第54話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
賢い奴は嫌だなと呆れたように軍医はため息をつく。
(…アイツは強いのか弱いのか。
よく分からん奴だな。
まぁ、記憶のピースに関しては未知数だが。
それは専門外だし)
ロイのカウンセリング結果に軍医はため息をつく。
自分も賢いと言われるジャンルの職業だが、ロイを見ると賢さの違いを感じさせられてしまう。
医師だから賢いなんて思ったことはないけれど。
軍議では結果的に進行役はロイになっていて大総統の次に地位が高いのに良いのだろうかとも思うが、記憶力と知識もあるのでその方が早くまとまる。
「大総統、こちらは…」
「………。」
腕を組んで目を閉じていて、ロイが近づいても気配に気づくことがない。
珍しいなとロイは思いながらも大総統に更に近づいた。
「お父様。
軍議中ですよ?」
「…ロイ」
「おはようございます。
よく居眠りになられましたか?」
耳元で囁かれて息を吹き掛けられ、大総統は飛び起きた。
叫ばない大総統にロイは不満そうにしながらもにっこりと笑う。
「すまない。
君の声色は眠たくなる」
「意味が分かりませんが」
「君から呼ばれる“お父様”は愛しくなるな」
「…バカですか。
セリム・ブラッドレイに呼ばれておいてください」
「振られてしまったな」
「寝不足ですか?
最近は忙しくないはずですが」
「君の看病で寝不足かもしれんな」
「…っぶ!
ゴホッ…ゴホッ…」
「夜中に高熱を出すし、食欲ないと私にパン粥を作らせるし」
「そ、れは…っ」
「セリムよりも意外と熱を出すかもしれんな」
(人造人間と比較しないでください)
((…我々は何の痴話喧嘩を見せられているのだろうか))
大総統にからかわれてロイは微かに頬を赤らめて言い返す。
将軍達が呆れながらも黙って珈琲を口にしていた。
「そういえば、ロイ」
「…何ですか?」
「次回のカウンセリングの日は?
軍議と時間が重ならないようにしないといけないだろう」
「次回はないですが」
「予約してこなかったのか?」
軍医なので緊急の場合は電話で呼び出し、カウンセリング中には近づかないようにしている。
「もう大丈夫だと言われました」
「はっ?」
「「はあぁ!?」」
それがおかしいことだとロイは気づいておらず、不思議そうに首を傾げる。
「放任ではないんだな?」
「はい、もう大丈夫だと。
何故か呆れてましたが。
ちゃんと話したのに失礼ですよ」
「…話したのか。
そうか、話せたか」
「父様?」
あまりにも優しい表情でロイは戸惑いながらも“大総統”とは呼べなかった。
大総統に抱き締められてロイは大人しくしていた。
「カウンセリングの内容は私でも聞いても当然ながら教えてはもらえない。
トラウマもあるし、話せなくなる者も多いと聞いていた」
「そう…、ですか。
私よりも年下も多く居ました。
19歳や18歳、それよりも年下もいたかもしれません。
私の隊の者達は今はほとんど軍を離れていますが、奇跡的に助かりましたが。
最前線で亡くなった若者も…、少なくありません」
当時を思い出してロイは大総統の軍服を掴んで胸に頭を預ける。
「もう大丈夫ならそれでいい。
必要な時は言いなさい。
経験者にトラウマがあるのおかしいことでも弱くはないのだから」
「はい。
ありがとうございます」
「君には驚かされるな。
いい子だな」
「ちょっ、父様!」
髪をグシャグシャに掻き乱され、全力で褒められる年齢ではないとロイは不満を露にする。
「ははっ!
すまない、思わずね。
今が長期戦で若者よりも時間が掛かると思っていたんだ」
「えっ?」
「当時の功績ある国家錬金術師は君くらいだし。
君が“功績”と思ってないのも理解しているさ。
それでも無傷でなくとも、君は隊の者達を守り抜いたのは事実だ。
23歳の若さで最前線に立たせてしまったことは…」
「言わないでくださいっ!
後悔など言ったら許しません!
彼等は…、私を守ってくれた!
貴方に後悔していると言われたら彼等の努力が無駄になる。
身体も心も傷つきながらも彼等は私を信じてついて来てくれました」
ロイがこうして感情を露にしたのは初めてかもしれない。
「…すまなかった。
言葉の配慮が足らなかった」
宥めるようにポンポンと大総統に頭を撫でられてロイは脱力する。
(感情を露にしてどうする。
怒ることでもないはずだ。
カウンセリング後で感情が不安定になっていたとしても…。
もう、いいや)
ロイは大総統に抱きついたままでため息をついた。
「ロイ…?」
「感情を露にしたことは謝罪します。
父様も本音だとしても素直に言葉にしないでください。
過去のことを謝罪されても、複雑になるだけだ」
「…分かった。
君がそう望むならば」
「5分休憩を要望します」
「耳、赤くなっているぞ」
「言わないでください。
見ないでください。
触らないでください」
抱きついたまま、赤くなった顔を隠しているロイに大総統は微笑む。
「君、こういうとこは素直で本当に愛らしいな。
ほら、冷たいお茶を飲むか?」
「…ん」
まだ少し赤いが、大総統が淹れてくれた冷たい緑茶を飲む。
「紅茶とは違う独特な苦みがあるが、うまいな」
「…美味しい。
この苦味、スッキリする」
「気に入ったのなら何よりだ。
また買って来てやろう」
どうやら大総統のお土産のようでロイは優しく頭を撫でられた。
大総統は仕事で出る時には必ずと言っていい程に買って来てくれる。
(…アイツは強いのか弱いのか。
よく分からん奴だな。
まぁ、記憶のピースに関しては未知数だが。
それは専門外だし)
ロイのカウンセリング結果に軍医はため息をつく。
自分も賢いと言われるジャンルの職業だが、ロイを見ると賢さの違いを感じさせられてしまう。
医師だから賢いなんて思ったことはないけれど。
軍議では結果的に進行役はロイになっていて大総統の次に地位が高いのに良いのだろうかとも思うが、記憶力と知識もあるのでその方が早くまとまる。
「大総統、こちらは…」
「………。」
腕を組んで目を閉じていて、ロイが近づいても気配に気づくことがない。
珍しいなとロイは思いながらも大総統に更に近づいた。
「お父様。
軍議中ですよ?」
「…ロイ」
「おはようございます。
よく居眠りになられましたか?」
耳元で囁かれて息を吹き掛けられ、大総統は飛び起きた。
叫ばない大総統にロイは不満そうにしながらもにっこりと笑う。
「すまない。
君の声色は眠たくなる」
「意味が分かりませんが」
「君から呼ばれる“お父様”は愛しくなるな」
「…バカですか。
セリム・ブラッドレイに呼ばれておいてください」
「振られてしまったな」
「寝不足ですか?
最近は忙しくないはずですが」
「君の看病で寝不足かもしれんな」
「…っぶ!
ゴホッ…ゴホッ…」
「夜中に高熱を出すし、食欲ないと私にパン粥を作らせるし」
「そ、れは…っ」
「セリムよりも意外と熱を出すかもしれんな」
(人造人間と比較しないでください)
((…我々は何の痴話喧嘩を見せられているのだろうか))
大総統にからかわれてロイは微かに頬を赤らめて言い返す。
将軍達が呆れながらも黙って珈琲を口にしていた。
「そういえば、ロイ」
「…何ですか?」
「次回のカウンセリングの日は?
軍議と時間が重ならないようにしないといけないだろう」
「次回はないですが」
「予約してこなかったのか?」
軍医なので緊急の場合は電話で呼び出し、カウンセリング中には近づかないようにしている。
「もう大丈夫だと言われました」
「はっ?」
「「はあぁ!?」」
それがおかしいことだとロイは気づいておらず、不思議そうに首を傾げる。
「放任ではないんだな?」
「はい、もう大丈夫だと。
何故か呆れてましたが。
ちゃんと話したのに失礼ですよ」
「…話したのか。
そうか、話せたか」
「父様?」
あまりにも優しい表情でロイは戸惑いながらも“大総統”とは呼べなかった。
大総統に抱き締められてロイは大人しくしていた。
「カウンセリングの内容は私でも聞いても当然ながら教えてはもらえない。
トラウマもあるし、話せなくなる者も多いと聞いていた」
「そう…、ですか。
私よりも年下も多く居ました。
19歳や18歳、それよりも年下もいたかもしれません。
私の隊の者達は今はほとんど軍を離れていますが、奇跡的に助かりましたが。
最前線で亡くなった若者も…、少なくありません」
当時を思い出してロイは大総統の軍服を掴んで胸に頭を預ける。
「もう大丈夫ならそれでいい。
必要な時は言いなさい。
経験者にトラウマがあるのおかしいことでも弱くはないのだから」
「はい。
ありがとうございます」
「君には驚かされるな。
いい子だな」
「ちょっ、父様!」
髪をグシャグシャに掻き乱され、全力で褒められる年齢ではないとロイは不満を露にする。
「ははっ!
すまない、思わずね。
今が長期戦で若者よりも時間が掛かると思っていたんだ」
「えっ?」
「当時の功績ある国家錬金術師は君くらいだし。
君が“功績”と思ってないのも理解しているさ。
それでも無傷でなくとも、君は隊の者達を守り抜いたのは事実だ。
23歳の若さで最前線に立たせてしまったことは…」
「言わないでくださいっ!
後悔など言ったら許しません!
彼等は…、私を守ってくれた!
貴方に後悔していると言われたら彼等の努力が無駄になる。
身体も心も傷つきながらも彼等は私を信じてついて来てくれました」
ロイがこうして感情を露にしたのは初めてかもしれない。
「…すまなかった。
言葉の配慮が足らなかった」
宥めるようにポンポンと大総統に頭を撫でられてロイは脱力する。
(感情を露にしてどうする。
怒ることでもないはずだ。
カウンセリング後で感情が不安定になっていたとしても…。
もう、いいや)
ロイは大総統に抱きついたままでため息をついた。
「ロイ…?」
「感情を露にしたことは謝罪します。
父様も本音だとしても素直に言葉にしないでください。
過去のことを謝罪されても、複雑になるだけだ」
「…分かった。
君がそう望むならば」
「5分休憩を要望します」
「耳、赤くなっているぞ」
「言わないでください。
見ないでください。
触らないでください」
抱きついたまま、赤くなった顔を隠しているロイに大総統は微笑む。
「君、こういうとこは素直で本当に愛らしいな。
ほら、冷たいお茶を飲むか?」
「…ん」
まだ少し赤いが、大総統が淹れてくれた冷たい緑茶を飲む。
「紅茶とは違う独特な苦みがあるが、うまいな」
「…美味しい。
この苦味、スッキリする」
「気に入ったのなら何よりだ。
また買って来てやろう」
どうやら大総統のお土産のようでロイは優しく頭を撫でられた。
大総統は仕事で出る時には必ずと言っていい程に買って来てくれる。