短編
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何をするでもなく公園のベンチに座り空を仰ぐ
さて、彼はいつ来るかな
思わぬ接触から二日目
このまま二日後を終えてしまえば彼の記憶から私のことは消え去ったと考えていいだろう
「……よう、苗字」
「や、士郎くん、昨日ぶり」
どうやら杞憂だったらしい
昨日の様子とはうって変わり、険しい顔つきだ。警戒心が隠しきれてない
気にせず「まあ座りなよ」とベンチの端に寄る
短い返事をして素直に座ってくれた
「何から聞きたい?」
「……なら、あんたは何者だ?」
「そうね、じゃあ確認のためにも自己紹介しようか」
第五次聖杯戦争
私は言峰綺礼の協力者、ランサーの魔力の供給源
「で、君の認識はこれで合ってる?」
「あぁ…問題は_____」
_____誰も苗字名前を覚えていない
セイバーも遠坂も、あのランサーですら
「誰だ」という
衛宮士郎自信も完璧に覚えているわけではないらしい
「確かに"いた"のは覚えてるんだ…でもそれだけだ、あんたについて思い出そうとしても何もわからなかった」
なんとなく予想ついてたけど、そういう認識なんだな
そりゃ確かな記憶も無いのに知ってる人なんて気持ち悪いにも程がある
さて、どう説明したもんか……
「とりあえず、君はひとつ勘違いをしている。何かと思うね?」
「…なんだよ急に…勿体ぶってないで教えてくれよ」
まったく士郎くんてばノリ悪いな〜
無駄に恥かいただけじゃないか
「みんな私のことを"覚えてない"んじゃなくて、"知らない"んだよ…あ、士郎くんも例外じゃないから」
「…は?」
口をぽかんと開けて絵に書いたような間抜け面を晒す士郎くんに思わず笑ってしまう
すぐにムッとして「早く続きを話せ」と言わんばかりに睨んでくる
「ごめんごめん、パラレルワールドって知ってる?簡単に説明すると、ここは私が聖杯戦争に参加しなかった世界」
最初は私も戸惑ったな
ちゃんと生きてるし、人と会話も出来てる
でも、聖杯戦争の関係者にだけは認識すらされなかった
「どういう意図でここにいるか私もよくわかんないんだよね〜……ランサーに引っ張られたか、はたまたただの嫌がらせか…」
ま、十中八九後者だろうけどね
私はマスターにすらなれなかったし、"彼女"にとっては邪魔な存在だろうしね
「じゃああんたは聖杯戦争を再開させようとか、関係してるわけじゃないのか?」
「もちろん、関わりたくても関われないし、私はただ見てるだけ」
__________
「だからあの時あんなびっくりしてたのか」
声をかけた時の様子を思い出す
正直あんなに動揺するなんて思ってなかったけど、今なら納得出来る
正直苗字の言ってることはよく分からないが、理解はした
「でもなんで俺だけ気づいたんだ?」
「さあ?私も正直よくわかんない」
まあなるようになるさ
そう言ってケラケラと笑う彼女
よく今日までやってこれたもんだ…
「そういえばなんでここなんだ?商店街はわかるけど…公園は面白いものそんなに無いだろ?」
「ん〜?それはね〜……あ」
口は弧を描いているのだが、その実目は笑っていない
話し出すかと思えば何かに気づいて顎で俺の後ろを指してくる
「?…あ、なんだランサーか」
「あ?なんだ坊主かよ、"一人"で公園たぁ暇なのかお前は」
隣には苗字がいるが、彼には見えていないのか
いや、認識出来ないと言った方が正しいか
けど、まいったな
ここに来たということはやることは一つだ
先日の苗字の怒りっぷりを思い出し、無意識に下半身の心配をしてしまう
「おっ、そこのお姉さん、ちょっといいかな?」
20歳前後くらいの黒髪の女の人を呼び止めるランサー
隣からどす黒いオーラが出ているような気が…いや、確実に出ている…正直この場から走って逃げ出したいくらいだ
「丁度よかった、士郎くん、面白いもの見せてあげるね」
うふふ、と怖いくらい綺麗な微笑みで「よく見ててね」と優しい声音で話す
何をすると言うんだ…
気をつけろランサー、正直殺されたって文句は言えないぞ
「こンのっ、嘘つきバカランサー!!」
勢いよくランサーの横顔をぶん殴った
しかもグーでいったぞあの女
しっかりと腰を落とし、全身を使った完璧なパンチだ
けどさっき関わりたくても関われないって…
「ぶっ!?」
すると何処からか飛んできた野球ボールが今しがた苗字がぶん殴った横面にクリーンヒット
サーヴァントなら避けれて当たり前のはずなのだが…
遠くの方から「すいませーん」と野球少年がボールを取りに来る
「どう?面白いでしょ?無い存在からの衝撃は勝手に修正されてこんな風に別のものに変換されるのだ」
「そういうことか…うん……」
怖い
正直こんな行動的な人とは思ってなかったが、遠坂以上にやばい人かもしれない
先程の事もあり、ナンパに失敗したランサーが戻ってくる
「いってぇ…なんだってんだよ、ったく」
「おつかれランサー…その……ふ、不運だったな…」
苗字に見つかって…
そう付け足したいがまた変な反応されるだろうから黙っておいた
「不運なんてもんじゃねえっての、最近多いんだよこんなのが」
「へぇ……」
「なによ、その目は……私だって嫉妬くらいするっての」
じとりと視線を送れば不機嫌そうにそっぽを向いた
気持ちはわかるけど…もっと他になかったのか…
照れ隠しが激しければ嫉妬も激しいときた
苗字は結構めんどくさいタイプらしい
「ランサーも大概にしとけよ、次は何するかわかんねーぞこいつ」
「こいつ…?って誰だ?」
「あー、いや…忘れてくれ、とにかく!あんまやんちゃすんなってこと」
一応忠告はした
減るとは思わないけど、苗字も可哀想だし
何より見てるこっちも怖い
「士郎くんも気をつけなよ?女の嫉妬は怖いから」
「はい、気をつけます…」
言葉の重みがすごい