まにときり
きゅうにげんきになったきりは、このなにもないおそろしくしんとしたところからにげだそうと、われたがらすまどからそとにでました。
はじめてそとにでました。
それも一ぴきででました。
なに一つ、わかりませんでした。
きりはそとのせかいで、しにものぐるいで生きぬきました。
どんなにこわくても、どんなにふあんでも、どんなになまえをよんでも、いつもきりは一ぴきでした。
水たまりのどろ水をのみ、ニンゲンのごみばこをあさり、こごえるさむさの中をあたたかいねばしょをもとめてさがし、ニンゲンやいぬにおいかけられ、からすにつっつかれながらも、きりは生きて生きて生きぬきました。
やがて、ふしぎなことにきりのおなかはどんどん大きくなり、しばらくするとねどこで白いたまごを一つうみました。
きりはそれをおなかの下にわらないように入れ、たべることものむこともせず、たいせつにたいせつにあたためました。
きこえるのが、おなかのおとだけになり、またきりがほねとかわとになって、おきあがれなくなったころ、白いたまごにぴしぴしとひびが入りました。
かすむ目できりが見まもっていると、たまごの中から小さな小さなねこがうまれました。
かわいらしいしましまもようで、せなかにはうすいきいろのやわらかなはねがはえていました。
こねこは、
「みゅう」
と、なきました。
きりもなみだをぼろぼろとながして、なきました。
「きみのなまえは『まに』だよ。
おいで、ぼくのまに」
きりは小さなまにをよび、ほっぺたをぺろりとなめました。
小さなまにはどこもきえませんでした。
きりは小さなまにをぺろぺろとなめました。
小さなまにはきもちよさそうに目をとじました。
おしまい
***
あとがき https://etocoria.blogspot.com/2017/06/manitokiri.html
はじめてそとにでました。
それも一ぴきででました。
なに一つ、わかりませんでした。
きりはそとのせかいで、しにものぐるいで生きぬきました。
どんなにこわくても、どんなにふあんでも、どんなになまえをよんでも、いつもきりは一ぴきでした。
水たまりのどろ水をのみ、ニンゲンのごみばこをあさり、こごえるさむさの中をあたたかいねばしょをもとめてさがし、ニンゲンやいぬにおいかけられ、からすにつっつかれながらも、きりは生きて生きて生きぬきました。
やがて、ふしぎなことにきりのおなかはどんどん大きくなり、しばらくするとねどこで白いたまごを一つうみました。
きりはそれをおなかの下にわらないように入れ、たべることものむこともせず、たいせつにたいせつにあたためました。
きこえるのが、おなかのおとだけになり、またきりがほねとかわとになって、おきあがれなくなったころ、白いたまごにぴしぴしとひびが入りました。
かすむ目できりが見まもっていると、たまごの中から小さな小さなねこがうまれました。
かわいらしいしましまもようで、せなかにはうすいきいろのやわらかなはねがはえていました。
こねこは、
「みゅう」
と、なきました。
きりもなみだをぼろぼろとながして、なきました。
「きみのなまえは『まに』だよ。
おいで、ぼくのまに」
きりは小さなまにをよび、ほっぺたをぺろりとなめました。
小さなまにはどこもきえませんでした。
きりは小さなまにをぺろぺろとなめました。
小さなまにはきもちよさそうに目をとじました。
おしまい
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あとがき https://etocoria.blogspot.com/2017/06/manitokiri.html
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