第46話
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エリシアが眠ってグレイシアは席を外していて、アームストロング少佐は聞いてないフリをしている。
「見たら燃やす。
覚えたか?」
「あぁ、調べてたのか?」
「…マスタング中将」
「危険なことはしていない。
調べてはないが、隠そうとするのならば怪しいのは分かるだろう。
正直、そこに何があるのか分からん」
「そんな話を…、ここでして大丈夫なのか?」
「ヒュリーにすべての通信を切り、並びに妨害工作をしてもらっている。
ほかにも妨害工作はアームストロング少佐の協力の元、させて頂いている。
疑われるのも狙われるのも私だろうからね」
「俺達の為に“人質”になろうとしてないよな?」
「この私が軍の人質で大人しくしているとでも?
裏から十分な程に掻き回してやるさ」
「でも、そうしたら…」
「なんだ?」
「まだ大総統が敵か分かんないけど」
「別れるって?
大総統にはいずれ、君を裏切るだろうと言われている。
どういう意図があるか分からんが。
どっちにしても、私とあの人では考え方も正義も違う。
どちらが正しいなんてないさ。
頂点に立てる者が“正義”になる」
「…それなのに傍にいるのか」
「父のように慕っているのは事実かもしれん。
だが、私の正義に反するならば、死別さえも覚悟している。
そういう“取引”だった」
「少なくても大総統は…、あんたを本当に息子と思っているよ。
じゃなければ、敵なのに忠告しないだろ。
いや、まだ敵か分からないけど」
ロイは不器用なエドの気遣いに苦笑いを浮かべてエドの頭を優しく撫でる。
「生きろよ、エルリック兄弟。
私の願いはそれだけだ」
「死ぬもんかよ」
「はい、マスタング中将も」
「ありがとう」
アルと握手を交わしてヒュリーに合図を送り、別荘から出て行くエルリック兄弟の後ろ姿を見つめる。
「…ロイ」
「おまえは着いて来なくて良い。
妻子を守れ」
「冗談じゃない。
ここまで巻き込んでいて。
グレイシアもそこまで弱くはない。
俺は“現場”には行かないが、おまえを支援してやるよ。
最後まで支えてやるさ。
だから、頼むから無茶はしてもいいから生きろよ。
誰かの為に命を差し出すな」
「あぁ、分かっている」
ヒューズに抱擁されてロイはクスクスと笑う。
『…ロイさん。
私はいつでも一緒ですよ。
地獄にだって堕ちに行きますよ』
「えぇ、貴方と共に」
「セルシアも中尉も物騒だな」
「いつでもご命令を」
「覚悟はしております」
「ありがとう。
まだ私は動かない」
「俺等はいつでも動けますよ」
「そのつもりだ」
微かにロイは笑みを浮かべてハボック達を見て頷いた。
「バレたら隊は解体ですかね」
「安心しろ。
それも“契約”に入っている」
「完全に敵になるまでは安心ってことですか」
『隊を解体されたら、呆れるまで大暴れしますから。
地獄の扉だって突き破って貴方を迎えに行きますよ』
「…君が言うと恐ろしいな」
絶対に被害者が出るなと想像がついて苦笑いする。
『それまで鍛えておかないとダメですね』
「本格化する前に“保護”するべきだろうな。
人質にされてはたまらない」
『私が行きますよ。
ロイさんは今は疑われないようにした方がいいでしょう?』
「あぁ、こちらも準備しておこう」
((…何で伝わるんですか))
自分達よりも付き合いが浅いはずなのに頭脳の差なのか、会話が成立している様子にハボック達は苦笑いするしかない。
表向きにはセルシアは有休で“両親の墓参りついでに寄った”ことになっている。
「ウィンリィだけを連れて行ってください」
「ばっちゃん!」
「私はここから離れない。
それに、私は年寄りだ。
逃げる時に足手まといになる。
地元を捨てて軍人に世話になる程、衰えてはおらん。
私はまだ健在さ。
どんな者が来ようとも。
ウィンリィ、必ず戻って来るんだよ。
別れじゃないさ」
「…うん」
手短に必要最低限の荷物を持ってピナコと抱擁をし、泣きそうになりながらも家を出た。
「ウィンリィ。
急かして疲れただろう。
理由を話せずにすまない」
「話したら私が巻き込まれるからでしょう?」
「君は静養でここに来た。
軍医だった者達が訪ねて来る」
「…分かりました。
どうか、ご無事で」
「ありがとう。
また会おう。
しばらくは不自由な生活になるだろうが」
「私が足枷になるくらいなら、それくらいは我慢します」
ウィンリィと抱擁してロイは微かに笑みを浮かべた。
「マスタング中将。
出世もですが、随分と変わったようですね」
「誰ですか?」
「イシュヴァール戦で私の部下だった者だ。
見た目は良くないが、信頼していい」
「お義父さん以上に信頼は出来ませんが、信用はします」
「いい子だ」
「マスタング中将。
いつ子供が?」
「隠し子ですか?」
ロイに無言で頭を叩かれ、そうなるだろうなとウィンリィは苦笑い。
「…マスタング中将。
そろそろ時間です」
「あぁ、分かった。
何かあれば連絡を」
ロイは黒のロングコートを着込み、フードを深々と被る。
「ロイ様、もう帰るのですか?
外は寒いですから、スープでも…」
「いや、今日は…」
「大丈夫ですよ。
ウィンリィちゃんも一緒に食べたいでしょうから」
「中尉も食べなさい。
久々に一緒に食べようか」
「分かりました」
「久々で嬉しいです」
「これが解決して落ち着いたら、のんびり食事しようか」
「お義父さんの手料理がいいです」
「あぁ、約束しよう」
「だから、どうか無事に帰って来てください。
リザさんもセルシアさんも、ヒューズ中佐も」
「君の元に帰って来るよ。
必ずとは約束は出来ないけど」
「…はい」
ロイに抱き締められてウィンリィは甘えるように抱きついた。
ウィルから遺されていた屋敷にウィンリィは保護されていた。
「…ロイ。
私は明日からしばらく留守にする」
「留守、ですか?」
「中央以外の司令部の視察に行って来る。
何かあれば、連絡してくれ」
「分かりました」
今まであっただろうかと思いながらもこれがチャンスなのか分からないが、今は動くべきではないだろうと考え直す。
(焦るべきではない。
今はまだその時期ではない)
ロイは閣下の居ない執務室の自分の席で座りながらも目を閉じた。
(軍部がピリついている。
上層部の奴等が嫌味を言わない程に。
大総統、貴方は私の元から消えるつもりですか?)
大総統の机に触れてロイは深いため息をつく。
「そんな顔をしないでくれ。
寂しいなら君も来るかい?」
「…大総統」
「不定期な視察だ」
「父様…、治安が不安定です。
どうかご無事で」
「私が消えたら君も嬉しいのではないのかい?」
「父様っ!」
涙目で咎められて大総統は苦笑いしてロイを抱擁する。
「…まだ別れたくはないです」
「あぁ、気をつけるよ」
ぎゅうっと抱きつかれて大総統はロイの頭を優しく撫でた。
-END-
2024.1.16
「見たら燃やす。
覚えたか?」
「あぁ、調べてたのか?」
「…マスタング中将」
「危険なことはしていない。
調べてはないが、隠そうとするのならば怪しいのは分かるだろう。
正直、そこに何があるのか分からん」
「そんな話を…、ここでして大丈夫なのか?」
「ヒュリーにすべての通信を切り、並びに妨害工作をしてもらっている。
ほかにも妨害工作はアームストロング少佐の協力の元、させて頂いている。
疑われるのも狙われるのも私だろうからね」
「俺達の為に“人質”になろうとしてないよな?」
「この私が軍の人質で大人しくしているとでも?
裏から十分な程に掻き回してやるさ」
「でも、そうしたら…」
「なんだ?」
「まだ大総統が敵か分かんないけど」
「別れるって?
大総統にはいずれ、君を裏切るだろうと言われている。
どういう意図があるか分からんが。
どっちにしても、私とあの人では考え方も正義も違う。
どちらが正しいなんてないさ。
頂点に立てる者が“正義”になる」
「…それなのに傍にいるのか」
「父のように慕っているのは事実かもしれん。
だが、私の正義に反するならば、死別さえも覚悟している。
そういう“取引”だった」
「少なくても大総統は…、あんたを本当に息子と思っているよ。
じゃなければ、敵なのに忠告しないだろ。
いや、まだ敵か分からないけど」
ロイは不器用なエドの気遣いに苦笑いを浮かべてエドの頭を優しく撫でる。
「生きろよ、エルリック兄弟。
私の願いはそれだけだ」
「死ぬもんかよ」
「はい、マスタング中将も」
「ありがとう」
アルと握手を交わしてヒュリーに合図を送り、別荘から出て行くエルリック兄弟の後ろ姿を見つめる。
「…ロイ」
「おまえは着いて来なくて良い。
妻子を守れ」
「冗談じゃない。
ここまで巻き込んでいて。
グレイシアもそこまで弱くはない。
俺は“現場”には行かないが、おまえを支援してやるよ。
最後まで支えてやるさ。
だから、頼むから無茶はしてもいいから生きろよ。
誰かの為に命を差し出すな」
「あぁ、分かっている」
ヒューズに抱擁されてロイはクスクスと笑う。
『…ロイさん。
私はいつでも一緒ですよ。
地獄にだって堕ちに行きますよ』
「えぇ、貴方と共に」
「セルシアも中尉も物騒だな」
「いつでもご命令を」
「覚悟はしております」
「ありがとう。
まだ私は動かない」
「俺等はいつでも動けますよ」
「そのつもりだ」
微かにロイは笑みを浮かべてハボック達を見て頷いた。
「バレたら隊は解体ですかね」
「安心しろ。
それも“契約”に入っている」
「完全に敵になるまでは安心ってことですか」
『隊を解体されたら、呆れるまで大暴れしますから。
地獄の扉だって突き破って貴方を迎えに行きますよ』
「…君が言うと恐ろしいな」
絶対に被害者が出るなと想像がついて苦笑いする。
『それまで鍛えておかないとダメですね』
「本格化する前に“保護”するべきだろうな。
人質にされてはたまらない」
『私が行きますよ。
ロイさんは今は疑われないようにした方がいいでしょう?』
「あぁ、こちらも準備しておこう」
((…何で伝わるんですか))
自分達よりも付き合いが浅いはずなのに頭脳の差なのか、会話が成立している様子にハボック達は苦笑いするしかない。
表向きにはセルシアは有休で“両親の墓参りついでに寄った”ことになっている。
「ウィンリィだけを連れて行ってください」
「ばっちゃん!」
「私はここから離れない。
それに、私は年寄りだ。
逃げる時に足手まといになる。
地元を捨てて軍人に世話になる程、衰えてはおらん。
私はまだ健在さ。
どんな者が来ようとも。
ウィンリィ、必ず戻って来るんだよ。
別れじゃないさ」
「…うん」
手短に必要最低限の荷物を持ってピナコと抱擁をし、泣きそうになりながらも家を出た。
「ウィンリィ。
急かして疲れただろう。
理由を話せずにすまない」
「話したら私が巻き込まれるからでしょう?」
「君は静養でここに来た。
軍医だった者達が訪ねて来る」
「…分かりました。
どうか、ご無事で」
「ありがとう。
また会おう。
しばらくは不自由な生活になるだろうが」
「私が足枷になるくらいなら、それくらいは我慢します」
ウィンリィと抱擁してロイは微かに笑みを浮かべた。
「マスタング中将。
出世もですが、随分と変わったようですね」
「誰ですか?」
「イシュヴァール戦で私の部下だった者だ。
見た目は良くないが、信頼していい」
「お義父さん以上に信頼は出来ませんが、信用はします」
「いい子だ」
「マスタング中将。
いつ子供が?」
「隠し子ですか?」
ロイに無言で頭を叩かれ、そうなるだろうなとウィンリィは苦笑い。
「…マスタング中将。
そろそろ時間です」
「あぁ、分かった。
何かあれば連絡を」
ロイは黒のロングコートを着込み、フードを深々と被る。
「ロイ様、もう帰るのですか?
外は寒いですから、スープでも…」
「いや、今日は…」
「大丈夫ですよ。
ウィンリィちゃんも一緒に食べたいでしょうから」
「中尉も食べなさい。
久々に一緒に食べようか」
「分かりました」
「久々で嬉しいです」
「これが解決して落ち着いたら、のんびり食事しようか」
「お義父さんの手料理がいいです」
「あぁ、約束しよう」
「だから、どうか無事に帰って来てください。
リザさんもセルシアさんも、ヒューズ中佐も」
「君の元に帰って来るよ。
必ずとは約束は出来ないけど」
「…はい」
ロイに抱き締められてウィンリィは甘えるように抱きついた。
ウィルから遺されていた屋敷にウィンリィは保護されていた。
「…ロイ。
私は明日からしばらく留守にする」
「留守、ですか?」
「中央以外の司令部の視察に行って来る。
何かあれば、連絡してくれ」
「分かりました」
今まであっただろうかと思いながらもこれがチャンスなのか分からないが、今は動くべきではないだろうと考え直す。
(焦るべきではない。
今はまだその時期ではない)
ロイは閣下の居ない執務室の自分の席で座りながらも目を閉じた。
(軍部がピリついている。
上層部の奴等が嫌味を言わない程に。
大総統、貴方は私の元から消えるつもりですか?)
大総統の机に触れてロイは深いため息をつく。
「そんな顔をしないでくれ。
寂しいなら君も来るかい?」
「…大総統」
「不定期な視察だ」
「父様…、治安が不安定です。
どうかご無事で」
「私が消えたら君も嬉しいのではないのかい?」
「父様っ!」
涙目で咎められて大総統は苦笑いしてロイを抱擁する。
「…まだ別れたくはないです」
「あぁ、気をつけるよ」
ぎゅうっと抱きつかれて大総統はロイの頭を優しく撫でた。
-END-
2024.1.16