第54話
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将軍達がきちんと仕事するようになったが、事件現場にはロイが出動する確率が高い。
そもそも現場に出てくる将軍の階級の者が珍しいのだが。
余程の世間を揺らがす難事件などは例外だが。
(…雨か。
肌寒いと思った)
雨音で早朝に目が覚めて嫌な気持ちになりながらも窓の外を視線だけ向ける。
憂鬱な気持ちに蓋をし、ロイは枕に顔を埋めて目を閉じても眠れそうにないと感じた。
『…雨ですね。
せっかく綺麗に咲いた花も散ってしまいますね』
「セルシア…」
『雨、苦手でしょう?』
「…イシュヴァールで雨が降った時は中止になっていた。
滅多になかったけれど。
胸がザワついて、時間が長く感じた。
殺さなくて済むのに。
安堵なんて出来なかった」
経験ない自分が何を言っても慰めることも出来ず、ロイもそれを望んでないのでセルシアは抱き締めた。
『…恵みの雨ですよ。
もう少し寝ましょうか。
次はきっといい夢を見ますよ。
おやすみなさい、ロイさん』
夢見が悪かったのかと理解しながら抱き締められて目を閉じた。
ロイの胸のザワつきが少しでも和らぎますようにと願いながらもセルシアも眠る。
朝食もほとんど口には出来ず、心配しながらもセルシアは指摘しない。
「大総統、おはようございます」
「おはよう。
何かあったか?」
「…何もないです」
微かな変化に違和感を大総統は感じていたのだろう。
外はまだ小雨が続いていて、初めて見る雨じゃないのに胸のザワつきが消えることがない。
(軍議がないだけマシか。
何をしているんだ、私は…)
仕事も集中が出来ずに事件の呼び出しがないだけマシかとため息をつく。
ぼんやりとしていて霧の中を歩いているような感覚だった。
(やば…ッ)
ズルズルと座り込んで不安と恐怖が交差する。
「ロイ!
大丈夫だ、落ち着きなさい。
ゆっくり息を吐こう」
「とう、さま…っ」
「息…吐けるか?」
「わかんな…っ」
「大丈夫だ。
このリズムに合わせて。
そう、ゆっくり息を吐いて」
過呼吸を起こしたロイを大総統が抱き締めてポンポンと背を叩く。
「はっ…ぁ…ッ」
「焦らなくていい。
慌てるな。
ゆっくりでいい」
「…父様」
「少し落ち着いたか。
顔色も戻って来た。
具合悪かったのか?」
「………。」
「夢見、良くなかったか?」
「…分かりません」
「雨、思い出すか?」
「今まで…そう思わなかった」
「考える時間がなかったんだ。
時間があると、無意識に考えてしまうのは悪いことじゃない。
もっと頼って良いんだ。
まだ若い君に傷を与え、傷つけてしまったのは事実だ。
恐怖も絶望も、沢山あっただろう」
大総統に抱き締められてロイの瞳から涙が静かに流れる。
雨の日は自分は戦えず、仲間も友も失うのが怖かったのかと今更ながらに実感した。
「君は無力じゃないよ。
まだ解決には至らないし、君の心の傷が癒える訳でもないだろう。
大切な人を自分だけで守ろうとしないでいいんだ。
それを分けてくれていいんだよ」
「…分ける?」
「そうだ、みんなに分けて。
みんなで分け合えばいい」
「そっ…か。
分けて、いいのか」
「これから覚えればいい。
こういう時こそ、頼って甘える時なんだよ」
何でもない時には出来てもロイは弱っている時に手を伸ばそうとはしない。
否、それさえも頭になくて出来ないのだろう。
「大丈夫。
傍にいるから眠りなさい。
何も悪いことは起きないから」
ロイの涙を拭い、大総統は優しく頭を撫でた。
「ロイっ!」
「ヒューズ中佐、静かに。
今眠ったとこだよ」
「安定剤は打った。
フラッシュバックに近い過呼吸と錯乱だった」
「な、んで…っ」
「平和になった時こそ、起きるんだ。
特にコイツの負担は大きかった。
それは深い傷になって刃が自分に向けられる。
正義感が強いこそ起きるんだ。
自分を無意識に責めて、攻め続けて疑問を投げ掛けて」
信頼していても年下の副官には知られたくないだろうと大総統は補佐官にヒューズを呼ぶように知らせた。
「…ヒューズ?」
「あぁ、起こしちまったか。
まだ眠ってていいぞ。
熱出て来たな」
「覚えているか?」
「……っ…」
「無理に思い出さなくていい。
頭痛が酷くなる」
「点滴が済んだら帰りなさい」
「倒れた…?」
「過呼吸を起こしたんだ。
誰も何も怒ってなどないよ。
頼って欲しかったとは思うが」
大総統はベットに腰掛けてロイの頭を撫でた。
「…過呼吸を起こしたのですか」
「それも覚えてないのか?」
「早朝は何をしていた?
今日の天気は?」
「雨、みたいですね」
医務室の窓から雨だと気づき、ロイは不思議そうに見つめる。
軍医が大総統に首を振って大総統は黙ってしまう。
「…封じ込めたな。
昨日の記憶はきちんとある。
早朝から倒れた時までの記憶が消えている」
「それは自分で?」
「無意識に拒絶したのだろう。
珍しくはない」
自分達が思っていた以上にロイの心は傷ついて、ボロボロだったんだろう。
「私は何かしたのか?
何か忘れているのか?」
「…ロイ。
今は何も考えなくていい」
「けれど!」
「ロイ、大丈夫だ」
「よくあることなんだ。
それで君は納得しないだろうが」
「私達は君に苦しませたくない。
苦しい記憶は封じてもいいんだよ」
不満に思いながらもロイはそれを言葉にしなかった。
そもそも現場に出てくる将軍の階級の者が珍しいのだが。
余程の世間を揺らがす難事件などは例外だが。
(…雨か。
肌寒いと思った)
雨音で早朝に目が覚めて嫌な気持ちになりながらも窓の外を視線だけ向ける。
憂鬱な気持ちに蓋をし、ロイは枕に顔を埋めて目を閉じても眠れそうにないと感じた。
『…雨ですね。
せっかく綺麗に咲いた花も散ってしまいますね』
「セルシア…」
『雨、苦手でしょう?』
「…イシュヴァールで雨が降った時は中止になっていた。
滅多になかったけれど。
胸がザワついて、時間が長く感じた。
殺さなくて済むのに。
安堵なんて出来なかった」
経験ない自分が何を言っても慰めることも出来ず、ロイもそれを望んでないのでセルシアは抱き締めた。
『…恵みの雨ですよ。
もう少し寝ましょうか。
次はきっといい夢を見ますよ。
おやすみなさい、ロイさん』
夢見が悪かったのかと理解しながら抱き締められて目を閉じた。
ロイの胸のザワつきが少しでも和らぎますようにと願いながらもセルシアも眠る。
朝食もほとんど口には出来ず、心配しながらもセルシアは指摘しない。
「大総統、おはようございます」
「おはよう。
何かあったか?」
「…何もないです」
微かな変化に違和感を大総統は感じていたのだろう。
外はまだ小雨が続いていて、初めて見る雨じゃないのに胸のザワつきが消えることがない。
(軍議がないだけマシか。
何をしているんだ、私は…)
仕事も集中が出来ずに事件の呼び出しがないだけマシかとため息をつく。
ぼんやりとしていて霧の中を歩いているような感覚だった。
(やば…ッ)
ズルズルと座り込んで不安と恐怖が交差する。
「ロイ!
大丈夫だ、落ち着きなさい。
ゆっくり息を吐こう」
「とう、さま…っ」
「息…吐けるか?」
「わかんな…っ」
「大丈夫だ。
このリズムに合わせて。
そう、ゆっくり息を吐いて」
過呼吸を起こしたロイを大総統が抱き締めてポンポンと背を叩く。
「はっ…ぁ…ッ」
「焦らなくていい。
慌てるな。
ゆっくりでいい」
「…父様」
「少し落ち着いたか。
顔色も戻って来た。
具合悪かったのか?」
「………。」
「夢見、良くなかったか?」
「…分かりません」
「雨、思い出すか?」
「今まで…そう思わなかった」
「考える時間がなかったんだ。
時間があると、無意識に考えてしまうのは悪いことじゃない。
もっと頼って良いんだ。
まだ若い君に傷を与え、傷つけてしまったのは事実だ。
恐怖も絶望も、沢山あっただろう」
大総統に抱き締められてロイの瞳から涙が静かに流れる。
雨の日は自分は戦えず、仲間も友も失うのが怖かったのかと今更ながらに実感した。
「君は無力じゃないよ。
まだ解決には至らないし、君の心の傷が癒える訳でもないだろう。
大切な人を自分だけで守ろうとしないでいいんだ。
それを分けてくれていいんだよ」
「…分ける?」
「そうだ、みんなに分けて。
みんなで分け合えばいい」
「そっ…か。
分けて、いいのか」
「これから覚えればいい。
こういう時こそ、頼って甘える時なんだよ」
何でもない時には出来てもロイは弱っている時に手を伸ばそうとはしない。
否、それさえも頭になくて出来ないのだろう。
「大丈夫。
傍にいるから眠りなさい。
何も悪いことは起きないから」
ロイの涙を拭い、大総統は優しく頭を撫でた。
「ロイっ!」
「ヒューズ中佐、静かに。
今眠ったとこだよ」
「安定剤は打った。
フラッシュバックに近い過呼吸と錯乱だった」
「な、んで…っ」
「平和になった時こそ、起きるんだ。
特にコイツの負担は大きかった。
それは深い傷になって刃が自分に向けられる。
正義感が強いこそ起きるんだ。
自分を無意識に責めて、攻め続けて疑問を投げ掛けて」
信頼していても年下の副官には知られたくないだろうと大総統は補佐官にヒューズを呼ぶように知らせた。
「…ヒューズ?」
「あぁ、起こしちまったか。
まだ眠ってていいぞ。
熱出て来たな」
「覚えているか?」
「……っ…」
「無理に思い出さなくていい。
頭痛が酷くなる」
「点滴が済んだら帰りなさい」
「倒れた…?」
「過呼吸を起こしたんだ。
誰も何も怒ってなどないよ。
頼って欲しかったとは思うが」
大総統はベットに腰掛けてロイの頭を撫でた。
「…過呼吸を起こしたのですか」
「それも覚えてないのか?」
「早朝は何をしていた?
今日の天気は?」
「雨、みたいですね」
医務室の窓から雨だと気づき、ロイは不思議そうに見つめる。
軍医が大総統に首を振って大総統は黙ってしまう。
「…封じ込めたな。
昨日の記憶はきちんとある。
早朝から倒れた時までの記憶が消えている」
「それは自分で?」
「無意識に拒絶したのだろう。
珍しくはない」
自分達が思っていた以上にロイの心は傷ついて、ボロボロだったんだろう。
「私は何かしたのか?
何か忘れているのか?」
「…ロイ。
今は何も考えなくていい」
「けれど!」
「ロイ、大丈夫だ」
「よくあることなんだ。
それで君は納得しないだろうが」
「私達は君に苦しませたくない。
苦しい記憶は封じてもいいんだよ」
不満に思いながらもロイはそれを言葉にしなかった。