２月14日、バレンタインデー。


毎年恒例のイベントではあるが、今年はいつもとは違う。


「相変わらずというか…」
「何であの人だけなんだ!!?
どこがいいんだよ！？」
「「あ゛」」
『…それは言った方がいいのかしら？』


後ろから現れたセルシアはにっこりと笑いながらハボックに対して怒りを露にしている。


「あ、いや‥‥」
「ハボック少尉、謝るのが身の為ですよ」
「すいませんでした！」
『発言に気をつけなさい。
豆粒以下になるわよ？』
「は、はい…」
「豆粒って、エドワークくんは今度は何をしたんですか？」
「中佐の前で思いっきり大佐の悪口を…
中佐に吹き飛ばされてましたけど」
「大将も懲りねぇな～」
「「………。」」
「おまえには言われたくないと思うぞ、ハボック」
「う‥‥」


エドとハボック、学習能力がないところはいい勝負かもしれない。



数える程しか貰えない義理チョコに喚くハボック。


「貰えるだけ、いいじゃないですか」
「義理チョコだけどな」
「贅沢を言うなよ」
「出世すれば沢山貰えるかもな」
「俺には一生、無理な話だ」
「…諦めるのも肝心だぞ」
「何でだっ！
この中で一番少ないじゃんかよ…」
「僕は直したお礼にと貰うだけなんで…」
「私は日頃のお礼にと」
「大佐に届けるついでに」
「ちくしょうっ!!
来年こそは…！」
（（‥‥去年もそう言ってたけど））


来年も変わらないだろうとハボックを見て思う。



セルシアは大佐の執務室に向かう。


（…予想以上に貰ってる）


大佐の机の上に大量に置かれてるチョコの数々。


「そろそろ、来ると思っていたよ」
『これも予想通りですか？』
「予想通りというよりも欲しいと言うのが本音かな」


微かに頬を赤らめ、セルシアは綺麗にラッピングした手作りチョコを大佐に渡す。


作るよりもラッピングの方に時間がかかってしまったが。


嬉しそうに大佐は微笑み、セルシアを手招きした。


『た、大佐…？』
「ん～？」
『恥ずかしいんですけど‥‥』
「今日はバレンタインデーだし、ね？」


大佐の膝に乗せられ、抱っこされている状態のセルシア。


大佐は満足そうに笑い、セルシアを抱き締めていた。


「仕事は中断。
今日くらいはここでも名前で呼んで？
２人きりだし、いいだろう？」
『‥‥っ‥』
「なぁ、セルシア？」


ねだるように耳元で囁いた。


セルシアの結ってる髪をほどき、肩にすり寄る。


『あ‥‥』
「また結えばいいだろう？」
『…ロイさん』
「やっと呼んでくれた」


照れ笑いを浮かべ、セルシアは恥ずかしくて俯く。


セルシアを抱っこしながらロイは大量のチョコには目もくれず、セルシアのチョコを開けた。


「綺麗なチョコだな。
食べるのが勿体ないくらいだ」
『…ロイさん』
「ん、うまい」
『よかった。
嬉しいです』


頬を赤らめながらセルシアは嬉しそうに微笑んだ。


「セルシア…」
『んっ、ぅ…ッ』


クイッと顔を上げられてセルシアは突然のキスに驚く。


「どうだい？
チョコ味のバレンタインデーらしいキスは？」


恥ずかしくて真っ赤になった。


「まだ足りなかったかな」
『ちがッ…』


微かに笑みを浮かべ、ロイはセルシアの髪にキスする。


「美味しいチョコだし、一緒に味わうのもいいだろう？」
『‥‥はい』


チョコ味のキスを何度も交わす。


段々と深まるキスにセルシアはおずおずとロイの手に触れるとロイは微笑み、絡ませるように握った。


『んは…っ』
「髪が乱れてしまったな。
セルシア、ご馳走様」
『‥‥っ‥』
「チョコもキスも満足だ。
今日は一緒に過ごそうな」


コクンと頷くと甘く優しいキスを唇にされる。



大量のチョコよりも君のチョコを…。


チョコよりも甘いキスを君に贈ろう‥‥。



　　　　 -END-