第51話
夢小説設定
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戦闘能力以外のものを文字にするのは大変だが、ロイは毎年のように丁寧に査定していた。
それでいて目立たせ過ぎて意地悪されないように配慮しながらも。
「おめでとう!」
「やったな。
ファルマン、フュリー!」
「フュリーも尉官だな」
「はいっ!
ありがとうございます!」
「新しい肩章だ。
取り外し方は分かるか?」
「私は大丈夫です」
「ヒュリーは?
分からなくても恥ではないぞ」
「…以前に先輩がしてくれて」
中尉にロイは視線を送り、ヒュリーに教えるように合図して中尉が頷く。
「ヒュリー少尉。
こちらに来なさい。
式典の時にも肩章を取り外すから、覚えておくように」
「はい!」
ロイはふわりと笑い、呼びに来た補佐官と執務室から出て行った。
「マスタング大将」
「…お久しぶりです」
「今日は随分と匂いが強いな」
「そう、ですか?」
薔薇風呂に入ったとは言わずに笑顔で惚けるが、そんなもので将軍は誤魔化されてはくれないだろう。
匂いが強いと言っても食事の邪魔になるような香りではない。
普段からロイは香水を愛用しているので将軍の妬みゆえの嫌がらせだ。
((…また始まったよ))
そう思いながらも将軍クラスに下官が口出しは出来ずに見て見ぬフリするしかない。
妬みゆえにもっとやれと思っている者達が少なく居るのも事実だ。
「脱いだ方が良いのではないかね。
自分の実力に合った地位に」
「……っ…」
「君は顔色ひとつ変えないんだな」
「何をしている!」
「大総統!?
いえ、私は何も…」
「その手に持っている万年筆は何だね?」
「それは…っ」
「ロイ、何をされた?
言いなさい。
大総統に逆らうか?」
「…万年筆を手に当てられました」
大総統は顔を歪め、将軍を睨みつけてロイの手を掴む。
発火布に血が微かに滲んでいて顔が険しくなる。
「来るのが遅くなってすまないな。
連れて行け」
「はっ!」
「私は何もしてない!
マスタング大将の罠だ!」
「黙って歩け!」
絡まれた途端に補佐官が大総統を呼びに行き、大総統もわざと命令と言ったのだろう。
「まずは手当てしよう。
痛むだろう?」
「たいしたことありません」
「最近は負傷ばかりだな」
「…父様」
「ほら、おいで」
呟いたロイに大総統は手を引いて医務室に連れて行く。
「またやられたのか。
あんたも抵抗すればいいだろうよ、マスタング大将」
「…抵抗すれば酷くなるだけだ」
軍医に叱られながらロイは気まずそうに目を反らす。
「自分の地位を利用しろと言ってんだよ。
妙なとこで生真面目だな。
アイツ以外にほかにもされてるんじゃないか?」
「何だと?」
「ほら、軍服を脱げ」
軍医は舌打ちし、大総統に視線で合図を送る。
「やだっ…父様!」
「すまんな」
「やめ…ッ」
「随分とやられてるな。
この痕は殴られたんだろ」
半ば強制的に軍医と大総統に軍服の上着とYシャツを脱がされた。
説教しながらも軍医の手当ては優しく、必要以上には聞かない。
ため息はつかれたが、渋々ながらも大総統も諦めてくれた。
万年筆を忘れたことを思い出してロイは執務室に戻る。
「失礼するよ。
中尉、私の万年筆を見なかったか?」
「今届けようかと。
こちらに…」
「ありがとう。
何をしているんだ?」
「尉官は筆記試験が控えてますから」
「筆記試験は?」
「マスタング大将だって。
経験あるでしょう!?」
ハボックの言葉にロイはキョトンと不思議そうに見つめる。
「私は士官学校は首席卒業だし、国家錬金術師だったから。
尉官の経験はなくて」
困り顔でロイは後ろにいる大総統をチラッと見る。
「下官は定期的に試験がある。
実技や筆記など」
「そうなんですか」
「佐官クラスはないんですか?」
「私は受けたことがないな」
『私は何度かしましたが。
不定期でしたよ』
「ロイはエリート組と言われてる特別枠の首席卒だから免除されるんだよ」
「これだから…っ、一般の軍人の気持ちなんてわからないんですよ」
「ハボック少尉!」
「この時期、いつものことですから気にしないでください」
「暗算と暗記か。
暗記はまだ良いとしても」
「毎年不合格ラインのギリギリですよ!」
ロイは練習問題を手にして万年筆でサラサラと書いている。
「はっや!」
「この問題を集中的にしろ。
おまえが苦手な問題はこの辺りだな」
「それも分かるんですか」
「大体だが。
特におまえは引っ掛け問題にやられるからな。
問題文をよく見れば、そこにヒントがあるんだよ」
「ヒント…?」
「正解が隠されてる訳じゃないさ。
引っ掛け問題は大抵は似たような文面だからな」
「それが分かれば、苦労しないっス」
「よく見ろって。
ほかの文と違うとこがある」
もう無理だと半泣きのハボックを宥めなだからロイは教える。
「…まるで家庭教師だな」
「ハボックに至っては。
計算問題は苦手なんですよ。
いつもああやってマスタング大将が向き合ってくれてます。
あんな風に向き合ってくれる上官、マスタング大将以外に居ませんよ」
「そうか。
我が子は上官としてもそれは優秀なようだな」
「えぇ、それは素晴らしく」
大総統にも慣れつつあり、ブレダは雑談にも付き合う。
「そのくらいにしないと君の場合は疑われるからね」
「…っと」
「マスタング大将。
今回は期待しててくださいね!」
「分かりやすい奴だ」
ロイは楽しそうに笑い、ハボックの頭を撫でた。
予想以上にハードルは高くて赤点ギリギリでハボックらしいと苦笑いしてしまう。
「…すみませんでした」
「よく解けてるじゃないか」
「えっ?」
「苦手だった計算、出来るようになってるじゃないか。
「で、でも…」
「最初から制限時間までに出来るとは思ってないさ。
計算問題は慣れだ」
「マスタング大将。
ありがとうございます!」
((…飼い主と大型犬))
ブンブンと尻尾を振っている姿が浮かんでしまった。
それでいて目立たせ過ぎて意地悪されないように配慮しながらも。
「おめでとう!」
「やったな。
ファルマン、フュリー!」
「フュリーも尉官だな」
「はいっ!
ありがとうございます!」
「新しい肩章だ。
取り外し方は分かるか?」
「私は大丈夫です」
「ヒュリーは?
分からなくても恥ではないぞ」
「…以前に先輩がしてくれて」
中尉にロイは視線を送り、ヒュリーに教えるように合図して中尉が頷く。
「ヒュリー少尉。
こちらに来なさい。
式典の時にも肩章を取り外すから、覚えておくように」
「はい!」
ロイはふわりと笑い、呼びに来た補佐官と執務室から出て行った。
「マスタング大将」
「…お久しぶりです」
「今日は随分と匂いが強いな」
「そう、ですか?」
薔薇風呂に入ったとは言わずに笑顔で惚けるが、そんなもので将軍は誤魔化されてはくれないだろう。
匂いが強いと言っても食事の邪魔になるような香りではない。
普段からロイは香水を愛用しているので将軍の妬みゆえの嫌がらせだ。
((…また始まったよ))
そう思いながらも将軍クラスに下官が口出しは出来ずに見て見ぬフリするしかない。
妬みゆえにもっとやれと思っている者達が少なく居るのも事実だ。
「脱いだ方が良いのではないかね。
自分の実力に合った地位に」
「……っ…」
「君は顔色ひとつ変えないんだな」
「何をしている!」
「大総統!?
いえ、私は何も…」
「その手に持っている万年筆は何だね?」
「それは…っ」
「ロイ、何をされた?
言いなさい。
大総統に逆らうか?」
「…万年筆を手に当てられました」
大総統は顔を歪め、将軍を睨みつけてロイの手を掴む。
発火布に血が微かに滲んでいて顔が険しくなる。
「来るのが遅くなってすまないな。
連れて行け」
「はっ!」
「私は何もしてない!
マスタング大将の罠だ!」
「黙って歩け!」
絡まれた途端に補佐官が大総統を呼びに行き、大総統もわざと命令と言ったのだろう。
「まずは手当てしよう。
痛むだろう?」
「たいしたことありません」
「最近は負傷ばかりだな」
「…父様」
「ほら、おいで」
呟いたロイに大総統は手を引いて医務室に連れて行く。
「またやられたのか。
あんたも抵抗すればいいだろうよ、マスタング大将」
「…抵抗すれば酷くなるだけだ」
軍医に叱られながらロイは気まずそうに目を反らす。
「自分の地位を利用しろと言ってんだよ。
妙なとこで生真面目だな。
アイツ以外にほかにもされてるんじゃないか?」
「何だと?」
「ほら、軍服を脱げ」
軍医は舌打ちし、大総統に視線で合図を送る。
「やだっ…父様!」
「すまんな」
「やめ…ッ」
「随分とやられてるな。
この痕は殴られたんだろ」
半ば強制的に軍医と大総統に軍服の上着とYシャツを脱がされた。
説教しながらも軍医の手当ては優しく、必要以上には聞かない。
ため息はつかれたが、渋々ながらも大総統も諦めてくれた。
万年筆を忘れたことを思い出してロイは執務室に戻る。
「失礼するよ。
中尉、私の万年筆を見なかったか?」
「今届けようかと。
こちらに…」
「ありがとう。
何をしているんだ?」
「尉官は筆記試験が控えてますから」
「筆記試験は?」
「マスタング大将だって。
経験あるでしょう!?」
ハボックの言葉にロイはキョトンと不思議そうに見つめる。
「私は士官学校は首席卒業だし、国家錬金術師だったから。
尉官の経験はなくて」
困り顔でロイは後ろにいる大総統をチラッと見る。
「下官は定期的に試験がある。
実技や筆記など」
「そうなんですか」
「佐官クラスはないんですか?」
「私は受けたことがないな」
『私は何度かしましたが。
不定期でしたよ』
「ロイはエリート組と言われてる特別枠の首席卒だから免除されるんだよ」
「これだから…っ、一般の軍人の気持ちなんてわからないんですよ」
「ハボック少尉!」
「この時期、いつものことですから気にしないでください」
「暗算と暗記か。
暗記はまだ良いとしても」
「毎年不合格ラインのギリギリですよ!」
ロイは練習問題を手にして万年筆でサラサラと書いている。
「はっや!」
「この問題を集中的にしろ。
おまえが苦手な問題はこの辺りだな」
「それも分かるんですか」
「大体だが。
特におまえは引っ掛け問題にやられるからな。
問題文をよく見れば、そこにヒントがあるんだよ」
「ヒント…?」
「正解が隠されてる訳じゃないさ。
引っ掛け問題は大抵は似たような文面だからな」
「それが分かれば、苦労しないっス」
「よく見ろって。
ほかの文と違うとこがある」
もう無理だと半泣きのハボックを宥めなだからロイは教える。
「…まるで家庭教師だな」
「ハボックに至っては。
計算問題は苦手なんですよ。
いつもああやってマスタング大将が向き合ってくれてます。
あんな風に向き合ってくれる上官、マスタング大将以外に居ませんよ」
「そうか。
我が子は上官としてもそれは優秀なようだな」
「えぇ、それは素晴らしく」
大総統にも慣れつつあり、ブレダは雑談にも付き合う。
「そのくらいにしないと君の場合は疑われるからね」
「…っと」
「マスタング大将。
今回は期待しててくださいね!」
「分かりやすい奴だ」
ロイは楽しそうに笑い、ハボックの頭を撫でた。
予想以上にハードルは高くて赤点ギリギリでハボックらしいと苦笑いしてしまう。
「…すみませんでした」
「よく解けてるじゃないか」
「えっ?」
「苦手だった計算、出来るようになってるじゃないか。
「で、でも…」
「最初から制限時間までに出来るとは思ってないさ。
計算問題は慣れだ」
「マスタング大将。
ありがとうございます!」
((…飼い主と大型犬))
ブンブンと尻尾を振っている姿が浮かんでしまった。