第54話
夢小説設定
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大総統に署名と印を貰ってロイは確認して茶封筒に入れて立ち上がる。
「それでは、夜遅くに失礼しました」
「ロイさん。
夕食は食べて行かないのですか?」
「私はこのまま、司令部に戻らなくてはいけませんから」
「それなら別の者に頼もうか」
「ですが…っ」
「これくらいなら司令部の大総統府に届けるだけだ。
何も問題ないだろう」
ロイから茶封筒を奪い、大総統の屋敷の護衛を任されている軍人の1人が司令部に届けに行く。
護衛隊も慣れていて戸惑いも驚きもなくなっていた。
「ロイさんはまずはお着替えに行って来て頂戴」
「…はい」
これは断るのは無理だなと先に電話を掛けてセルシアに連絡し、ロイは自室で軍服から私服に着替えた。
気にしなくていいと大総統も夫人にも言われているが、ロイはラフ過ぎずに上着を着ている。
「シャツだけで構わないのよ」
「あっ、いえ…」
「脱いで構わんよ。
君は妙なとこで生真面目だ。
あのグラマン中将が“設定”の策を与えた訳だな」
「…脱ぎますよ」
ロイはため息をついて上着を脱ぎ、上はワイシャツだけになった。
グレーのYシャツに下は細身の黒のズボンだった。
「ほら、貸して」
「奥様に預ける訳には」
「気にしないで食事しなさいな。
若い子が遠慮しないの。
部屋に入られるのは嫌でしょうから、洗濯しちゃいましょう」
ロイの返答を待たずに去って行ってしまい、苦笑いするしかない。
「…食べようか。
妻のシチューは絶品だ」
「はい、頂きます」
大総統の屋敷で食事をするのは最初は不思議な感覚だったが、不思議と今は落ち着く。
マダムともヒューズ宅とも異なる実家のような感覚になってしまう。
両親に出迎えられた息子のような感覚で嬉しいような、少し切なくなる。
「グラマン中将は君の義母を知っているのだろう?」
「…結果的に。
義母の店の客でした」
「私は会わせてもらえないのかね」
「貴方がぶん殴られては流石に困りますから」
「君の体術は義母か」
「そうかもしれませんね。
グラマン中将は何度かされていたと店の者が言ってました」
「ふっ、はは!
あのグラマン中将が。
それは行くのは危険だな」
「言葉は厳しいことがありますが。
とても大切にしてくれてます。
今も、昔も…」
「そうか」
「私を大切にして守ってくれてた。
今なら、分かります。
とても心配してくれてたことも。
見守っていてくれたことも」
大総統は微笑んで俯いているロイの頭を撫でた。
「君が笑顔で生きているだけで幸せであり、親孝行なんだよ」
「…っズ」
「まったく、仕方のない子だ。
ここに来ると君は泣き虫になる」
苦笑いして大総統は親指でロイの涙を拭った。
「貴方、何を泣かしているのですか!?」
「違う!誤解だ!」
「お父様…最低です」
「セリムまで!」
大総統はロイを泣かせたと夫人に勘違されて叱られ、セリム・ブラッドレイは違うと分かりながらも責めていた。
ロイはキョトンとしながらその光景を見ているしかない。
「…元気になったようですね」
「セリム・ブラッドレイ。
お陰様で。
アレは止めなくて良いのですか?」
「気にしなくていい。
いい気味だ」
(大総統。
セリム・ブラッドレイに何をしているんですか)
ロイはセリムに涙を拭われ、ビクッと肩を震わせる。
「何もしないよ。
貴方こそ、年齢不詳だ」
「…童顔なだけです」
「貴方が味方なら違う道になっていたのだろうけれど。
こういう人生も悪くないさ」
セリムが去って行き、ロイは安堵の息をついた。
目にゴミが入ったと言い訳して騙されてくれるのは大総統夫人くらいだ。
「お騒がせしてごめんなさい。
情けないところをロイさんにも見せてしまって」
「気にしないでください」
冷えた料理はロイの錬金術によって温め直された。
「初めて見る料理ですね」
「あぁ、こちらでは珍しい料理かもしれんな」
「好みの差があるから。
無理なさらないで」
「美味しいから食べてごらん。
南地方の伝統料理だ」
「…美味しい。
少し癖のある味ですね」
「そうなのよ。
見た目も少しね」
「ははっ、確かに。
これは好みが分かれますね」
「ロイは意外とこういう料理、好きだろう?」
「まぁ、わりと。
地方の変わった料理とかも。
私の口には合わなかったのもありますけど」
「そこで不味いと言わないのがロイさんの優しさよね。
どっかの誰かさんは不味いと言いますから」
「自分の口に合わないだけで、好みがありますよ。
時にはオブラートに包むのも必要かと思いますが」
大総統は妻と息子の総攻撃に苦笑いするしかない。
「君、本当に美味しそうに飲むね。
1杯目のように」
「美味しいですよ」
「本当に酔わないんですね。
それ、何杯目ですか?」
「何杯目ですかね」
「とりあえず、7本目」
大総統はのんびり飲んでいるが、味わいながらもロイはハイスペースだ。
空いているグラスと空ビンを片付けながら夫人はおつまみを用意してから寝るのだった。
「飲み過ぎ?」
「別に構わんよ。
君の為に仕入れているものだし。
味わってくれたらいいさ。
白ワインも開けるか?
これはサッパリして美味しいよ。
赤ワイン派ではないだろう?」
「飲むのが赤ワインが多いだけで、白ワインも飲みますよ。
サッパリしてますし、肉料理にも合いそうですね」
ほとんどロイが飲んでいてそれは大総統が止めるまで続く。
「今日はコレくらいに寝ようか。
寝不足になるからね」
「父様、抱っこ」
「酔ってないだろう?」
「ふわふわする〜」
「…やれやれ。
抱えるから暴れるなよ」
大総統に抱えられてほろ酔い気分のロイはクスクスと笑っていた。
「それでは、夜遅くに失礼しました」
「ロイさん。
夕食は食べて行かないのですか?」
「私はこのまま、司令部に戻らなくてはいけませんから」
「それなら別の者に頼もうか」
「ですが…っ」
「これくらいなら司令部の大総統府に届けるだけだ。
何も問題ないだろう」
ロイから茶封筒を奪い、大総統の屋敷の護衛を任されている軍人の1人が司令部に届けに行く。
護衛隊も慣れていて戸惑いも驚きもなくなっていた。
「ロイさんはまずはお着替えに行って来て頂戴」
「…はい」
これは断るのは無理だなと先に電話を掛けてセルシアに連絡し、ロイは自室で軍服から私服に着替えた。
気にしなくていいと大総統も夫人にも言われているが、ロイはラフ過ぎずに上着を着ている。
「シャツだけで構わないのよ」
「あっ、いえ…」
「脱いで構わんよ。
君は妙なとこで生真面目だ。
あのグラマン中将が“設定”の策を与えた訳だな」
「…脱ぎますよ」
ロイはため息をついて上着を脱ぎ、上はワイシャツだけになった。
グレーのYシャツに下は細身の黒のズボンだった。
「ほら、貸して」
「奥様に預ける訳には」
「気にしないで食事しなさいな。
若い子が遠慮しないの。
部屋に入られるのは嫌でしょうから、洗濯しちゃいましょう」
ロイの返答を待たずに去って行ってしまい、苦笑いするしかない。
「…食べようか。
妻のシチューは絶品だ」
「はい、頂きます」
大総統の屋敷で食事をするのは最初は不思議な感覚だったが、不思議と今は落ち着く。
マダムともヒューズ宅とも異なる実家のような感覚になってしまう。
両親に出迎えられた息子のような感覚で嬉しいような、少し切なくなる。
「グラマン中将は君の義母を知っているのだろう?」
「…結果的に。
義母の店の客でした」
「私は会わせてもらえないのかね」
「貴方がぶん殴られては流石に困りますから」
「君の体術は義母か」
「そうかもしれませんね。
グラマン中将は何度かされていたと店の者が言ってました」
「ふっ、はは!
あのグラマン中将が。
それは行くのは危険だな」
「言葉は厳しいことがありますが。
とても大切にしてくれてます。
今も、昔も…」
「そうか」
「私を大切にして守ってくれてた。
今なら、分かります。
とても心配してくれてたことも。
見守っていてくれたことも」
大総統は微笑んで俯いているロイの頭を撫でた。
「君が笑顔で生きているだけで幸せであり、親孝行なんだよ」
「…っズ」
「まったく、仕方のない子だ。
ここに来ると君は泣き虫になる」
苦笑いして大総統は親指でロイの涙を拭った。
「貴方、何を泣かしているのですか!?」
「違う!誤解だ!」
「お父様…最低です」
「セリムまで!」
大総統はロイを泣かせたと夫人に勘違されて叱られ、セリム・ブラッドレイは違うと分かりながらも責めていた。
ロイはキョトンとしながらその光景を見ているしかない。
「…元気になったようですね」
「セリム・ブラッドレイ。
お陰様で。
アレは止めなくて良いのですか?」
「気にしなくていい。
いい気味だ」
(大総統。
セリム・ブラッドレイに何をしているんですか)
ロイはセリムに涙を拭われ、ビクッと肩を震わせる。
「何もしないよ。
貴方こそ、年齢不詳だ」
「…童顔なだけです」
「貴方が味方なら違う道になっていたのだろうけれど。
こういう人生も悪くないさ」
セリムが去って行き、ロイは安堵の息をついた。
目にゴミが入ったと言い訳して騙されてくれるのは大総統夫人くらいだ。
「お騒がせしてごめんなさい。
情けないところをロイさんにも見せてしまって」
「気にしないでください」
冷えた料理はロイの錬金術によって温め直された。
「初めて見る料理ですね」
「あぁ、こちらでは珍しい料理かもしれんな」
「好みの差があるから。
無理なさらないで」
「美味しいから食べてごらん。
南地方の伝統料理だ」
「…美味しい。
少し癖のある味ですね」
「そうなのよ。
見た目も少しね」
「ははっ、確かに。
これは好みが分かれますね」
「ロイは意外とこういう料理、好きだろう?」
「まぁ、わりと。
地方の変わった料理とかも。
私の口には合わなかったのもありますけど」
「そこで不味いと言わないのがロイさんの優しさよね。
どっかの誰かさんは不味いと言いますから」
「自分の口に合わないだけで、好みがありますよ。
時にはオブラートに包むのも必要かと思いますが」
大総統は妻と息子の総攻撃に苦笑いするしかない。
「君、本当に美味しそうに飲むね。
1杯目のように」
「美味しいですよ」
「本当に酔わないんですね。
それ、何杯目ですか?」
「何杯目ですかね」
「とりあえず、7本目」
大総統はのんびり飲んでいるが、味わいながらもロイはハイスペースだ。
空いているグラスと空ビンを片付けながら夫人はおつまみを用意してから寝るのだった。
「飲み過ぎ?」
「別に構わんよ。
君の為に仕入れているものだし。
味わってくれたらいいさ。
白ワインも開けるか?
これはサッパリして美味しいよ。
赤ワイン派ではないだろう?」
「飲むのが赤ワインが多いだけで、白ワインも飲みますよ。
サッパリしてますし、肉料理にも合いそうですね」
ほとんどロイが飲んでいてそれは大総統が止めるまで続く。
「今日はコレくらいに寝ようか。
寝不足になるからね」
「父様、抱っこ」
「酔ってないだろう?」
「ふわふわする〜」
「…やれやれ。
抱えるから暴れるなよ」
大総統に抱えられてほろ酔い気分のロイはクスクスと笑っていた。