第54話
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ヒューズはため息をつき、ロイの頬を優しく撫でて苦笑いする。
「またおまえは…、そうやって言葉を飲み込む。
不満も全部言葉にしろって言ってんだよ」
「…これが初めてじゃない」
「なに?」
「記憶のピースがどっかに飛んで行くんだよ。
父の錬金術の後遺症か、私が無意識にしているのか。
イシュヴァールの記憶が徐々に。
私が焼き殺した者の顔や景色や臭い、それは嫌と言う程に濃厚に覚えてる。
忘れたい記憶、嫌な記憶は消えないのに。
思い出のピースだけが外れてゆく。
今度は私は何を失ったんだろうな、ヒューズ」
「なに、笑って…。
そんなこと一言も」
ロイは何事もないようにふわりと笑って窓の景色を眺めていた。
「おまえがそういう顔をするから」
「はっ?」
「マース・ヒューズ。
私は…、俺はおまえには同情して欲しくない」
「同情…なんて…っ」
ないとは言えずに言葉に詰まるヒューズにロイは苦笑いする。
「配慮してくれたのでしょう?
ですが、我々の仲にはそういう配慮は不要です。
中尉とセルシアは知っている」
「……っ…」
「そんな顔をするな、マース。
信頼してなかった訳じゃないさ。
言えなかったんだよ」
唇を噛み締めているヒューズに大総統が宥めるようにポンポンと肩を叩く。
「…おまえはずるい」
「ヒューズ中佐」
「同情はするかもしれねぇけどよ。
ずっと同情なんてしないから。
心配くらい、させろよ」
「悪かった」
ヒューズに抱き締められてロイは困ったように微かに笑う。
「…アップルパイ」
「はっ?」
「君は子供かね、ヒューズ中佐」
「ロイのアップルパイは別格です」
「ふはっ!
分かった、分かった。
アップルパイを作ろうか。
アイスクリームもトッピングしてあげよう」
クスクスと笑うロイにヒューズは苦笑いするしかない。
「…みんなの前から消えようかと思っていたんだ。
死ぬって意味じゃないぞ。
いつか、イシュヴァールの記憶のピースも失って何も分からなくなる前に。
脳も記憶力も異常なし。
一種のトラウマ、なんだろうな。
今は消えようとは思ってない。
そろそろカウンセリングが必要なんだろうか」
「カウンセリングって。
イシュヴァール戦に参加した軍人、士官学校の生徒や関係者もカウンセリングは受けているはずだろう」
「通常、ならば」
「まさか…っ」
「復興や人手不足を理由にされて、私はカウンセリングは形だけ。
カウンセリングのデータも改善されているはずだ」
「どうして言わなかった!」
「言ったところで何も変わらない。
それに、イシュヴァールの話などしたくもなかったし。
丁度いいと思っていた」
「…ロイ。
カウンセリングを受けなさい。
きちんと調べずに、確認しなかったのは私の責任だ」
大総統に頭を下げられて謝罪され、ロイは困り顔で違うと頭を振った。
軍医は黙ってロイの点滴の針を抜かれ、お礼を言ってベットに座る。
「…ロイ。
私は謝罪しか出来ないが。
そうなる前に、君の苦しみを表向きしか見ようとしなかった。
許してくれとは言わない。
そのキッカケは少なくとも私だ。
補佐官も階級も、何も変わらないから戻っておいで」
大総統に手を握られて涙を拭われ、ロイは小さく頷いた。
「怖いことは何もない。
1人が嫌なら私でもヒューズ中佐、中尉だって付き添う。
これは弱いことじゃない。
経験していないが、リーゼル大佐も君に頼られたら付き添うだろう」
「ロイだけにカウンセリングを受けさせたら目立ちますよね」
「一斉にカウンセリングをして。
イシュヴァールで引っ掛かったことにしてカウンセリング、治療を受けさせるのはどうだ?」
「迷惑掛ける訳には…っ」
「マスタング大将程でなくても、そういう風にされた奴がいるかもしれん。
そういう奴は同じようなことをするもんだ」
大総統も同じ意見なようで頷き、大総統の執務室に鍵を掛けて保管されていたカウンセリングが取り出された。
「君はほとんどカウンセリングは受けてないだろう。
どこが間違っている?」
「夜は眠れなかったし、幻覚も…聞こえてました。
助けてくれとイシュヴァールの方々が叫ぶ声が…していた」
「ゆっくり息を吐いて。
ほら、また過呼吸を起こす」
「思い出さなくていい。
飲み薬を飲もうか。
大総統、これ以上は危険だろう。
ドクターストップだ」
軍医に強めの睡眠薬を飲まされ、ロイはベットに寝かされて朦朧とする意識の中で不安から大総統の軍服を掴む。
「大丈夫だ。
傍にいるから。
何も心配せずに眠りなさい。
いい夢を…」
手で目を覆い、眠ったロイに大総統は額にキスする。
「ん…っ」
どのくらい経過したのか、外は暗くなっていて月と星が見えた。
医務室の固いベットからふかふかの大きなベットだと気づいた。
人の気配がしてロイは警戒したが、誰か分かると安堵の息を吐いた。
「…父様」
「起きたのか。
あぁ、私まで眠っていた。
熱はまだ高いな」
また連れて来られたことにも抱えられても起きなかったことにもロイは苦笑いする。
「リーゼル大佐は夜勤ではなかったんだが。
ああいう話をしたあとだ。
錯乱して仮に暴れたら、彼女では抑えられないと私達が判断した。
不満そうではあったが。
中尉に宥められて慰められてたよ」
今頃は中尉がブラハと泊まりに来ているのだろうなと想像がついた。
「少しは食べれるか?
飲み薬を飲まないと」
「睡眠薬は嫌だ」
「違うよ。
解熱剤だ。
疑うなら私も飲もう」
泣きそうな顔をするロイに苦笑いして抱き寄せた。
「大丈夫。
何も不安になることはない。
リゾットなら食べれるか?」
「…食べたくない」
「では、パン粥はどうだ?」
「パン粥…?」
キョトンとロイは不思議そうに首を傾げて見つめる。
「君は食べたことないか。
ミルクと食パンを煮込んで、甘さもあって食べやすいんだよ」
「父様も作れるんですか?」
「料理は苦手だか。
まぁ、それくらいなら」
「父様が作ってくれるなら食べる」
「…寝て待ってなさい」
ロイは頷いてベットに入り、時間が掛かるだろうなと微かに笑う。
「またおまえは…、そうやって言葉を飲み込む。
不満も全部言葉にしろって言ってんだよ」
「…これが初めてじゃない」
「なに?」
「記憶のピースがどっかに飛んで行くんだよ。
父の錬金術の後遺症か、私が無意識にしているのか。
イシュヴァールの記憶が徐々に。
私が焼き殺した者の顔や景色や臭い、それは嫌と言う程に濃厚に覚えてる。
忘れたい記憶、嫌な記憶は消えないのに。
思い出のピースだけが外れてゆく。
今度は私は何を失ったんだろうな、ヒューズ」
「なに、笑って…。
そんなこと一言も」
ロイは何事もないようにふわりと笑って窓の景色を眺めていた。
「おまえがそういう顔をするから」
「はっ?」
「マース・ヒューズ。
私は…、俺はおまえには同情して欲しくない」
「同情…なんて…っ」
ないとは言えずに言葉に詰まるヒューズにロイは苦笑いする。
「配慮してくれたのでしょう?
ですが、我々の仲にはそういう配慮は不要です。
中尉とセルシアは知っている」
「……っ…」
「そんな顔をするな、マース。
信頼してなかった訳じゃないさ。
言えなかったんだよ」
唇を噛み締めているヒューズに大総統が宥めるようにポンポンと肩を叩く。
「…おまえはずるい」
「ヒューズ中佐」
「同情はするかもしれねぇけどよ。
ずっと同情なんてしないから。
心配くらい、させろよ」
「悪かった」
ヒューズに抱き締められてロイは困ったように微かに笑う。
「…アップルパイ」
「はっ?」
「君は子供かね、ヒューズ中佐」
「ロイのアップルパイは別格です」
「ふはっ!
分かった、分かった。
アップルパイを作ろうか。
アイスクリームもトッピングしてあげよう」
クスクスと笑うロイにヒューズは苦笑いするしかない。
「…みんなの前から消えようかと思っていたんだ。
死ぬって意味じゃないぞ。
いつか、イシュヴァールの記憶のピースも失って何も分からなくなる前に。
脳も記憶力も異常なし。
一種のトラウマ、なんだろうな。
今は消えようとは思ってない。
そろそろカウンセリングが必要なんだろうか」
「カウンセリングって。
イシュヴァール戦に参加した軍人、士官学校の生徒や関係者もカウンセリングは受けているはずだろう」
「通常、ならば」
「まさか…っ」
「復興や人手不足を理由にされて、私はカウンセリングは形だけ。
カウンセリングのデータも改善されているはずだ」
「どうして言わなかった!」
「言ったところで何も変わらない。
それに、イシュヴァールの話などしたくもなかったし。
丁度いいと思っていた」
「…ロイ。
カウンセリングを受けなさい。
きちんと調べずに、確認しなかったのは私の責任だ」
大総統に頭を下げられて謝罪され、ロイは困り顔で違うと頭を振った。
軍医は黙ってロイの点滴の針を抜かれ、お礼を言ってベットに座る。
「…ロイ。
私は謝罪しか出来ないが。
そうなる前に、君の苦しみを表向きしか見ようとしなかった。
許してくれとは言わない。
そのキッカケは少なくとも私だ。
補佐官も階級も、何も変わらないから戻っておいで」
大総統に手を握られて涙を拭われ、ロイは小さく頷いた。
「怖いことは何もない。
1人が嫌なら私でもヒューズ中佐、中尉だって付き添う。
これは弱いことじゃない。
経験していないが、リーゼル大佐も君に頼られたら付き添うだろう」
「ロイだけにカウンセリングを受けさせたら目立ちますよね」
「一斉にカウンセリングをして。
イシュヴァールで引っ掛かったことにしてカウンセリング、治療を受けさせるのはどうだ?」
「迷惑掛ける訳には…っ」
「マスタング大将程でなくても、そういう風にされた奴がいるかもしれん。
そういう奴は同じようなことをするもんだ」
大総統も同じ意見なようで頷き、大総統の執務室に鍵を掛けて保管されていたカウンセリングが取り出された。
「君はほとんどカウンセリングは受けてないだろう。
どこが間違っている?」
「夜は眠れなかったし、幻覚も…聞こえてました。
助けてくれとイシュヴァールの方々が叫ぶ声が…していた」
「ゆっくり息を吐いて。
ほら、また過呼吸を起こす」
「思い出さなくていい。
飲み薬を飲もうか。
大総統、これ以上は危険だろう。
ドクターストップだ」
軍医に強めの睡眠薬を飲まされ、ロイはベットに寝かされて朦朧とする意識の中で不安から大総統の軍服を掴む。
「大丈夫だ。
傍にいるから。
何も心配せずに眠りなさい。
いい夢を…」
手で目を覆い、眠ったロイに大総統は額にキスする。
「ん…っ」
どのくらい経過したのか、外は暗くなっていて月と星が見えた。
医務室の固いベットからふかふかの大きなベットだと気づいた。
人の気配がしてロイは警戒したが、誰か分かると安堵の息を吐いた。
「…父様」
「起きたのか。
あぁ、私まで眠っていた。
熱はまだ高いな」
また連れて来られたことにも抱えられても起きなかったことにもロイは苦笑いする。
「リーゼル大佐は夜勤ではなかったんだが。
ああいう話をしたあとだ。
錯乱して仮に暴れたら、彼女では抑えられないと私達が判断した。
不満そうではあったが。
中尉に宥められて慰められてたよ」
今頃は中尉がブラハと泊まりに来ているのだろうなと想像がついた。
「少しは食べれるか?
飲み薬を飲まないと」
「睡眠薬は嫌だ」
「違うよ。
解熱剤だ。
疑うなら私も飲もう」
泣きそうな顔をするロイに苦笑いして抱き寄せた。
「大丈夫。
何も不安になることはない。
リゾットなら食べれるか?」
「…食べたくない」
「では、パン粥はどうだ?」
「パン粥…?」
キョトンとロイは不思議そうに首を傾げて見つめる。
「君は食べたことないか。
ミルクと食パンを煮込んで、甘さもあって食べやすいんだよ」
「父様も作れるんですか?」
「料理は苦手だか。
まぁ、それくらいなら」
「父様が作ってくれるなら食べる」
「…寝て待ってなさい」
ロイは頷いてベットに入り、時間が掛かるだろうなと微かに笑う。