ふと目を覚ますと外は暗くなっていて、よく眠っていたようだ。


(レギュラスの原因は未だに不明だけど。
愛情深いくせに、それを知られないようにしていたのかもしれないな。
なんて自分は傲慢で無知なんだろうか)


過去の出来事が走馬灯のように思い出され、自分のことしか見えてなくてどんなに親不孝で酷だったのかと気がついた。


(アルファードもダンブルドアも、ハッキリとは言わなかったマクゴナガル教授も。
自分の目で視野を広く見るように言っていた。
今更、だよな。
優しさに甘えているだけだ)


涙が溢れてシリウスは顔を腕で覆った。


「シリウス…？
どうしたのですか。
泣く程に、辛いのですか？」


慌てたように母が駆け寄って来てシリウスは瞬きする。


普段は冷静で落ち着いている母なので驚いた。


こんな風に慌ててる母を見るのは初めてだった。


「…大丈夫。
何でもない」
「ですが…っ」
「たいしたことない」


レギュラスが元通りになれば、自分は家を出る立場なのだから今更になって謝罪など許されないとシリウスは自分の気持ちを隠す。


「シリウス。
今は聞かないよ」
「オリオン！」
「それに、今は休まないと。
言いたくなったら話してくれ」


渋々ながらも母は諭されて諦めたようだ。


レギュラスの部屋の隣なのでこういう状態なのでシリウスは自室を使わず、ゲストルームの使用になった。


「…シリウス様。
ご加減は如何ですか？」
「問題ない」
「何かあれば、お呼びください」
「クリーチャー」
「…何でしょうか」
「おまえに…、いや。
君には…レギュラスは…普通、なのか？」
「はい？」
「レギュラスは君を慕っていたから」
「普通は分かりませんが。
悲しいことに変わってしまったのは事実です。
口数が徐々に減って、笑顔も減っていました。
レギュラス様が何か悩みを抱えていたのは理解してましたが。
こんなことになるとは。
いえ、喋りすぎましたね」
「君から見て、アレはレギュラスで間違いないか？」
「魔力も気配もレギュラス様で間違いがないです」
「…そうか」


シリウスは安堵しながらも複雑な心境だ。


両親の様子からクリーチャーはシリウスに対して苦言も暴言も吐かず、不満に思いながらも世話をしていた。


「…シリウス様」
「なんだ？」
「レギュラス様には近づかないでください。
何をするつもりなのか分かりませんが。
旦那様から万が一、レギュラス様が攻撃したら貴方様の方をお守りするように命を下されました」


シリウスは一瞬だけ目を見開き、クリーチャーを凝視する。


「旦那様には貴方様には黙っているように言われましたが。
それでも、傷つくのも後悔するのも…」
「ありがとう」
「えっ？
い、いえ。
失礼しました」


ハッとしたようにクリーチャーはお辞儀して出て行こうとした。


「クリーチャー。
頼みがある」
「何でしょうか？」
「僕の自室を片付けといて」
「…あの異様なものを？」
「異様って。
まぁ、そう見えるんだろうな。
君の魔法なら僕等と違うから出来るだろう？
喧嘩後の反抗期のままに、感情的にしてしまったから。
流石にアレはやりすぎた」
「奥様が叫んでおりました」
「…だろうな」
「承知しました」
「写真だけは、破棄しないでくれると助かる」
「私もご友人との写真を捨てる程ではありませんから」


写真以外はグリフィンドールのも捨てられるかなとシリウスは苦笑いしていた。


「何でしょうか」
「…グリフィンドールのも捨てるかと」
「最初はそのつもりでしたが。
貴方様が大切にしていらしたものですから」
「ありがとう」


グリフィンドールの旗やマフラー、写真は保管してくれていたようだ。


変わったのは両親だけではないのかもしれない。　　


「シリウス、おはようございます。
体調は如何ですか？」
「よくなりました」
「おはよう。
シリウス、熱は下がったようだけれど。
今日は安静にしてなさい」
「…分かりました」


ずっと交流してなかったのもあるが、子供扱い過ぎるとシリウスは苦笑いする。