微睡み
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
生きることを諦めた訳ではなくて、そんな勇気もなくて。
こんな時でも空腹感はあって、今日で6日目でそんなに食べてなければ空腹感も当然だろう。
(結局、僕は何をしたいんだろうか。
何をするのが正しいのか)
空腹感を感じながらも絶望の中を彷徨っている感覚。
「…シリウス。
おはよう、起きていたのね」
「よく眠っていたね。
具合はどうだい?」
口を開く前にシリウスのお腹が大きく鳴った。
「お腹空いたわよね。
昨日は何も食べれなかったんだもの」
「6日も食べてなかったんだ。
ゆっくり少しずつ食べようか」
身体が驚くだろうと固形の物は食べれなかった。
後悔も絶望も言葉も嘘ではなくなったが、少しずつ混乱が落ち着いてきた。
(…これはどんな状態なんだ)
何故、自分は父のオリオンに抱えられているんだと再び混乱してしまうのは仕方ないだろう。
「僕、赤ちゃんじゃない」
「分かっているよ。
ずっと眠ったままだったんだ。
力が出ないだろう?
ほら、あ〜ん?」
「ほぇ?」
変な声が出てしまったが、それも仕方ないだろう。
「お腹空いてるだろう。
ほら、お口を開けて」
「……っ…」
中身は30歳過ぎの成人の男性なので羞恥心しかないが、空腹感があるのは事実なのでおずおずと口を開いた。
「いい子だ、シリウス。
美味しいかい?」
「(コクン)」
「ゆっくり食べなさい。
ほら、お口が汚れてるわ」
「…ごめんなさい」
「違うのよ。
叱ったんじゃないわ。
自分で拭かなくていいの。
はい、こっち向いて頂戴」
母に唇を拭われ、幼いシリウスはキョトンと見つめてしまう。
「はい、拭けたわ」
「…ありがとうございます」
「体調は悪くないですか?」
「…ん」
「覚えているかい?」
(そういえば、最期の記憶とあの不思議な声は覚えているけど。
説明されても記憶がないな)
フルフルと幼いシリウスは首を振った。
「…そうか」
「錯乱もしてましたし、仕方ないかもしれませんね」
「どこまで覚えてる?」
「……っ…」
「叱らないわ。
ゆっくりでいいから話して」
「…わからない」
「分からない?」
「覚えてません。
自分のことも、貴方達が両親なのも分かる。
自分がどんな行動をして、どんな発言をしていたのか。
覚えてないんだ」
驚愕した表情を見せる両親に罪悪感はあるが、ここで生きる為には必要な嘘だった。
両親に抱き締められたのは予想外の出来事だったが。
(…こんな性格の両親だっただろうか)
シリウスが戸惑ってしまうのも無理はない。
最初の頃は罪悪感から構っているのだろうと思っていたが。
(以前の両親は愛情なんてなくて、大切なのは家柄と純血で。
どんなに努力してもそれは当たり前であり、褒めることも抱擁なんてなかった。
厳しくて冷たい眼で)
嬉しさよりも戸惑いが大きくて諦めたと言う方が正しい。
「…シリウス。
気分はどうだい?」
「悪くはないです」
幼少期に自分が過ごしていた記憶は曖昧なのでコレも強ち、間違いではないかもしれない。
「シリウスが好きなものを持って来たよ。
ほとんど食事を口にしてないと聞いてね。
あぁ、叱るつもりはないよ。
お母様も怒らなかっただろう?
自分が気づかないうちに精神的な疲れもあるのかもしれない。
夜は眠れているかい?」
「…うん。
あんまり眠れない。
眠たいはずなのに寝れなくて」
「そうか。
無理はしなくていい。
具合悪くなったら言いなさい」
シリウスは小さく頷き、オリオンのくれたレモンのシャーベットを口にする。
「シリウス。
目が覚めていたんですね。
本は読みますか?
オリオンも居たのですね」
「今来たとこだ。
シリウスの顔を見にね」
(頼むから1人にさせてくれ)
両親が心配なのか自室を訪ねてきて1人になることはない。
シリウスはため息をつき、呆れたように見るしかなかった。
-END-
2024.9.6
こんな時でも空腹感はあって、今日で6日目でそんなに食べてなければ空腹感も当然だろう。
(結局、僕は何をしたいんだろうか。
何をするのが正しいのか)
空腹感を感じながらも絶望の中を彷徨っている感覚。
「…シリウス。
おはよう、起きていたのね」
「よく眠っていたね。
具合はどうだい?」
口を開く前にシリウスのお腹が大きく鳴った。
「お腹空いたわよね。
昨日は何も食べれなかったんだもの」
「6日も食べてなかったんだ。
ゆっくり少しずつ食べようか」
身体が驚くだろうと固形の物は食べれなかった。
後悔も絶望も言葉も嘘ではなくなったが、少しずつ混乱が落ち着いてきた。
(…これはどんな状態なんだ)
何故、自分は父のオリオンに抱えられているんだと再び混乱してしまうのは仕方ないだろう。
「僕、赤ちゃんじゃない」
「分かっているよ。
ずっと眠ったままだったんだ。
力が出ないだろう?
ほら、あ〜ん?」
「ほぇ?」
変な声が出てしまったが、それも仕方ないだろう。
「お腹空いてるだろう。
ほら、お口を開けて」
「……っ…」
中身は30歳過ぎの成人の男性なので羞恥心しかないが、空腹感があるのは事実なのでおずおずと口を開いた。
「いい子だ、シリウス。
美味しいかい?」
「(コクン)」
「ゆっくり食べなさい。
ほら、お口が汚れてるわ」
「…ごめんなさい」
「違うのよ。
叱ったんじゃないわ。
自分で拭かなくていいの。
はい、こっち向いて頂戴」
母に唇を拭われ、幼いシリウスはキョトンと見つめてしまう。
「はい、拭けたわ」
「…ありがとうございます」
「体調は悪くないですか?」
「…ん」
「覚えているかい?」
(そういえば、最期の記憶とあの不思議な声は覚えているけど。
説明されても記憶がないな)
フルフルと幼いシリウスは首を振った。
「…そうか」
「錯乱もしてましたし、仕方ないかもしれませんね」
「どこまで覚えてる?」
「……っ…」
「叱らないわ。
ゆっくりでいいから話して」
「…わからない」
「分からない?」
「覚えてません。
自分のことも、貴方達が両親なのも分かる。
自分がどんな行動をして、どんな発言をしていたのか。
覚えてないんだ」
驚愕した表情を見せる両親に罪悪感はあるが、ここで生きる為には必要な嘘だった。
両親に抱き締められたのは予想外の出来事だったが。
(…こんな性格の両親だっただろうか)
シリウスが戸惑ってしまうのも無理はない。
最初の頃は罪悪感から構っているのだろうと思っていたが。
(以前の両親は愛情なんてなくて、大切なのは家柄と純血で。
どんなに努力してもそれは当たり前であり、褒めることも抱擁なんてなかった。
厳しくて冷たい眼で)
嬉しさよりも戸惑いが大きくて諦めたと言う方が正しい。
「…シリウス。
気分はどうだい?」
「悪くはないです」
幼少期に自分が過ごしていた記憶は曖昧なのでコレも強ち、間違いではないかもしれない。
「シリウスが好きなものを持って来たよ。
ほとんど食事を口にしてないと聞いてね。
あぁ、叱るつもりはないよ。
お母様も怒らなかっただろう?
自分が気づかないうちに精神的な疲れもあるのかもしれない。
夜は眠れているかい?」
「…うん。
あんまり眠れない。
眠たいはずなのに寝れなくて」
「そうか。
無理はしなくていい。
具合悪くなったら言いなさい」
シリウスは小さく頷き、オリオンのくれたレモンのシャーベットを口にする。
「シリウス。
目が覚めていたんですね。
本は読みますか?
オリオンも居たのですね」
「今来たとこだ。
シリウスの顔を見にね」
(頼むから1人にさせてくれ)
両親が心配なのか自室を訪ねてきて1人になることはない。
シリウスはため息をつき、呆れたように見るしかなかった。
-END-
2024.9.6