サンタ見習い三郎太くんのクリスマス・イブ
サンタの世界も最新技術が導入され、一人ずつに端末が配布されるようになり、複数のサンタが活躍しても混乱しないようになった。
タブレット型の端末は子どものリストや家の地図、困ったときのマニュアルなどすぐに取り出せるようになっており、サンタ見習いはすぐにこれの使い方を教育される。
しか太陽の地場やオーロラの発生、流れ星などにより安定して正確に作動しないこともあり、昔ながらのアナログ手段でも業務が滞りなくできるスキルも身につける。
地図、コンパスを使ったり、北極星や星図を見て自分の位置を把握したり、プレゼントリストを大雑把に頭に入れたり。
たまに数式に数を入れ計算もするので、メモ帳と鉛筆、計算機も必要だ。
三郎太は汚部屋をかきわけ、すぐに捨ててもよさそうなものをまとめながら、とりあえずサンタの黒いバッグとパソコンを発掘した。
最後の最後までサンタ端末が見つからず泣きそうになったとき、クロードが「プレゼントの中に紛れてたの」と端末を持ってきたときには、三郎太は泣いていた。
「ごめんね、泣かせて。お腹空いてるの?」
「空いてますよ。今日一日中なにも食べていません」
「そりゃあ大変だああああっ!
ルドルフーーーーー!!!ルドルフーーーーーー!!!」
クロードはどたどたとぽっちゃりとした身体をゆすりながらどこかへ消えていった。
遠くでルドルフの怒鳴り声が聞こえた。
三郎太は端末を確認すると充電切れて電源が入らなかった。
充電器を探す必要があった。
充電器も見つけ、必要な地図も欠損していたので発掘したプリンタを使って印刷した。
次第にサンタバッグには必要なものが詰まってきた。
ほっとしたところで声がした。
「飯だ」
見るとルドルフが事務所を見回していた。
「もっと使えねーヤツかと思っていたが、ま、やるじゃん」
連れていかれたごちゃついたダイニングキッチンにはインスタントのコーンポタージュと小さな丸パンが置いてあった。
「明日はもうちょっとまともなものを食わせてやる」
「三郎太くん、ここに座って!今、あったか~いココアをいれてあげるね!」
「おまえはなにもするな。食ってろ」
「でも……」
先に席につき、チョコレートクリームをたっぷりつけてもぐもぐと食べていたクロードがルドルフに怒鳴られしょんぼりした。
クロードは鼻のあたまにも口の周りにもべったりとクリームをつけている。
「おまえが動くとかえって仕事が増える。立つな!」
ルドルフは三郎太のためにココアをいれ始めた。
三郎太はクロードが勧めてくれた椅子に座り、ポタージュを飲んだ。
温かいスープが冷え切った体に沁みた。
「はい、これ!」
パンと同量のチョコクリームが盛られた丸パンをクロードが三郎太の口に押しつける。
こわごわぱくりと口を開き、静かに咀嚼する。
クロードがじっと見つめている。
「おいしい?」
「甘い……」
「おいしい?」
「はい」
「よかったー!じゃ、次!」
クロードが次のクリーム盛りもりパンを口に押し込む。
まだ飲み込まないうちに次のパンも口に入れる。
次も次も次も。
「なにやってんだっ、このどあほがっ!三郎太っ、しっかりしろ!水!水!」
ルドルフがココアの入ったマグカップを入れて戻ってきたときに、三郎太には口の中にぎゅうぎゅうにパンが詰め込まれ目を白黒させていた。
ルドルフは隣でどうしようどうしようと焦っているクロードを突き飛ばし、三郎太を抱えこむ。
三郎太は懸命に口を動かしパンを咀嚼しようとはしていた。
ルドルフは三郎太を抱き上げシンクに行くとグラスに水を汲み、少しずつ飲ませた。
口に水分が入ったことでちょっとずつ口の中がましになってきた。
ゆっくりと時間をかけ、三郎太が口の中のパンを全てのみ込んだ。
そばでは涙目になったクロードがあわわあわわと飛び跳ねている。
「あー、死ぬかと思った……」
口の中のパンを全部飲み込み、ほっとして三郎太がつぶやいた。
「よかったよーーーーっ。死んじゃだめだ、三郎太くんっっっ!!!」
抱きつこうとしたクロードの顔面にルドルフが手のひらを押しつけた。
「おまえが殺しにかかったんだよ、どあほっ!それにチョコでべとべとの手で三郎太にさわんなっ!」
「そんな、そんな」
「おまえはもう十分に食っただろうがっ!もう仕事に戻れ!」
「えー、もうちょっと食べたいな」
クロードは上目遣いでかわいらしく見つめていたが、ルドルフには通用するはずもなく「最近また太りやがって。おまえはもう食わなくてもいい!」と怒鳴られ、すごすごとダイニングから出ていった。
三郎太はようやく自分のペースで食べられるようになり、ほっとしてルドルフがいれてくれたココアを飲んだ。
「おまえはこれが終わったら寝ろ。ベッドは事務室の奥に簡易のがある」
「でもまだ仕事が残っているんじゃ……」
「初めてのクリスマス業務だろ。ハードだぞ。おまけに普通の4倍だ。寝て体力つけておけ」
「……」
「もう夜明けだ。あまり時間がないし、俺たちも適当になったら寝る。起きたら休む暇もないぞ、三郎太」
ルドルフはそう言うと、「じゃあ、おやすみ」と出ていった。
ぽつんとダイニングに残された三郎太は、バターをたっぷりとパンに塗って食べ、新しい袋を切りコーンポタージュをもう1杯飲んだ。
あまあまの口の中や胃が多少ましになったところで、ルドルフに言われたように事務所に向かい、簡易ベッドを発掘するとぺしゃんこになっていたが一応羽毛布団と毛布にくるまって目を閉じた。
疲れていたせいもあり、空腹がみたされたせいもあり、三郎太は一気に深い眠りについた。
タブレット型の端末は子どものリストや家の地図、困ったときのマニュアルなどすぐに取り出せるようになっており、サンタ見習いはすぐにこれの使い方を教育される。
しか太陽の地場やオーロラの発生、流れ星などにより安定して正確に作動しないこともあり、昔ながらのアナログ手段でも業務が滞りなくできるスキルも身につける。
地図、コンパスを使ったり、北極星や星図を見て自分の位置を把握したり、プレゼントリストを大雑把に頭に入れたり。
たまに数式に数を入れ計算もするので、メモ帳と鉛筆、計算機も必要だ。
三郎太は汚部屋をかきわけ、すぐに捨ててもよさそうなものをまとめながら、とりあえずサンタの黒いバッグとパソコンを発掘した。
最後の最後までサンタ端末が見つからず泣きそうになったとき、クロードが「プレゼントの中に紛れてたの」と端末を持ってきたときには、三郎太は泣いていた。
「ごめんね、泣かせて。お腹空いてるの?」
「空いてますよ。今日一日中なにも食べていません」
「そりゃあ大変だああああっ!
ルドルフーーーーー!!!ルドルフーーーーーー!!!」
クロードはどたどたとぽっちゃりとした身体をゆすりながらどこかへ消えていった。
遠くでルドルフの怒鳴り声が聞こえた。
三郎太は端末を確認すると充電切れて電源が入らなかった。
充電器を探す必要があった。
充電器も見つけ、必要な地図も欠損していたので発掘したプリンタを使って印刷した。
次第にサンタバッグには必要なものが詰まってきた。
ほっとしたところで声がした。
「飯だ」
見るとルドルフが事務所を見回していた。
「もっと使えねーヤツかと思っていたが、ま、やるじゃん」
連れていかれたごちゃついたダイニングキッチンにはインスタントのコーンポタージュと小さな丸パンが置いてあった。
「明日はもうちょっとまともなものを食わせてやる」
「三郎太くん、ここに座って!今、あったか~いココアをいれてあげるね!」
「おまえはなにもするな。食ってろ」
「でも……」
先に席につき、チョコレートクリームをたっぷりつけてもぐもぐと食べていたクロードがルドルフに怒鳴られしょんぼりした。
クロードは鼻のあたまにも口の周りにもべったりとクリームをつけている。
「おまえが動くとかえって仕事が増える。立つな!」
ルドルフは三郎太のためにココアをいれ始めた。
三郎太はクロードが勧めてくれた椅子に座り、ポタージュを飲んだ。
温かいスープが冷え切った体に沁みた。
「はい、これ!」
パンと同量のチョコクリームが盛られた丸パンをクロードが三郎太の口に押しつける。
こわごわぱくりと口を開き、静かに咀嚼する。
クロードがじっと見つめている。
「おいしい?」
「甘い……」
「おいしい?」
「はい」
「よかったー!じゃ、次!」
クロードが次のクリーム盛りもりパンを口に押し込む。
まだ飲み込まないうちに次のパンも口に入れる。
次も次も次も。
「なにやってんだっ、このどあほがっ!三郎太っ、しっかりしろ!水!水!」
ルドルフがココアの入ったマグカップを入れて戻ってきたときに、三郎太には口の中にぎゅうぎゅうにパンが詰め込まれ目を白黒させていた。
ルドルフは隣でどうしようどうしようと焦っているクロードを突き飛ばし、三郎太を抱えこむ。
三郎太は懸命に口を動かしパンを咀嚼しようとはしていた。
ルドルフは三郎太を抱き上げシンクに行くとグラスに水を汲み、少しずつ飲ませた。
口に水分が入ったことでちょっとずつ口の中がましになってきた。
ゆっくりと時間をかけ、三郎太が口の中のパンを全てのみ込んだ。
そばでは涙目になったクロードがあわわあわわと飛び跳ねている。
「あー、死ぬかと思った……」
口の中のパンを全部飲み込み、ほっとして三郎太がつぶやいた。
「よかったよーーーーっ。死んじゃだめだ、三郎太くんっっっ!!!」
抱きつこうとしたクロードの顔面にルドルフが手のひらを押しつけた。
「おまえが殺しにかかったんだよ、どあほっ!それにチョコでべとべとの手で三郎太にさわんなっ!」
「そんな、そんな」
「おまえはもう十分に食っただろうがっ!もう仕事に戻れ!」
「えー、もうちょっと食べたいな」
クロードは上目遣いでかわいらしく見つめていたが、ルドルフには通用するはずもなく「最近また太りやがって。おまえはもう食わなくてもいい!」と怒鳴られ、すごすごとダイニングから出ていった。
三郎太はようやく自分のペースで食べられるようになり、ほっとしてルドルフがいれてくれたココアを飲んだ。
「おまえはこれが終わったら寝ろ。ベッドは事務室の奥に簡易のがある」
「でもまだ仕事が残っているんじゃ……」
「初めてのクリスマス業務だろ。ハードだぞ。おまけに普通の4倍だ。寝て体力つけておけ」
「……」
「もう夜明けだ。あまり時間がないし、俺たちも適当になったら寝る。起きたら休む暇もないぞ、三郎太」
ルドルフはそう言うと、「じゃあ、おやすみ」と出ていった。
ぽつんとダイニングに残された三郎太は、バターをたっぷりとパンに塗って食べ、新しい袋を切りコーンポタージュをもう1杯飲んだ。
あまあまの口の中や胃が多少ましになったところで、ルドルフに言われたように事務所に向かい、簡易ベッドを発掘するとぺしゃんこになっていたが一応羽毛布団と毛布にくるまって目を閉じた。
疲れていたせいもあり、空腹がみたされたせいもあり、三郎太は一気に深い眠りについた。