長編
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「うまー、隆くんもなんか頼めばいいのに」
約束通り昼下がりに街中のファミレスで集合した
朝から何も食べてなかったのもあって私はスパゲティを頼んだんだが
「俺はもう昼食ってきたからいい」
「…一人で食べんのも気まずいんだけど……」
なんて初っ端からいたたまれない空気の中昼食を終え今に至る
じっと射抜くように見られ落ち着かない
視線から逃れるように淹れてきたカフェオレを少し口に含む
「そうねー…何から話そ……私前世の記憶あってさー」
「……おい、ガキん頃の冗談じゃ誤魔化せねえぞ」
もう全部話していっその事とことん引いてもらおうと思ったがやはりそう上手くいかないらしい
出会って間もない頃ルナマナに冗談混じりに話したのを覚えてたのかこいつ
「まあ普通はそういう反応よね、流石の私も急にそんなこと言われたら笑い飛ばすわ」
前世でも魔術なんてもんは一般的には知られてなかったから信じてもらえるとは1ミリも思っちゃない
いっその事死ぬほどドン引いて離れてくれた方がいいのかも
「今から話すこと全部嘘みたいな本当の事だから、別に信じなくてもいいけど…まあ聞いてよ」
21年という短い人生を包み隠さず全て話した
前世がどうの言ってる時点で突拍子もないけど、ファンタジーだと思ってくれればいくらか飲み込みやすいだろう
親の顔は覚えてない
魔術師だという男が幼い私を買いとったそうだ
人より頑丈で戦闘に特化した個体を造る為だとか
他にも沢山子供がいたけど成功例は私一人だった
「小学校に入る歳に7人の魔術師でやる大規模な戦争があったの」
人類史に名を刻んだ英雄を一人ずつ召喚して殺し合う
私は英霊の燃料にする為とひたすら一般人を殺し回る役割だった
最終的に養父は死んで、私は生き残った
「戦争での勝者は私の体に興味が湧いたらしい」
まあクズの魔術や研究は反吐が出る程最悪だったけど倫理観がゼロなだけで優秀だったから
私が唯一の成功例と言うのもあるんだろう
魔魔術師に倫理観の話を持ってくる方が間違ってるが
「一応中学までは通わせてくれたのよ、次の年からは新設される機関の職員になるのが決まってたし友達ゼロだったけど」
「…それで青春か……」
「そそ、だから今凄く楽しんでるよ」
っと、話が逸れたね
戦争での勝者、私の身元引受け人であるマリスビリー・アニムスフィアを所長とする組織『人理継続保障機関フィニス・カルデア』
未来を観測して100年後も人類社会が存続していることを保証するというのが主な役割だった
他にも英霊召喚だったり人道的じゃない酷い事もしてたみたいだけど…それはまあいいや
「2016年、人類の滅亡が証明された。それまでの歴史に観測出来ない領域が見つかってね」
霊子転移…タイムトラベルって言った方がまだ分かりやすいかな?そいつで直接特異点を叩こうって作戦になった
「作戦開始だって時に組織から裏切り者が出て…管制室は火の海、職員のほとんどが死んだ……地獄だよ」
私はその時凄くひねくれてたというか……人類の救世主の中に大量殺人者がいていいものかと思って中々装置に入れなかったの
「まあおかげで凍結保存されずに済んで、少しくらいは役に立てたからよかったかな」
結果的に人類はカルデアの数少ない生き残り以外全て滅んだ
「それから藤丸立香という魔術のまの字も知らない普通の少年を最後のマスターとして七つの特異点を一つ一つ修正していった」
一通り話し終えて頭を抱えている隆くんに「何か質問ある?」と聞いた
聞いただけじゃわからないだろうけど
「……魔術とかレイシフト?とかよくわかんねーし…いや待て、11年後に人類滅ぶのか…?」
「あー、その辺は多分大丈夫だと思うよ。今のとこ原因不明の大火事とかガス爆発とか無さそうだし…世界線が違うんじゃない?」
あくまで私の予想ではの話だけど、不安げだった隆くんの表情が和らぐのを見て少しは信じてくれたのだと感心した
そう言うと「名前は嘘付かないだろ」と当たり前のように言うから笑ってしまった
「あとは、そうだな…最後はどうなったんだ?世界は救えたのか?」
最後…
「……残念ながら私も知らないの、途中で死んだから」
気に病まないようにと笑い話のように笑顔で話したのがまずかったか
隆くんは怒ったような悲しんだような表情で何も言わない