゃくるのを電話越しに宥めるしか出来なかったけど
「不良って難しいね」
世界を救うためになりふり構わず敵を倒すだけだった前世のがよっぽどシンプルでわかりやすかった
まだ15のガキだってのに何でこうも拗れるか…
「んじゃまあそろそろ帰るわ、漫画買いに行きたいし」
「おう、またな」
本屋で漫画の新刊買ってついでにコンビニで限定商品のジュースとスイーツを買った
私が動いたって何も変わらないから大人しくいい方向に転ぶよう願っとこ
なんて思ってた矢先
「あ、名前さーん!こっちこっち!」
つい最近涙でぐずぐずだったはずの声が随分と明るく楽しそうなものになっていて幻聴かと思った
呼ばれた方を見れば公園で楽しそうにボール遊びしてる男子数名とそれを眺める女の子二人
その中に話題の中心のマイキーとドラケンもいる
「ん?」
あれ?なんか私が聞いた話と大分違うんだけど
なにこれ、認識阻害?
「ちょっと色々と聞きたいんだけど、とりあえずあの二人なんなの?」
「なんか仲直りしたみたい」
「不良ってほんと難しい」
なんだよお前ら、隆くんさっきまで結構悩んでたんだけど
スピード解決にも程があんだろ
「えっと…?」
とここで初めて見る女の子が戸惑い気味にこちらを見ていた
気づいたエマちゃんがすかさず紹介してくれる
「あ、この子橘日向!あそこにいるタケミッチの彼女!で、こっちは名前さん!三ツ谷の彼女!」
「よろしくお願いします」
「よろしくねー、あと何回も言うけど彼女じゃないヨー」
会う度に言うけど残念ながら付き合ってないんだわ
めんどくさい事はもう起きないにしても
女子のね視線がね、うるさいのよ
「てかタケミッチて誰?」
「あそこで一緒に馬鹿やってる金髪、タケミッチのおかげで二人が仲直りしたんだよ」
「へー……」
楽しそうに遊ぶ数人で金髪なのは三人
その内の初めて見る顔は至って普通で、どこにでも居るような子だった
頭こそ染めてるけど喧嘩はそんなに強くなさそう
彼にも立香くんのような目に見えない強さがあるんだろう
「そういえば名前さん武蔵祭り行くの?よかったら三ツ谷誘って一緒に行かない?」
「んー…行けたら行くかな」
「それ来ない人が言うやつ」
そうそう隆くんといえば
仲直りの件早めに報告しとこ
皆で仲良く肩を組み合ってる写真送り付けた