第51話
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資料室から戻るとアームストロング少佐は勿論、ヒューズ中佐とマスタング大将に囲まれて悲鳴を上げそうになった。
「あ、あの…っ!
私は何かしたでしょうか?」
「マリア・ロス少尉。
頼みたいことがある」
「私に、ですか?」
「君の判断に従う。
断られても私は圧力を掛けるつもりもない」
「は、はぁ…」
「セルシア・リーゼル大佐の副官を探している。
君も知っているかと思うが、彼女は私以上に風向きが良くない。
若さもあるが、女のくせに国家錬金術師だと妬まれてる」
「女だろうと国家錬金術師は立派なお仕事です!」
「ふは…っ、失礼した。
ありがとう。
では、彼女を支えてくれる気は?」
「へっ?」
「言い方を変えよう。
マリア・ロス少尉。
私はセルシアの副官に君を推薦したいと思っている」
「えぇっ!?」
驚きの声を上げて後ろに下がったロス少尉は書類に躓いて転び、棚から書類が落ちた。
「し、失礼しました」
「…怪我はないかね」
「大丈夫です。
私は頑丈なんで!」
「そ、そうか…」
「そうではなくて。
私よりも立派な方がいるかと」
「国家錬金術師に対して否定的な意見も上官として見ている。
決断力も悪くないと聞いてる。
私もそうだが、妬まれるんだよ。
男性でも女性でもいい。
彼女の味方になるならば。
勿論、今すぐに答えは出さなくて構わないよ。
親孝行したいのだろう?
我々、国家錬金術師の副官は給料もいいぞ。
彼女はいずれ、私の隣に来る。
その意味を賢い君から分かるだろう。
良い答えを期待してるよ、マリア・ロス少尉」
ロイにポンポンと肩を叩かれて唖然としながらロス少尉は凝視する。
「何故…、ですか。
私は一般の特に能力のない軍人です」
「戦闘能力には期待してない。
国家錬金術師の彼女に勝てるなんて思ってないからな」
「ロイ、もう少し言葉を選んでやれって」
「…失礼。
私は彼女の味方になる副官を探している。
先程も言ったが、答えは今すぐは求めないよ。
断るにしても早急に頼むよ」
「わ、分かりました。
考えてみます」
「アームストロング少佐。
彼女のフォローを頼んだよ」
「承知しました」
「では、失礼するよ」
ロイは会議所から資料室に移動して必要な資料を手にする。
「…ロイ。
おまえ、わざと煽っただろ」
「何のことだ?」
「負けず嫌いで生真面目なマリア・ロス少尉には効果的だよな。
あまり虐めてやるなよ」
「人聞きが悪いな」
「まぁ、現状では最適な人材だよ」
「…適わないか」
「おまえさんと何年の付き合いだと思っているんだ。
ロイも言われたんだろう?」
「早急に見つけろと。
大総統にも言われたよ。
必要だし、邪魔する副官がいらないと言うセルシアの気持ちも分からなくはない」
「おまえの副官もリザちゃん以前は酷かったし、コロコロ変わってたよな」
引き受ける人が居なくなって部署は異なるが、特例として代理でヒューズが一緒にいたこともあった。
国家錬金術師であり、人柱候補のイシュヴァールの英雄を命の危険に晒したくなかったのだろう。
戸惑いの大きいロス少尉を宥めて説得するのも上官であるアームストロング少佐の役目だ。
「ロス少尉。
これは裏切りではないよ」
「ですが…っ」
「マスタング大将は君の能力を認めてくれたんだ。
人材不足でもそういう面でマスタング大将は判断しないお方だよ。
いつだって私は君の味方だ。
困ったらいつだって来なさい」
「アームストロング少佐」
「あとは君の判断だよ」
「…はい」
「決まったら聞かせておくれ」
「承知しました」
説得はしても無理強いはしたくはないのはアームストロング少佐の優しさだろう。
オリヴィエにはそこが甘いんだと苦言を言われるが。
「マスタング大将。
まだ彼女の副官は決まらないのかね」
「人手不足ですので」
「我々が探してやろうか?」
「結構です」
「好意を無駄にするものではないよ」
「大総統から直々に私が依頼されていますので。
では、失礼します」
舌打ちする将軍達を無視してロイは肩を叩く。
(無駄に力を込めやがって。
コレ、明日に痣になってないといいんだが)
ノックをして大総統の執務室に入ると自分の席に戻る。
「…ロイ」
「何でしょうか」
「また絡まれたか?
顔が険しいが」
「お気になさらず。
躾けられてない狗が吠えただけです」
「ふははっ!
そうか、それはご苦労だったな」
「リードを掴んでいてくださいよ」
「それは君にも?」
「私が躾けられてない狗だと?
御冗談でしょう」
「まぁ、探索癖はあるが」
「それはお互い様です」
微かに笑うロイに大総統は楽しそうに笑うだけだった。
「マスタング大将でなければ、許されない発言ですよね」
「分かって言ってるんだろうな」
補佐官達は呆れながらもそれを聞き流すしかない。
「そのくらいにしておきなさい」
「…分かっております」
「それならいい」
大総統に頬を撫でられて額にキスされ、ロイは瞬きする。
「おや。
可愛らしい反応をするね」
「大総統っ!」
「額は慣れないか?」
「…私はあんまりされないので」
「では、次から額にしようか」
「やめてください」
((マスタング大将。
それは大総統には逆効果です))
微かに頬を赤らめるロイに大総統は微笑んでいた。
(ふざけて酔っ払ったヒューズにされていたくらいで。
慰める時にマダムがたまに。
やっぱり、慣れない)
ため息をつくロイに大総統は楽しそうに笑うだけだった。
「マスタング大将も二日酔いですか?
書類が進んでいませんが」
「いや…、用事があって」
「それを正確に教えて頂いて宜しいですか?」
「え〜と…。
中尉、解除するな。
将軍達に絡まれて肩が…、ちょっ、脱がすな!」
「明日に痣になるのでは?
湿布、貰って来ましょうか?」
「…たいしたことない。
慣れている」
「痛みが和らいだら、早急にしてください」
(バレてるか。
まぁ、嘘は言ってないが)
中尉に脱がされた軍服の上着を着てロイは苦笑いする。
「中尉。
今日は久々に書類が多くないか?」
「誰かさんが酔い潰しましたから」
「…私は普通に飲んでたのに」
「分かっていたでしょう?
リーゼル大佐が絡まれたからなんでしょうけど」
(君を厭らしい目で見てた奴等もだけどな。
言うつもりないけど)
中尉に銃を向けられてロイは無言で万年筆を手にする。
-END-
2024.2.7
「あ、あの…っ!
私は何かしたでしょうか?」
「マリア・ロス少尉。
頼みたいことがある」
「私に、ですか?」
「君の判断に従う。
断られても私は圧力を掛けるつもりもない」
「は、はぁ…」
「セルシア・リーゼル大佐の副官を探している。
君も知っているかと思うが、彼女は私以上に風向きが良くない。
若さもあるが、女のくせに国家錬金術師だと妬まれてる」
「女だろうと国家錬金術師は立派なお仕事です!」
「ふは…っ、失礼した。
ありがとう。
では、彼女を支えてくれる気は?」
「へっ?」
「言い方を変えよう。
マリア・ロス少尉。
私はセルシアの副官に君を推薦したいと思っている」
「えぇっ!?」
驚きの声を上げて後ろに下がったロス少尉は書類に躓いて転び、棚から書類が落ちた。
「し、失礼しました」
「…怪我はないかね」
「大丈夫です。
私は頑丈なんで!」
「そ、そうか…」
「そうではなくて。
私よりも立派な方がいるかと」
「国家錬金術師に対して否定的な意見も上官として見ている。
決断力も悪くないと聞いてる。
私もそうだが、妬まれるんだよ。
男性でも女性でもいい。
彼女の味方になるならば。
勿論、今すぐに答えは出さなくて構わないよ。
親孝行したいのだろう?
我々、国家錬金術師の副官は給料もいいぞ。
彼女はいずれ、私の隣に来る。
その意味を賢い君から分かるだろう。
良い答えを期待してるよ、マリア・ロス少尉」
ロイにポンポンと肩を叩かれて唖然としながらロス少尉は凝視する。
「何故…、ですか。
私は一般の特に能力のない軍人です」
「戦闘能力には期待してない。
国家錬金術師の彼女に勝てるなんて思ってないからな」
「ロイ、もう少し言葉を選んでやれって」
「…失礼。
私は彼女の味方になる副官を探している。
先程も言ったが、答えは今すぐは求めないよ。
断るにしても早急に頼むよ」
「わ、分かりました。
考えてみます」
「アームストロング少佐。
彼女のフォローを頼んだよ」
「承知しました」
「では、失礼するよ」
ロイは会議所から資料室に移動して必要な資料を手にする。
「…ロイ。
おまえ、わざと煽っただろ」
「何のことだ?」
「負けず嫌いで生真面目なマリア・ロス少尉には効果的だよな。
あまり虐めてやるなよ」
「人聞きが悪いな」
「まぁ、現状では最適な人材だよ」
「…適わないか」
「おまえさんと何年の付き合いだと思っているんだ。
ロイも言われたんだろう?」
「早急に見つけろと。
大総統にも言われたよ。
必要だし、邪魔する副官がいらないと言うセルシアの気持ちも分からなくはない」
「おまえの副官もリザちゃん以前は酷かったし、コロコロ変わってたよな」
引き受ける人が居なくなって部署は異なるが、特例として代理でヒューズが一緒にいたこともあった。
国家錬金術師であり、人柱候補のイシュヴァールの英雄を命の危険に晒したくなかったのだろう。
戸惑いの大きいロス少尉を宥めて説得するのも上官であるアームストロング少佐の役目だ。
「ロス少尉。
これは裏切りではないよ」
「ですが…っ」
「マスタング大将は君の能力を認めてくれたんだ。
人材不足でもそういう面でマスタング大将は判断しないお方だよ。
いつだって私は君の味方だ。
困ったらいつだって来なさい」
「アームストロング少佐」
「あとは君の判断だよ」
「…はい」
「決まったら聞かせておくれ」
「承知しました」
説得はしても無理強いはしたくはないのはアームストロング少佐の優しさだろう。
オリヴィエにはそこが甘いんだと苦言を言われるが。
「マスタング大将。
まだ彼女の副官は決まらないのかね」
「人手不足ですので」
「我々が探してやろうか?」
「結構です」
「好意を無駄にするものではないよ」
「大総統から直々に私が依頼されていますので。
では、失礼します」
舌打ちする将軍達を無視してロイは肩を叩く。
(無駄に力を込めやがって。
コレ、明日に痣になってないといいんだが)
ノックをして大総統の執務室に入ると自分の席に戻る。
「…ロイ」
「何でしょうか」
「また絡まれたか?
顔が険しいが」
「お気になさらず。
躾けられてない狗が吠えただけです」
「ふははっ!
そうか、それはご苦労だったな」
「リードを掴んでいてくださいよ」
「それは君にも?」
「私が躾けられてない狗だと?
御冗談でしょう」
「まぁ、探索癖はあるが」
「それはお互い様です」
微かに笑うロイに大総統は楽しそうに笑うだけだった。
「マスタング大将でなければ、許されない発言ですよね」
「分かって言ってるんだろうな」
補佐官達は呆れながらもそれを聞き流すしかない。
「そのくらいにしておきなさい」
「…分かっております」
「それならいい」
大総統に頬を撫でられて額にキスされ、ロイは瞬きする。
「おや。
可愛らしい反応をするね」
「大総統っ!」
「額は慣れないか?」
「…私はあんまりされないので」
「では、次から額にしようか」
「やめてください」
((マスタング大将。
それは大総統には逆効果です))
微かに頬を赤らめるロイに大総統は微笑んでいた。
(ふざけて酔っ払ったヒューズにされていたくらいで。
慰める時にマダムがたまに。
やっぱり、慣れない)
ため息をつくロイに大総統は楽しそうに笑うだけだった。
「マスタング大将も二日酔いですか?
書類が進んでいませんが」
「いや…、用事があって」
「それを正確に教えて頂いて宜しいですか?」
「え〜と…。
中尉、解除するな。
将軍達に絡まれて肩が…、ちょっ、脱がすな!」
「明日に痣になるのでは?
湿布、貰って来ましょうか?」
「…たいしたことない。
慣れている」
「痛みが和らいだら、早急にしてください」
(バレてるか。
まぁ、嘘は言ってないが)
中尉に脱がされた軍服の上着を着てロイは苦笑いする。
「中尉。
今日は久々に書類が多くないか?」
「誰かさんが酔い潰しましたから」
「…私は普通に飲んでたのに」
「分かっていたでしょう?
リーゼル大佐が絡まれたからなんでしょうけど」
(君を厭らしい目で見てた奴等もだけどな。
言うつもりないけど)
中尉に銃を向けられてロイは無言で万年筆を手にする。
-END-
2024.2.7