イルミネーションが特別好きな訳ではなかったが、圧巻だった。


「…綺麗。
話には聞いてたけど。
ホグワーツのクリスマスツリーよりも大きい」
「では、来年はうちもいつもよりも大きなクリスマスツリーを用意してあげよう」
「…何歳なんだよ。
それは本当にやめてくれ」


今でも屋敷に飾られているクリスマスツリーは大きいのだが。


「オリオン。
私の苦労を増やさないでくれるかしら」
「…すまない」
「来年はもう少し早く帰って来るよ。
手伝うから」
「気にしなくていいのよ」
「ずっと、そういうことをして来なかったから。
父上よりはセンスあると思うけど？」
「無理はしないでね。
ありがとう、シリウス」


母に抱擁されてシリウスは微かに笑みを浮べた。


オリオンは母息子に引かれる程の独特なセンスがあり、母は内心でそのセンスが受け継がれなかったことに安堵していた。


「寄り道してもいいの？」
「ある程度の準備は終わってますから」
「こういうとこで父上と母上と過ごせるとは思わなかった」
「それは私達もだよ」
「たまにはいいじゃない」
「うま…っ」


クリスマス市の屋台で飲み食いするのは初めてだった。


「こういう屋台だからこその独特な雰囲気があるんだな」
「来年も少しだけ寄り道しましょうか」
「…うん」


シリウスが見ていた繊細な造りの小物入れをオリオンがプレゼントしてくれた。


何歳なんだと思いながらもシリウスは苦笑いして受け入れた。


「私はこれを」
「わあ…っ、綺麗だ」
「私よりも反応が良いな」
「今回は私の勝ちかしら」
「勝負しないでよ。
母上、ありがとうございます」


オリオンよりもシリウスの好みを把握していた。



　　　　　　-END-

2024.10.11