短編
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今日も今日とてお茶請けの危機が迫ってきているので、商店街に赴いた
「っと…あれは……」
少し前から周りを見回しながらやってくる一人の女性
確かに会ったことのある人物だ
半年前の聖杯戦争にも特殊な形でだが参加していたし、認識もある
はずなのにハッキリと思い出せない
「あー……、!」
じーっと見つめていたせいか目が合った
……そうだ、苗字だ
聖杯戦争では仮ではあるがランサーのマスターをやっていたじゃないか
なんで今まで彼女の存在を忘れていたのだろうか
ずっと引っかかっていたものがやっと取れたようなスッキリした感覚だ
「よう苗字、はよ」
こんな距離で目が合ってしまったし、彼女にも聞きたいことはあるので声をかける
と、まるでお化けでも見たかのような顔でピタリと立ち止まった
そりゃ立場上は敵同士だったけど最終的には協力しあった仲だし、こうやって声をかけるのも何らおかしくはないはず…だよな?
なのにどうしてここまで驚く必要があるんだろうか
「おーい?……もしかして俺の顔になんかついてる…?」
「あ…い、いや!なんでもないよ!士郎くんが声掛けてくれるとは思わなくてつい、びっくりしちゃってね」
スイッチが入ったかのように動き出したかと思えば焦りながらも挨拶を返してくれた
最近どうだ、なんて世間話をしながら一緒に歩く
大学の方はまだ休学中らしく一日中暇してるらしい
そうだ、こいつにも一応関係者だし聞いとかないとな
「苗字はこの状況どう思う?ランサーから何か聞かないか?」
「うーん…よくわかんないけど、私はもう関係者じゃないしなー……ランサーとだってパスは繋がってないし」
「はっ?」
聞けば言峰が死んだ時点で自動的に苗字とのパスも切れたらしい
「マスターが死んだんだもん、そうなるよ」
なんて当然かのように話すからそうなのだろう
なんか強引に説き伏せられたようで納得いかないけど
でもそれにしても繋がりが切れたからって、話くらいはするだろうに
この二人はなんだかんだ仲の良い関係だった気がする
グイグイ攻めるランサーと、それを嫌そうに躱しながら満更でもなさそうな苗字
てっきり今も2人で仲良くしてるもんだと思っていたが、そういえばランサーから苗字の話はひとつも聞いてない…
「なんだよ、ランサーと何かあったのか?」
「んー………そうね〜、どう話したもんか………あ、そうだランサーといえば」
結局何があったのかは話して貰えないまま思い出したかのようにランサーの話をしだすう彼女
聞かれたくないことだったのだろうか
「あいつうわ……じゃない、ナンパ三昧じゃない?しかも相手が2人だろうが3人だろうがお構い無しに」
「あー…うん、確かに……」
自分の面の良さを十分に理解してるとこがまた腹立つんだよね、と貶してるつもりなんだろうけど褒め言葉も入っている
しかもこいつ浮気って言おうとしたぞ最初
あながち間違ってないのに態々言い直すところがらしいというか
「ほんっとに!ホットドッグ無理やり口にねじ込むか、いっその事去勢手術でもした方がいいんじゃないかな」
「ぶっ!」
ランサー、気をつけろ
男としての大事な尊厳の危機が迫ってるぞ
「…き、去勢は…その……さすがに同情する…」
一瞬想像してしまい、自分に言われてるわけじゃないのにヒヤリとした
「えー、そうでもしなきゃ直んないって」とケラケラ笑ってるが冗談なのか本気なのかわからなかった
これから先、無いであろうがこいつにだけは逆らいたくないな
「ま、今日は話せてよかったよ、一人で暇してる時とか見かけたらでいいからまた声かけてよね」
「そりゃいいけど…いつもどこにいるんだよ?結構な頻度で商店街来てるけどお前のこと初めて見かけたぞ?」
普段家で引きこもってて、今日たまたま商店街に来たって感じでもなさそうだったし
タイミングが合わなかったのだろうか…
彼女は一瞬寂しそうな顔をしたかと思えばすぐにいたずらっ子のような顔で
「私らは基本神出鬼没だったしー?そりゃ簡単には会えないって」
なんて言うのだ
確かにランサー陣営だけは居所が掴めなかったけど
とっくの昔に聖杯戦争は終わってるって
「ま、冗談は置いといて…士郎くんが会おうと思えば会えるよ、大体公園とか商店街とかフラフラしてるから」
じゃあまたね
そう言って手を振り去っていった
違和感があるのはわかるが、それが何かはまだわからない