第45話
夢小説設定
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顔が強張っているロイに閣下は苦笑いして頬を撫でる。
「あの時も言ったが、断っても変わらんよ。
そんな緊張しないでくれ」
「…はい。
何度も考えました。
今も正直、悩んでいます。
自分の中で答えを出したはずなのに。
どちらを選んでもきっと悩む」
「君の判断に従うよ。
悩ませているのは承知している」
「本当に私で宜しいのですか?
何回も聞いていますが、私は軍人で国家錬金術師です」
「分かっているよ。
君だから良いんだ、ロイ。
妻とも何度もコレに関しては話し合ったんだ」
「マスタングさん。
いえ、ロイさん。
貴方を私は信頼します。
夫が信頼しているからじゃないわ。
私が貴方なら信頼してもいいと思いました。
酷な決断をさせると理解してます」
「…奥様」
「貴方には辛い思いをさせて、ごめんなさいね」
大総統の奥様に頬を撫でられてロイはフルフルと頭を振るしか出来なかった。
「貴方を泣かせたい訳じゃないのよ。
あぁ、泣かないで頂戴」
「すまないな」
「…っズ。
すみません」
「いいのよ。
夫の為に泣いてくれてありがとう。
いつか別れることってことだもの。
それは明日かもしれない。
私は覚悟しているわ」
「お強いんですね。
私には、そのような決断は出来そうにないです」
「ふふっ…今はそうよ。
貴方もいつか分かるわ」
大総統の奥様に涙を指で拭われ、ロイは苦笑いする。
(大総統だけではなくて奥様の前でも泣くとは。
私の涙腺はどうなっているんだ)
洗面所を借りてロイは顔を洗い、ため息をついた。
「大丈夫か?」
「…失礼しました」
「君の答えを聞かせておくれ」
「私は貴方に沢山の景色を見させてもらいました。
良いものも、見たくないものさえも。
地獄のような光景もきっと見なければ、分からなかった。
自分の無力を痛感しました。
こんなにちっぽけな命でも、私を信頼してくれる人達が居ます。
私の為に命さえ賭けてくれる。
貴方は私の為に何をしてくれますか」
「君が望むものを用意しよう」
「そんなに信じて宜しいのですか。
私が裏切ったら?」
「それも人生だが、君はしないよ」
ロイは一瞬だけ目を見開くと大総統を見つめて微かに笑った。
「…引き受けます。
自ら公表しないこと。
貴方の命が尽きるまで。
私を裏切るまで、私と仲間の命と尊厳を守って欲しい。
私の大切な人達の命すべて」
「ありがとう。
約束するよ」
見守られながら署名し、その隣で大総統の印と共に契約書に署名してくれた。
「それから、これも」
「コレは…?」
「私が居なくなった時に開けなさい。
私の机の引き出しの一番下の奥に入っている。
破られては困るからね。
引き出しのは写しだ」
「…分かりました」
戸惑いながらもロイは頷いて書類を受け取った。
-END-
2024.1.11
「あの時も言ったが、断っても変わらんよ。
そんな緊張しないでくれ」
「…はい。
何度も考えました。
今も正直、悩んでいます。
自分の中で答えを出したはずなのに。
どちらを選んでもきっと悩む」
「君の判断に従うよ。
悩ませているのは承知している」
「本当に私で宜しいのですか?
何回も聞いていますが、私は軍人で国家錬金術師です」
「分かっているよ。
君だから良いんだ、ロイ。
妻とも何度もコレに関しては話し合ったんだ」
「マスタングさん。
いえ、ロイさん。
貴方を私は信頼します。
夫が信頼しているからじゃないわ。
私が貴方なら信頼してもいいと思いました。
酷な決断をさせると理解してます」
「…奥様」
「貴方には辛い思いをさせて、ごめんなさいね」
大総統の奥様に頬を撫でられてロイはフルフルと頭を振るしか出来なかった。
「貴方を泣かせたい訳じゃないのよ。
あぁ、泣かないで頂戴」
「すまないな」
「…っズ。
すみません」
「いいのよ。
夫の為に泣いてくれてありがとう。
いつか別れることってことだもの。
それは明日かもしれない。
私は覚悟しているわ」
「お強いんですね。
私には、そのような決断は出来そうにないです」
「ふふっ…今はそうよ。
貴方もいつか分かるわ」
大総統の奥様に涙を指で拭われ、ロイは苦笑いする。
(大総統だけではなくて奥様の前でも泣くとは。
私の涙腺はどうなっているんだ)
洗面所を借りてロイは顔を洗い、ため息をついた。
「大丈夫か?」
「…失礼しました」
「君の答えを聞かせておくれ」
「私は貴方に沢山の景色を見させてもらいました。
良いものも、見たくないものさえも。
地獄のような光景もきっと見なければ、分からなかった。
自分の無力を痛感しました。
こんなにちっぽけな命でも、私を信頼してくれる人達が居ます。
私の為に命さえ賭けてくれる。
貴方は私の為に何をしてくれますか」
「君が望むものを用意しよう」
「そんなに信じて宜しいのですか。
私が裏切ったら?」
「それも人生だが、君はしないよ」
ロイは一瞬だけ目を見開くと大総統を見つめて微かに笑った。
「…引き受けます。
自ら公表しないこと。
貴方の命が尽きるまで。
私を裏切るまで、私と仲間の命と尊厳を守って欲しい。
私の大切な人達の命すべて」
「ありがとう。
約束するよ」
見守られながら署名し、その隣で大総統の印と共に契約書に署名してくれた。
「それから、これも」
「コレは…?」
「私が居なくなった時に開けなさい。
私の机の引き出しの一番下の奥に入っている。
破られては困るからね。
引き出しのは写しだ」
「…分かりました」
戸惑いながらもロイは頷いて書類を受け取った。
-END-
2024.1.11