第55話
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ロイは軍車を停めてもらって背を預け、微かに笑う。
「ああしてみると、本当に子供のようだな」
「声を掛けなくていいんですか?」
「大人が邪魔するものじゃない」
「…そうですね」
「さあ、司令部に戻ろうか」
「気晴らしになりました?」
「お陰様で」
混乱状態のロイでは仕事にならないと判断し、中尉は視察という名のドライブに連れて来てくれた。
セリムの笑顔に安堵して問題なさそうだと軍車に戻った。
「…中尉」
「どうかしましたか?」
「あの行列は何だ?」
「確か、今日開店したスィーツのお店かと。
レベッカが言ってましたよ」
「あの店がそうなのか」
「把握していたなら聞かないでくださいよ」
「くくっ、思わずね。
場所までは把握してなかったよ。
平和惚けしてしまいそうだ」
「いいじゃないですか。
平和惚けしてしまえば」
「えっ?」
「そう思えるくらいに平和になったと思えてる証拠ですよ。
まだ解決はしてませんし、やらなくてはならないこともあるでしょうけど」
「…そうだな」
中尉の言葉にロイは微かに笑って背もたれに寄り掛かり、窓からの風を感じて心地良さそうに目を閉じる。
こうしてロイが目を閉じるのも中尉を信頼しているから。
「マスタング大将。
お帰りなさい。
お客様です」
「予定はなかったはずだが」
「マスタング大将の名刺を持っていたので、応接室に通していますよ」
「どんな方だ?」
「黒髪の女性でマスタング大将と同世代くらいかと」
「黒髪の女性?
渡した記憶はないが、仕事先で渡したかもしれんな」
「お供します」
ロイは頷いて軍の応接室に中尉と共に向かう。
「失礼します。
遅くなって申し訳ない。
貴方は…っ」
「こちらこそ、突然の訪問を申し訳ない。
マスタング大将。
あの時はお礼も自己紹介も出来ない状態だった。
イズミ・カーティスだ。
エルリック兄弟の師匠と言えば、分かりやすいだろうか。
事情があって挨拶が遅れた」
「ロイ・マスタングです。
軍嫌いの貴方が何故こちらに?」
戸惑いながらもロイは正面に座り、中尉はロイにも珈琲を淹れてロイの真後ろに待機する。
「エドワード・エルリック並びにアルフォンス・エルリックが貴方には大変、世話になったと聞いた。
エドは態度も良くなかっただろう。
苦労を掛けたはずだ」
「こちらこそ、大切な弟子を巻き込んでしまった」
「軍のことは貴方の責任ではない。
あのエドが貴方のことを庇ってたよ。
名刺はエドに借りたんだ」
名刺を奪われたエルリック兄弟が怯えている光景が浮かんだ。
「私は今も軍も軍人も信頼してないし、国家錬金術師の制度も気に入らん。
だが、あのエドに変化させてくれた貴方のことは信じよう」
「え…?」
「あの子達を頼んだよ。
貴方の元で何をしているのか、詳しくは知らないが」
「事情を聞きに来たのでは?」
「いいや。
それも含めてあいつらの人生だ。
貴方なら大丈夫だと分かった。
すまないね、お邪魔したよ」
ロイは戸惑いながら見送り、中尉と顔を見合わせる。
すれ違いでエドとアルが慌てたように応接間に来た。
「マスタング大将。
本当にごめんなさい」
「兄さんの名刺を師匠に見つかっちゃって。
何もされてませんか?」
「話をしていただけだが」
エルリック兄弟も顔を見合わて首を傾げてしまう。
「…君達が無茶してないか、心配していたんだよ」
「えぇ〜?」
「そうかなぁ?」
「一応は認めてくれたってことだろうな」
疑うようなエルリック兄弟にロイは苦笑いする。
「せっかく来たんだし。
何か食べに行くか?」
「…奢ってくれるなら」
「もう、兄さん!」
「ふはっ!
最初からそのつもりだよ。
ちょっと待ってなさい」
ロイはエドとアルの頭を撫でて応接間から出て行く。
「大総統。
早いですが、休憩を頂いても宜しいですか?」
「随分と今日は早…っ」
「お久しぶりで〜す」
「こ、こんにちは」
ロイの後ろからひっついて現れたエルリック兄弟に大総統は瞬きし、苦笑いした。
「こら…っ」
「ふはっ!
君達は仲良しだな。
軍議もないから構わんよ。
ゆっくりしておいで」
「ありがとうございます」
「マスタング大将。
腹減った。
許可貰ったんなら行こうぜ」
「君ねぇ…」
「レッツゴー!」
「おわ…っ、失礼しました」
ロイは背中を押されて半ば強引に大総統府の執務室から出された。
「まったく、大総統の前で君は何しているんだ」
「いいじゃん。
マスタング大将って。
何キロまで持てるの?」
「はぁ?」
「流石に俺等を抱えられなそう」
「そんな訳ないだろう。
肉料理って。
おぅわ!?」
勢いよくエルリック兄弟が背中に飛びついて来てロイは驚く。
「まったく。
君等は何をしているんだ」
「倒れると思ったんだけどな」
「アルまで」
「えへへ〜♪」
エルリック兄弟を背に抱えて、おんぶ状態だ。
「何やってんだよ。
いつから保育所になったんだ」
「そこまでガキじゃない!」
「兄さん、そういう問題なの?」
「…っと。
ほら、降りなさい。
大人をからかうもんじゃないぞ」
「あぁ…なるほどな。
細くてもロイは力あるぞ」
「軍人だからな」
ひょいっと抱え直されて床に降ろされてエドは悔しそうにしているが、アルは楽しそうに笑う。
ずっと鎧姿で子供扱いとは無縁だったから嬉しいようだ。
「よし、行くか」
「マスタング大将。
歩いて行くつもりですか?」
「近いだろう」
「「ダメに決まってます!」」
中尉を始めとした複数の軍人に止められてしまい、エルリック兄弟が苦笑いする。
「送って行きますから」
「…休憩中なんだけど」
「休憩中でも貴方は大将の地位であり、次期大総統です。
さあ、乗ってください」
「了解した」
ロイは諦めて中尉に軍車で送ってもらうことにした。
「ああしてみると、本当に子供のようだな」
「声を掛けなくていいんですか?」
「大人が邪魔するものじゃない」
「…そうですね」
「さあ、司令部に戻ろうか」
「気晴らしになりました?」
「お陰様で」
混乱状態のロイでは仕事にならないと判断し、中尉は視察という名のドライブに連れて来てくれた。
セリムの笑顔に安堵して問題なさそうだと軍車に戻った。
「…中尉」
「どうかしましたか?」
「あの行列は何だ?」
「確か、今日開店したスィーツのお店かと。
レベッカが言ってましたよ」
「あの店がそうなのか」
「把握していたなら聞かないでくださいよ」
「くくっ、思わずね。
場所までは把握してなかったよ。
平和惚けしてしまいそうだ」
「いいじゃないですか。
平和惚けしてしまえば」
「えっ?」
「そう思えるくらいに平和になったと思えてる証拠ですよ。
まだ解決はしてませんし、やらなくてはならないこともあるでしょうけど」
「…そうだな」
中尉の言葉にロイは微かに笑って背もたれに寄り掛かり、窓からの風を感じて心地良さそうに目を閉じる。
こうしてロイが目を閉じるのも中尉を信頼しているから。
「マスタング大将。
お帰りなさい。
お客様です」
「予定はなかったはずだが」
「マスタング大将の名刺を持っていたので、応接室に通していますよ」
「どんな方だ?」
「黒髪の女性でマスタング大将と同世代くらいかと」
「黒髪の女性?
渡した記憶はないが、仕事先で渡したかもしれんな」
「お供します」
ロイは頷いて軍の応接室に中尉と共に向かう。
「失礼します。
遅くなって申し訳ない。
貴方は…っ」
「こちらこそ、突然の訪問を申し訳ない。
マスタング大将。
あの時はお礼も自己紹介も出来ない状態だった。
イズミ・カーティスだ。
エルリック兄弟の師匠と言えば、分かりやすいだろうか。
事情があって挨拶が遅れた」
「ロイ・マスタングです。
軍嫌いの貴方が何故こちらに?」
戸惑いながらもロイは正面に座り、中尉はロイにも珈琲を淹れてロイの真後ろに待機する。
「エドワード・エルリック並びにアルフォンス・エルリックが貴方には大変、世話になったと聞いた。
エドは態度も良くなかっただろう。
苦労を掛けたはずだ」
「こちらこそ、大切な弟子を巻き込んでしまった」
「軍のことは貴方の責任ではない。
あのエドが貴方のことを庇ってたよ。
名刺はエドに借りたんだ」
名刺を奪われたエルリック兄弟が怯えている光景が浮かんだ。
「私は今も軍も軍人も信頼してないし、国家錬金術師の制度も気に入らん。
だが、あのエドに変化させてくれた貴方のことは信じよう」
「え…?」
「あの子達を頼んだよ。
貴方の元で何をしているのか、詳しくは知らないが」
「事情を聞きに来たのでは?」
「いいや。
それも含めてあいつらの人生だ。
貴方なら大丈夫だと分かった。
すまないね、お邪魔したよ」
ロイは戸惑いながら見送り、中尉と顔を見合わせる。
すれ違いでエドとアルが慌てたように応接間に来た。
「マスタング大将。
本当にごめんなさい」
「兄さんの名刺を師匠に見つかっちゃって。
何もされてませんか?」
「話をしていただけだが」
エルリック兄弟も顔を見合わて首を傾げてしまう。
「…君達が無茶してないか、心配していたんだよ」
「えぇ〜?」
「そうかなぁ?」
「一応は認めてくれたってことだろうな」
疑うようなエルリック兄弟にロイは苦笑いする。
「せっかく来たんだし。
何か食べに行くか?」
「…奢ってくれるなら」
「もう、兄さん!」
「ふはっ!
最初からそのつもりだよ。
ちょっと待ってなさい」
ロイはエドとアルの頭を撫でて応接間から出て行く。
「大総統。
早いですが、休憩を頂いても宜しいですか?」
「随分と今日は早…っ」
「お久しぶりで〜す」
「こ、こんにちは」
ロイの後ろからひっついて現れたエルリック兄弟に大総統は瞬きし、苦笑いした。
「こら…っ」
「ふはっ!
君達は仲良しだな。
軍議もないから構わんよ。
ゆっくりしておいで」
「ありがとうございます」
「マスタング大将。
腹減った。
許可貰ったんなら行こうぜ」
「君ねぇ…」
「レッツゴー!」
「おわ…っ、失礼しました」
ロイは背中を押されて半ば強引に大総統府の執務室から出された。
「まったく、大総統の前で君は何しているんだ」
「いいじゃん。
マスタング大将って。
何キロまで持てるの?」
「はぁ?」
「流石に俺等を抱えられなそう」
「そんな訳ないだろう。
肉料理って。
おぅわ!?」
勢いよくエルリック兄弟が背中に飛びついて来てロイは驚く。
「まったく。
君等は何をしているんだ」
「倒れると思ったんだけどな」
「アルまで」
「えへへ〜♪」
エルリック兄弟を背に抱えて、おんぶ状態だ。
「何やってんだよ。
いつから保育所になったんだ」
「そこまでガキじゃない!」
「兄さん、そういう問題なの?」
「…っと。
ほら、降りなさい。
大人をからかうもんじゃないぞ」
「あぁ…なるほどな。
細くてもロイは力あるぞ」
「軍人だからな」
ひょいっと抱え直されて床に降ろされてエドは悔しそうにしているが、アルは楽しそうに笑う。
ずっと鎧姿で子供扱いとは無縁だったから嬉しいようだ。
「よし、行くか」
「マスタング大将。
歩いて行くつもりですか?」
「近いだろう」
「「ダメに決まってます!」」
中尉を始めとした複数の軍人に止められてしまい、エルリック兄弟が苦笑いする。
「送って行きますから」
「…休憩中なんだけど」
「休憩中でも貴方は大将の地位であり、次期大総統です。
さあ、乗ってください」
「了解した」
ロイは諦めて中尉に軍車で送ってもらうことにした。