第54話
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夫人に教わりながら大総統が厨房で悪戦苦闘しながらパン粥を作っている姿にセリムはこっそりと見て呆れる。
(そこまで貴方を動かす彼は何なんでしょうね。
捨てるはずだったキング・ブラッドレイの名を手にするくらいに)
ため息をつき、セリムはロイの自室に静かに入る。
「こんばんわ。
セリム・ブラッドレイ。
お見舞いに来てくれましたか?
それとも、私を消しますか?」
「どちらでもない。
ラース…いや、キング・ブラッドレイは不器用なようだ」
「ふはっ!
苦戦してましたか」
「えぇ、お母様に叱られながら。
とりあえずは先程は5枚目の食パンでした」
セリムの淡々とした暴露にロイは吹き出して笑う。
「そ、そこまで…不器用、とは」
「あの中でもダントツで不器用でしたよ」
「そうは見えないけれど」
「それを見えないようにしていた。
見覚えはあるのでは?」
「否定はしません」
「もう肯定しているもんだろう」
無愛想な口調ながらもセリムも心配してくれたのかもしれない。
「君はそうやって笑ってた方がいい」
「えっ?」
「悩むなとは言わない。
キング・ブラッドレイやお母様、みんなが君の笑顔が好きなようだから」
「セリム・ブラッドレイ。
貴方は今、幸せですか?」
「お母様がいるのに不幸な訳がないだろう」
立ち上がるセリムにロイは少しだけ安堵して小さく笑う。
「…すまなかったな」
「えっ?」
「イシュヴァールの件は作戦に必要だった。
だが、脆い人間の若い君にそこまで酷なことをするべきではなかった」
ボソッと謝罪されてロイは謝られるとは思わずに黙りながらも少しは変化があったのかもしれないと安堵する。
「まぁ、セリム。
ロイさんは体調が悪いのだから!
夜更しもよくないわ」
「あ…っ」
「私のお見舞いに来てくださったみたいです。
私も話してしまって。
すみません」
「ロイの話し相手になってくれてたんだな」
「そ、そうなんだ!
意外とロイは寂しがり屋だから。
じゃあね、おやすみ!」
「セリムったら。
ごめんなさいね、ロイさん」
「…大丈夫です」
どうにか3人で夫人を誤魔化して安堵しながらも“全然気配がなかった”と思うのだった。
「父様、我儘を言ってごめんなさい。
予想以上に不器用だったとは」
「…気にしなくていい。
料理は人任せだったから。
セリムが話したんだな。
少しでいいから食べなさい。
君は先に寝ておくれ」
「はい、おやすみなさい」
「奥様もありがとうございます」
「気にしないで。
食パン10枚は消費したけれど」
「ぶはっ!
更に増えた」
「君も暴露しないでくれ!」
これは本気で照れていて素顔のキング・ブラッドレイなんだろうなと思いながらもロイは笑っていた。
咳払いして大総統はまだ熱いので器にパン粥を取り分けた。
「熱いから気をつけなさい。
残していいから。
少しでも食べなさい」
「…はい」
「君が好きなチーズを入れてもよかったんだが。
食欲ないようだし、焦げやすいと妻に止められてな」
そうだろうなと思いながらもロイは黙ったまま、器のパン粥を見つめてた。
「口に合わなければ残していい。
甘さも控えめにしてある。
蜂蜜を少し入れた程度だよ」
(いい香りはするけれど)
木のスプーンさえも手に出来ずに気まずい雰囲気が流れる。
「ふーっ…ふーっ…
ほら、口を開いて」
「何を…っ」
「君が食べないから。
はい、あ〜ん?」
凝視しながらも戸惑いながらもロイは口を開く。
「よしよし、いい子だ」
「…私は何歳なんですか」
「君が食べないからだろう。
体調も良くないし、気にするな。
手の震えは…止まないか?」
「(ビクッ)」
「隠さなくていい。
微かに震えているのだろう。
すまないな、あの時に聞くべきではなかった」
「違う…っ」
「いいんだよ。
身体が拒絶するのも当然だ。
何も言わなくていい。
さあ、食べて寝ようか」
「一緒に?」
「君がお望みならば」
「ふは…っ」
ロイは小さく吹き出して大総統を見つめて微笑んだ。
「お味は如何かな」
「美味しいです。
体調悪い時に良いですね。
奥様にレシピと作り方を教えてもらわないと」
「私も教えられるが」
「長時間掛かりそうなんで」
自分でも思ったようで大総統は苦笑いしてしまう。
「…セリム・ブラッドレイ」
「何か言われたか?」
「傷つくことは何も。
彼と言っていいのか分かりませんが。
変化はあるようですね」
「そうか。
私にはわからないが。
君が言うならそうなのだろう」
「慰めてもくれました。
貴方の笑顔がお母様やみんなが好きだからと。
ラースと言って、キング・ブラッドレイと言い直してました。
お父様とは呼ばれなくなったのですか?」
「妻が居ない限りは」
「まぁ、そうですよね。
奥様には誰も敵わないようです。
あの年齢の方が敵わないのだから」
「年齢を知っているのか?」
「前に本人が教えてくれましたよ」
「君の方が慕われてるな」
「そこまで年齢差のある弟に甘える兄は居ないのでは?」
小声で雑談しながらゆっくりとパン粥を食べさせてもらった。
「これ以上は…」
「そうか。
半分食べれたならいいさ。
飲み薬を飲みなさい。
粉薬だが、大丈夫か?」
「子供扱いは結構です」
「ははっ!
すまないね」
(苦…っ)
飲み薬を飲んで顔を歪めるロイに大総統は苦笑いする。
片付けに行った大総統がすぐに戻って来てロイは不思議そうに瞬きする。
「どうしたんですか?」
「眠るまで傍に居ようかと」
「はぁ?」
「嫌な夢を見たら起こすから。
眠りなさい」
「甘やかしてくれるんですか」
「そうだな。
さっきよりは震えがないな。
痺れはないか?」
「痺れも力も問題ないですよ」
微かに震えているロイの右手を握って温めるようにマッサージしてくれる。
「…あったかい」
「温かくなると眠たくなる。
私が疲れていると、妻がよくしてくれるんだ」
「父様も甘やかされてる。
父様の手、あったかい」
口調から眠たくなっているなと思いながらも大総統は指摘しない。
「眠ったらすぐに出て行きますか?」
「しばらくは傍にいるから。
安心して眠りなさい」
優しく頭を撫でて、ロイの額にキスをする。
「熱あって。
汗、かいてるのに」
「気にするな」
「私が気になるんですが」
「ははっ、すまないね」
不満そうなロイに大総統はクスクスと笑いながら謝る。
「すぅ…すぅ…」
(大丈夫そうだな。
汗、かいてるようだし。
着替えさせるか)
起きている時に言うと自分でやるとロイが否定するのは想像がついたので眠ってから着替えさせた。
「んんっ…」
「すまない、起こしたか?」
「なに、して…っ」
「汗かいていたからね」
叫びそうになりながらロイは黙り、大総統を睨む。
「お風呂は入れないし。
身体を拭いた方が楽になるだろう」
「…ん」
温かいタオルで拭かれて気持ちいいのは事実なので大人しく受け入れた。
否定したところで面倒になるのも分かっている。
「おはようございます、父様」
「…もう起きていたのか。
熱は下がったようだが。
今日は休みなさい」
「大丈夫ですよ。
大袈裟ですね」
「それは大袈裟じゃなくて常識だと思いますが?」
「おはようございます、セリム・ブラッドレイ」
「…おはようございます。
貴方は父より働き過ぎです」
「ふふっ、そんなことないですよ」
(何だか蚊帳の外だな)
大総統は苦笑いしながらも雑談している2人を見つめる。
「あらあら、仲の良い兄弟ね」
「兄弟って」
「ロイさん。
お熱は下がりました?」
「はっ?
い、いえ…失礼しました。
熱は…下がりました」
「お母様、僕ではないのですから。
成人男性にお熱と聞くのは。
その、流石に失礼ですよ」
「ごめんなさいね。
セリムに聞く癖で」
「大丈夫…ですよ」
「笑うなら声を出しては?」
「ふはっ!
失礼しました」
笑って涙目になっているロイに苦笑いしてしまう。
「ロイさんは普通に食べれる?」
「…脂っこくなければ」
「分かったわ」
「パン粥のレシピと作り方、教えてもらえますか?」
「書いて渡すわ。
ロイさんなら、見本を見せなくても分かるでしょう?」
「そうですね。
ありがとうございます」
夫人に渡されたメモを確認してロイはポケットに入れた。
(そこまで貴方を動かす彼は何なんでしょうね。
捨てるはずだったキング・ブラッドレイの名を手にするくらいに)
ため息をつき、セリムはロイの自室に静かに入る。
「こんばんわ。
セリム・ブラッドレイ。
お見舞いに来てくれましたか?
それとも、私を消しますか?」
「どちらでもない。
ラース…いや、キング・ブラッドレイは不器用なようだ」
「ふはっ!
苦戦してましたか」
「えぇ、お母様に叱られながら。
とりあえずは先程は5枚目の食パンでした」
セリムの淡々とした暴露にロイは吹き出して笑う。
「そ、そこまで…不器用、とは」
「あの中でもダントツで不器用でしたよ」
「そうは見えないけれど」
「それを見えないようにしていた。
見覚えはあるのでは?」
「否定はしません」
「もう肯定しているもんだろう」
無愛想な口調ながらもセリムも心配してくれたのかもしれない。
「君はそうやって笑ってた方がいい」
「えっ?」
「悩むなとは言わない。
キング・ブラッドレイやお母様、みんなが君の笑顔が好きなようだから」
「セリム・ブラッドレイ。
貴方は今、幸せですか?」
「お母様がいるのに不幸な訳がないだろう」
立ち上がるセリムにロイは少しだけ安堵して小さく笑う。
「…すまなかったな」
「えっ?」
「イシュヴァールの件は作戦に必要だった。
だが、脆い人間の若い君にそこまで酷なことをするべきではなかった」
ボソッと謝罪されてロイは謝られるとは思わずに黙りながらも少しは変化があったのかもしれないと安堵する。
「まぁ、セリム。
ロイさんは体調が悪いのだから!
夜更しもよくないわ」
「あ…っ」
「私のお見舞いに来てくださったみたいです。
私も話してしまって。
すみません」
「ロイの話し相手になってくれてたんだな」
「そ、そうなんだ!
意外とロイは寂しがり屋だから。
じゃあね、おやすみ!」
「セリムったら。
ごめんなさいね、ロイさん」
「…大丈夫です」
どうにか3人で夫人を誤魔化して安堵しながらも“全然気配がなかった”と思うのだった。
「父様、我儘を言ってごめんなさい。
予想以上に不器用だったとは」
「…気にしなくていい。
料理は人任せだったから。
セリムが話したんだな。
少しでいいから食べなさい。
君は先に寝ておくれ」
「はい、おやすみなさい」
「奥様もありがとうございます」
「気にしないで。
食パン10枚は消費したけれど」
「ぶはっ!
更に増えた」
「君も暴露しないでくれ!」
これは本気で照れていて素顔のキング・ブラッドレイなんだろうなと思いながらもロイは笑っていた。
咳払いして大総統はまだ熱いので器にパン粥を取り分けた。
「熱いから気をつけなさい。
残していいから。
少しでも食べなさい」
「…はい」
「君が好きなチーズを入れてもよかったんだが。
食欲ないようだし、焦げやすいと妻に止められてな」
そうだろうなと思いながらもロイは黙ったまま、器のパン粥を見つめてた。
「口に合わなければ残していい。
甘さも控えめにしてある。
蜂蜜を少し入れた程度だよ」
(いい香りはするけれど)
木のスプーンさえも手に出来ずに気まずい雰囲気が流れる。
「ふーっ…ふーっ…
ほら、口を開いて」
「何を…っ」
「君が食べないから。
はい、あ〜ん?」
凝視しながらも戸惑いながらもロイは口を開く。
「よしよし、いい子だ」
「…私は何歳なんですか」
「君が食べないからだろう。
体調も良くないし、気にするな。
手の震えは…止まないか?」
「(ビクッ)」
「隠さなくていい。
微かに震えているのだろう。
すまないな、あの時に聞くべきではなかった」
「違う…っ」
「いいんだよ。
身体が拒絶するのも当然だ。
何も言わなくていい。
さあ、食べて寝ようか」
「一緒に?」
「君がお望みならば」
「ふは…っ」
ロイは小さく吹き出して大総統を見つめて微笑んだ。
「お味は如何かな」
「美味しいです。
体調悪い時に良いですね。
奥様にレシピと作り方を教えてもらわないと」
「私も教えられるが」
「長時間掛かりそうなんで」
自分でも思ったようで大総統は苦笑いしてしまう。
「…セリム・ブラッドレイ」
「何か言われたか?」
「傷つくことは何も。
彼と言っていいのか分かりませんが。
変化はあるようですね」
「そうか。
私にはわからないが。
君が言うならそうなのだろう」
「慰めてもくれました。
貴方の笑顔がお母様やみんなが好きだからと。
ラースと言って、キング・ブラッドレイと言い直してました。
お父様とは呼ばれなくなったのですか?」
「妻が居ない限りは」
「まぁ、そうですよね。
奥様には誰も敵わないようです。
あの年齢の方が敵わないのだから」
「年齢を知っているのか?」
「前に本人が教えてくれましたよ」
「君の方が慕われてるな」
「そこまで年齢差のある弟に甘える兄は居ないのでは?」
小声で雑談しながらゆっくりとパン粥を食べさせてもらった。
「これ以上は…」
「そうか。
半分食べれたならいいさ。
飲み薬を飲みなさい。
粉薬だが、大丈夫か?」
「子供扱いは結構です」
「ははっ!
すまないね」
(苦…っ)
飲み薬を飲んで顔を歪めるロイに大総統は苦笑いする。
片付けに行った大総統がすぐに戻って来てロイは不思議そうに瞬きする。
「どうしたんですか?」
「眠るまで傍に居ようかと」
「はぁ?」
「嫌な夢を見たら起こすから。
眠りなさい」
「甘やかしてくれるんですか」
「そうだな。
さっきよりは震えがないな。
痺れはないか?」
「痺れも力も問題ないですよ」
微かに震えているロイの右手を握って温めるようにマッサージしてくれる。
「…あったかい」
「温かくなると眠たくなる。
私が疲れていると、妻がよくしてくれるんだ」
「父様も甘やかされてる。
父様の手、あったかい」
口調から眠たくなっているなと思いながらも大総統は指摘しない。
「眠ったらすぐに出て行きますか?」
「しばらくは傍にいるから。
安心して眠りなさい」
優しく頭を撫でて、ロイの額にキスをする。
「熱あって。
汗、かいてるのに」
「気にするな」
「私が気になるんですが」
「ははっ、すまないね」
不満そうなロイに大総統はクスクスと笑いながら謝る。
「すぅ…すぅ…」
(大丈夫そうだな。
汗、かいてるようだし。
着替えさせるか)
起きている時に言うと自分でやるとロイが否定するのは想像がついたので眠ってから着替えさせた。
「んんっ…」
「すまない、起こしたか?」
「なに、して…っ」
「汗かいていたからね」
叫びそうになりながらロイは黙り、大総統を睨む。
「お風呂は入れないし。
身体を拭いた方が楽になるだろう」
「…ん」
温かいタオルで拭かれて気持ちいいのは事実なので大人しく受け入れた。
否定したところで面倒になるのも分かっている。
「おはようございます、父様」
「…もう起きていたのか。
熱は下がったようだが。
今日は休みなさい」
「大丈夫ですよ。
大袈裟ですね」
「それは大袈裟じゃなくて常識だと思いますが?」
「おはようございます、セリム・ブラッドレイ」
「…おはようございます。
貴方は父より働き過ぎです」
「ふふっ、そんなことないですよ」
(何だか蚊帳の外だな)
大総統は苦笑いしながらも雑談している2人を見つめる。
「あらあら、仲の良い兄弟ね」
「兄弟って」
「ロイさん。
お熱は下がりました?」
「はっ?
い、いえ…失礼しました。
熱は…下がりました」
「お母様、僕ではないのですから。
成人男性にお熱と聞くのは。
その、流石に失礼ですよ」
「ごめんなさいね。
セリムに聞く癖で」
「大丈夫…ですよ」
「笑うなら声を出しては?」
「ふはっ!
失礼しました」
笑って涙目になっているロイに苦笑いしてしまう。
「ロイさんは普通に食べれる?」
「…脂っこくなければ」
「分かったわ」
「パン粥のレシピと作り方、教えてもらえますか?」
「書いて渡すわ。
ロイさんなら、見本を見せなくても分かるでしょう?」
「そうですね。
ありがとうございます」
夫人に渡されたメモを確認してロイはポケットに入れた。