長編
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事前に分けていたクッキーを片手にぶらぶらと足を引きずりながら目的地を目指す
所々焼きにムラがあるそれは形こそ歪なものが多いが味は普通だ
チョコチップやココアなど合わせて3種類も作ったから結構大変だった
「あれ、千冬じゃん」
「…っす」
私に気づいた彼はガシガシと乱暴に目元を拭った
墓前には半分残ったインスタントの焼きそば
おそらく彼が好んで食べていたペヤングだろう
…タイミング悪い時に来ちゃったな……
失礼、と遠慮なく隣に腰掛けてクッキーを乱雑に放り投げて手を合わせた
あまりにも態度が悪くて隣にいる千冬がギョッとしていた
流石に今のは私も悪いと思った、すまんな
「これさ、ハロウィンパーティーの余り物」
「…はぁ……?」
事の経緯を話せば「場地さんらしいっすね」と納得した後「じゃあこれ名前さんが作ったんすか…?」とこれまたギョッとした
君が思ってる数倍は家庭的だぞって言っといた
「…貴重な女子の手作りを逃がした阿呆め、ってことで一緒に食おうぜ千冬」
「え」
初めからこのクッキーは目の前で貪り食ってやろうと思ってたから千冬も加わればあいつはもっと悔しがるだろう
一応手は合わせたし、供えたからおっけーだろ
ガサガサとこれまた豪快に袋をこじ開け音を立てながら食らいついた
「ほら食いなよ、結構うまくできたから」
「じゃあ…いただきます…」
墓の前で男女が無言でクッキーを食べるというカオスな状況
ここに他の人が居なくてよかった
「…人の死ってもんには慣れてる方なんだ、誰も死ぬことのないようにと思ってるけど…なんだろ、それとは別のとこにあるというか……」
それこそ目の前で死んでいく人を何人も見てきたし
実際自分自身も一度死んでる
みんなしわくちゃになるまで生きれる訳じゃない
ある日突然やってくるのがそれだ
場地はそれが人より早かっただけ
それに、聞けば自分で選んだそうじゃないか
「なのになんで怒りよりも悲しい方が勝つのか…不思議だ」
疑問が思わず、と言った感じに口から出ていた
急にこんなこと言われても困るだろうに…
どういつもの調子に戻すか、と頭を回したところ「そりゃ…」と千冬が口を開いた
「友達 が死んだら…誰でもそうなる、と思うっす」
友達
頭の中で何度も復唱して気づいた
私は同世代の子たちより21年分の意識がある
そのせいでどこか他人事のように生きていたが…
私は15歳の子供なんだ
学校が別だろうが、共に過ごす時間が多くなかろうが
彼は私にとって"友達"と呼べるものだったのだろう
「……ありがとう千冬、スッキリした!こりゃ長いこと生きてると気づけないわ」
「なんすか急に…」
「まあまあ、用も済んだから私帰るわ。邪魔してごめんね」
他にこれといった用事も無く、気づけばもう最寄りの駅まで来ていた
目に付いたベンチに腰を下ろしてゆっくり息を吐き出す
「……クソったれ…」
命の重さは皆等しく尊い
理解しているからこそ手の届く範囲は守るべきだと思う
ドラケンは運良く近くに居て、それぞれが的確に動いたから間に合った
でも場地はどうすることも出来なかった
全てが終わった後に知ったから『仕方ない』で済む話だ
前世の私なら
"守るべき"から"守りたい"へと変わっていた
似ているようで全く違うから気づけなかった
平和な世界になって余裕が出来たからか…
__いや、きっとあの日から…
藤丸立香を命を賭して護ったときには既に
「はっ…"友達"が死んで悲しんでるってのに」
自分が芯まで冷えきった人間ではなかった事に嬉しく思う
…なんて、不謹慎にも程がある
所々焼きにムラがあるそれは形こそ歪なものが多いが味は普通だ
チョコチップやココアなど合わせて3種類も作ったから結構大変だった
「あれ、千冬じゃん」
「…っす」
私に気づいた彼はガシガシと乱暴に目元を拭った
墓前には半分残ったインスタントの焼きそば
おそらく彼が好んで食べていたペヤングだろう
…タイミング悪い時に来ちゃったな……
失礼、と遠慮なく隣に腰掛けてクッキーを乱雑に放り投げて手を合わせた
あまりにも態度が悪くて隣にいる千冬がギョッとしていた
流石に今のは私も悪いと思った、すまんな
「これさ、ハロウィンパーティーの余り物」
「…はぁ……?」
事の経緯を話せば「場地さんらしいっすね」と納得した後「じゃあこれ名前さんが作ったんすか…?」とこれまたギョッとした
君が思ってる数倍は家庭的だぞって言っといた
「…貴重な女子の手作りを逃がした阿呆め、ってことで一緒に食おうぜ千冬」
「え」
初めからこのクッキーは目の前で貪り食ってやろうと思ってたから千冬も加わればあいつはもっと悔しがるだろう
一応手は合わせたし、供えたからおっけーだろ
ガサガサとこれまた豪快に袋をこじ開け音を立てながら食らいついた
「ほら食いなよ、結構うまくできたから」
「じゃあ…いただきます…」
墓の前で男女が無言でクッキーを食べるというカオスな状況
ここに他の人が居なくてよかった
「…人の死ってもんには慣れてる方なんだ、誰も死ぬことのないようにと思ってるけど…なんだろ、それとは別のとこにあるというか……」
それこそ目の前で死んでいく人を何人も見てきたし
実際自分自身も一度死んでる
みんなしわくちゃになるまで生きれる訳じゃない
ある日突然やってくるのがそれだ
場地はそれが人より早かっただけ
それに、聞けば自分で選んだそうじゃないか
「なのになんで怒りよりも悲しい方が勝つのか…不思議だ」
疑問が思わず、と言った感じに口から出ていた
急にこんなこと言われても困るだろうに…
どういつもの調子に戻すか、と頭を回したところ「そりゃ…」と千冬が口を開いた
「
友達
頭の中で何度も復唱して気づいた
私は同世代の子たちより21年分の意識がある
そのせいでどこか他人事のように生きていたが…
私は15歳の子供なんだ
学校が別だろうが、共に過ごす時間が多くなかろうが
彼は私にとって"友達"と呼べるものだったのだろう
「……ありがとう千冬、スッキリした!こりゃ長いこと生きてると気づけないわ」
「なんすか急に…」
「まあまあ、用も済んだから私帰るわ。邪魔してごめんね」
他にこれといった用事も無く、気づけばもう最寄りの駅まで来ていた
目に付いたベンチに腰を下ろしてゆっくり息を吐き出す
「……クソったれ…」
命の重さは皆等しく尊い
理解しているからこそ手の届く範囲は守るべきだと思う
ドラケンは運良く近くに居て、それぞれが的確に動いたから間に合った
でも場地はどうすることも出来なかった
全てが終わった後に知ったから『仕方ない』で済む話だ
前世の私なら
"守るべき"から"守りたい"へと変わっていた
似ているようで全く違うから気づけなかった
平和な世界になって余裕が出来たからか…
__いや、きっとあの日から…
藤丸立香を命を賭して護ったときには既に
「はっ…"友達"が死んで悲しんでるってのに」
自分が芯まで冷えきった人間ではなかった事に嬉しく思う
…なんて、不謹慎にも程がある