ドラコの精神年齢は当然ながら大人なので絡まれても息子のように思えてしまい、諭すだけではなくてつい頭を撫でてしまう。


新入生とは思えない知識も豊富でマルフォイ家でスリザリンなのに自慢も嫌味も言わないドラコについたあだ名が“お兄様”だった。


お兄さんではないのは美貌ゆえに女子達からの呼び方だ。


「…君はいつから大家族の兄になったんだ」
「「ぶはっ！」」


スネイプの呆れたような呟きに複数の生徒が吹き出す。


「どの生徒も愛しい私の弟と妹ですよ」
「君は何歳なんだ」


スネイプが頭を抱えるのは当然かもしれない。


「ドラコ兄様、グレンジャー達ばっかり構ってずるいわ」
「彼女はマグル出身ですよ」
「それがどうした。
生まれや血だけで差別する者は私は嫌いだと教えたはずだが？」
「ごめんなさい」


結果的にドラコは再教育をし、ホグワーツの生徒達を牛耳っていると言われてしまっていた。


「そのつもりはまったくないのだが。
何故だろうな」
「当たり前のようにグリフィンドールの談話室にいる貴方にもう驚きではないわね」
「そして、当たり前のように何故か僕の兄達がひっついてるんだけど」


ウィーズリー家の兄弟でさえも慕っていた。


「パーシー。
その課題なら、こっちの本の方が詳しく載っているよ」
「ありがとう」
「…上級生の課題まで把握しているのかよ」
「あのパーシー以上の知識があって懐かれてるんだけど」
「分かる気がするわ。
何故かドラコにはつい頼っちゃうもの」
「そうなんだよねぇ〜」
「ハリー、貴方は少しは遠慮するべきよ」


ドラコにもたれ掛かっているハリーに苦笑いする。


環境が環境だからとハリーを甘やかした結果、兄のように懐かれてしまった。


最初は各寮監に呼び出されて叱られたが、数週間もすると呆れられて見逃された。


どんなに合言葉を変えても談話室に現れるのだから対処の仕様がないが、何よりも合言葉を変えすぎて自寮の生徒が寮に入れないのでは意味がない。


談話室だけで寮の部屋には入ってないので渋々ながら認めたのだった。


何よりもそれ以外は優等生のドラコだから信頼が厚いのだ。


「グリフィンドールだけじゃなくて、ほかの寮にも？」
「落ち着くのはスリザリンの談話室だが。
どの寮もそれぞれの魅力がある」
「レイブンクローは合言葉じゃないんだろう？
よく問題が解けたな」
「知識と対策さえしてれば」
「「無理だろ」」


あの双子でさえも諦めたことだったのだから。


「フレッド、ジョージ。
それ以上はストップだ」
「「了解しました！」」


どんなに悪戯していてもドラコが止めれば、双子は言うことを聞くのだった。


それゆえにスリザリンなのにマクゴナガルからの信頼は厚い。


「魔法薬の改善の知識は必要だろう？」
「知識提供を上級生相手にしていることが驚きだけど。
ドラコだものね」


スネイプに対抗心を燃やされているのは予想外だったが、お陰で以前は読めなかったスネイプ提供の魔法薬の本が読めるのは有り難い。


悔しさはあるが、それ以上に魔法薬の研究心が勝ったようだ。


「セブルス。
気持ちは分かりますが、彼はまだ新入生ですからね」
「危険な魔法薬の研究はさせないように」
「…気をつけておく」
((もうさせていたのか))


マクゴナガルは必ず一緒にするようにとドラコに約束させていたのだった。


大人のスネイプよりも信頼されていた。


「ま、マルフォイ。
飛行訓練の時に助けてくれてありがとう。
思い出し玉も拾ってくれて。
お礼が遅くなってしまってごめんなさい」
「ドラコで構わないよ。
君のお祖母様は僕と話すことを禁じているんだろう？」
「おばあちゃんの気持ちも分かるけど。
僕は信じたいから。
それに、君は何も悪くない」
「ありがとう。
だとしても」
「謝らないで。
たとえ血の繋がりがあっても、それは当人の責任だから」
「君は強いんだな」
「…初めて言われた」
「環境に負けない強さ。
それは目には見えないけど。
君は強いよ。
ハリーとは違う強さだ。
魔力が安定しないのも環境的な問題もあるのだろうな」
「おばあちゃんしか知らなかったのに」
「誰かに聞いた訳じゃない。
苦手意識が君にはある。
魔法を使う前に深呼吸して落ち着いてごらん」
「…うん。
やってみるよ」


まるで先輩後輩のようだと苦笑いしてしまう。