対価はキス
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東方司令部―――…
大佐は珍しく1人で司令部の廊下を歩いていた。
いつもはどこに行くにもほとんど中尉がついて歩いていた。
考えられるのは1つ、さぼって中尉から逃亡中なのだろう。
(そろそろ、追って来るだろうな)
女性の軍人に声を掛けながら、そんなことを思っていた。
軍人の女性には声を掛けはするものの、口説いたりはしない。
口説かれることはあるが…。
顔もよく、お金に知性、地位と権力があれば軍でもモテる。
「マスタング大佐」
「何かな」
またかと心の中でため息をつきながらも大佐は表情には出さず、それでもいつも女性と話す時の偽りの笑みを浮かべてはいない。
大佐だけではなく、周りの軍人達もまた始まったと思う。
「分かっているんでしょう?」
「私は君と付き合う気はない」
「どうして?」
「私は束縛が嫌いなんだよ」
大佐はまったくと言って相手にしてない。
たまにこういう女性軍人がいるらしい。
腕を掴まれ、不快そうに大佐は顔を歪めた。
「エミリア少尉、離してくれないか?」
「好きだって言ってくれたわ」
「それは君がそう言えば離すと言ったからだよ。
私は自分から好きなんて言わない。
必要あらば言うが。
軍人の女性とは付き合わない主義だ。
それに、君の目的も分かってる」
「目的…?」
冷ややかな眼でエミリア少尉を見下ろしている。
「君の狙いは私の副官、違うかね?
残念だが、私の副官には彼女以外は無理だね。
私の副官は優秀じゃないと。
まぁ、私は最初から彼女を副官から外すつもりはない」
「‥‥ッ‥」
言葉に詰まり、エミリアは大佐の軍服を掴んだ。
そのまま大佐の唇にキスをした。
「私は優秀ではないけれど、女性らしさは中尉より上だわ」
「それはどうかな。
彼女は必要以上に女性らしさを出さない有能な軍人だ」
「随分と理解しているのね」
「女性には困らないし、こんな不快なキスは初めてだな」
掴まれてる手を払おうとした時、微かな気配に口元が緩んだ。
廊下に足音が響き、エミリアの頭に銃が当てられる。
「エミリア少尉、その手を離しなさい。
上官に対する態度ですか?」
「ホークアイ中尉…
撃つ気?」
「これ以上、大佐に何かをするつもりなら撃ちます。
私は同じ軍人にだろうと、守るべき人の為なら撃ちます」
「それがマスタング大佐?」
「それをあなたに答える義務はない」
エミリア少尉は大佐の軍服から手を離した。
「大佐、大丈夫ですか?
遅れてすみません」
「…あぁ。
いや、大丈夫だ」
「どうかなさいましたか?」
「不快なキスをされただけさ」
「ダメですよ、袖に口紅が付きます」
袖で拭おうとした大佐の腕を掴み、中尉はハンカチを取り出して大佐の唇を拭く。
その様子はあまりにも自然だった。
「‥‥大佐」
「ん…っ」
中尉は背伸びし、大佐の唇にキスをする。
周りの軍人達がザワつき、凝視する。
軍人とは付き合わないと言っていた大佐なので尚更だろう。
中尉は大佐の唇から離す。
「…消毒完了です」
「ん、ご馳走様」
満足そうに大佐は口元を緩める。
「私がダメで中尉がいいのは何でよっ!!」
「中尉は特別。
君のように感情的になって叫んだりしないし、束縛もしなければ自己中でもない。
私を一番に考えてくれるから」
「当然です」
「軍人とは付き合わないって!!」
「中尉とは軍人になる前の付き合いだ。
それに関して中尉は例外。
上官に対しての態度ではないな。
あまりしつこいと命令違反で軍法会議にかけるが?」
「‥‥ッ‥」
「大佐、行きましょう?」
「…そうだな」
呆れたように見ていた大佐に中尉が声を掛ける。
「中尉‥‥キスしたい」
「まだ足りないんですか?」
「ん、もう1回」
「それでは、今日の分の書類で手を打ちましょう」
「仕方ないな。
契約完了?」
「…えぇ」
中尉の腰を抱き、大佐はキスを交わす。
大佐は唇を離すと中尉から離れる。
「上官と副官が付き合ってるなんてスキャンダルじゃない!!」
「「まさか」」
見事に大佐と中尉の声が重なる。
「付き合ってなんかいないさ。
彼女は私の副官」
「上官と部下よ」
「だったら‥‥」
「キスくらいで大袈裟だな。
バカバカしい」
「大佐、相手にするだけ時間の無駄です。
戻りましょう?」
「…あぁ」
中尉を連れて大佐は去って行く。
執務室の席に着き、ため息をついた。
「まったく…
本当に厄介だな」
「もう少し脅せばよかったのでは?」
「女性にそこまで出来るか」
「まぁ、貴方のそういうところも私は好きですよ」
「…珍しいな」
「たまには。
コーヒーでいいですか?」
「あぁ、頼むよ」
口元を緩め、大佐は書類を手にする。
(付き合ってはいないんだけど…)
(あれは恋人というより、もう夫婦だよ)
(付き合ってるのと同じような‥‥)
ハボック達はため息をつく。
言葉には出さなくとも分かる彼女との深い絆の関係…。
対価はキスで契約しよう‥‥。
-END-
大佐は珍しく1人で司令部の廊下を歩いていた。
いつもはどこに行くにもほとんど中尉がついて歩いていた。
考えられるのは1つ、さぼって中尉から逃亡中なのだろう。
(そろそろ、追って来るだろうな)
女性の軍人に声を掛けながら、そんなことを思っていた。
軍人の女性には声を掛けはするものの、口説いたりはしない。
口説かれることはあるが…。
顔もよく、お金に知性、地位と権力があれば軍でもモテる。
「マスタング大佐」
「何かな」
またかと心の中でため息をつきながらも大佐は表情には出さず、それでもいつも女性と話す時の偽りの笑みを浮かべてはいない。
大佐だけではなく、周りの軍人達もまた始まったと思う。
「分かっているんでしょう?」
「私は君と付き合う気はない」
「どうして?」
「私は束縛が嫌いなんだよ」
大佐はまったくと言って相手にしてない。
たまにこういう女性軍人がいるらしい。
腕を掴まれ、不快そうに大佐は顔を歪めた。
「エミリア少尉、離してくれないか?」
「好きだって言ってくれたわ」
「それは君がそう言えば離すと言ったからだよ。
私は自分から好きなんて言わない。
必要あらば言うが。
軍人の女性とは付き合わない主義だ。
それに、君の目的も分かってる」
「目的…?」
冷ややかな眼でエミリア少尉を見下ろしている。
「君の狙いは私の副官、違うかね?
残念だが、私の副官には彼女以外は無理だね。
私の副官は優秀じゃないと。
まぁ、私は最初から彼女を副官から外すつもりはない」
「‥‥ッ‥」
言葉に詰まり、エミリアは大佐の軍服を掴んだ。
そのまま大佐の唇にキスをした。
「私は優秀ではないけれど、女性らしさは中尉より上だわ」
「それはどうかな。
彼女は必要以上に女性らしさを出さない有能な軍人だ」
「随分と理解しているのね」
「女性には困らないし、こんな不快なキスは初めてだな」
掴まれてる手を払おうとした時、微かな気配に口元が緩んだ。
廊下に足音が響き、エミリアの頭に銃が当てられる。
「エミリア少尉、その手を離しなさい。
上官に対する態度ですか?」
「ホークアイ中尉…
撃つ気?」
「これ以上、大佐に何かをするつもりなら撃ちます。
私は同じ軍人にだろうと、守るべき人の為なら撃ちます」
「それがマスタング大佐?」
「それをあなたに答える義務はない」
エミリア少尉は大佐の軍服から手を離した。
「大佐、大丈夫ですか?
遅れてすみません」
「…あぁ。
いや、大丈夫だ」
「どうかなさいましたか?」
「不快なキスをされただけさ」
「ダメですよ、袖に口紅が付きます」
袖で拭おうとした大佐の腕を掴み、中尉はハンカチを取り出して大佐の唇を拭く。
その様子はあまりにも自然だった。
「‥‥大佐」
「ん…っ」
中尉は背伸びし、大佐の唇にキスをする。
周りの軍人達がザワつき、凝視する。
軍人とは付き合わないと言っていた大佐なので尚更だろう。
中尉は大佐の唇から離す。
「…消毒完了です」
「ん、ご馳走様」
満足そうに大佐は口元を緩める。
「私がダメで中尉がいいのは何でよっ!!」
「中尉は特別。
君のように感情的になって叫んだりしないし、束縛もしなければ自己中でもない。
私を一番に考えてくれるから」
「当然です」
「軍人とは付き合わないって!!」
「中尉とは軍人になる前の付き合いだ。
それに関して中尉は例外。
上官に対しての態度ではないな。
あまりしつこいと命令違反で軍法会議にかけるが?」
「‥‥ッ‥」
「大佐、行きましょう?」
「…そうだな」
呆れたように見ていた大佐に中尉が声を掛ける。
「中尉‥‥キスしたい」
「まだ足りないんですか?」
「ん、もう1回」
「それでは、今日の分の書類で手を打ちましょう」
「仕方ないな。
契約完了?」
「…えぇ」
中尉の腰を抱き、大佐はキスを交わす。
大佐は唇を離すと中尉から離れる。
「上官と副官が付き合ってるなんてスキャンダルじゃない!!」
「「まさか」」
見事に大佐と中尉の声が重なる。
「付き合ってなんかいないさ。
彼女は私の副官」
「上官と部下よ」
「だったら‥‥」
「キスくらいで大袈裟だな。
バカバカしい」
「大佐、相手にするだけ時間の無駄です。
戻りましょう?」
「…あぁ」
中尉を連れて大佐は去って行く。
執務室の席に着き、ため息をついた。
「まったく…
本当に厄介だな」
「もう少し脅せばよかったのでは?」
「女性にそこまで出来るか」
「まぁ、貴方のそういうところも私は好きですよ」
「…珍しいな」
「たまには。
コーヒーでいいですか?」
「あぁ、頼むよ」
口元を緩め、大佐は書類を手にする。
(付き合ってはいないんだけど…)
(あれは恋人というより、もう夫婦だよ)
(付き合ってるのと同じような‥‥)
ハボック達はため息をつく。
言葉には出さなくとも分かる彼女との深い絆の関係…。
対価はキスで契約しよう‥‥。
-END-