第43話
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挨拶をしながらも手荷物検査が済むとロイは閣下の執務室に入る。
「おはようございます」
「ロイ、おはよう」
「レイブン中将、おはようございます」
「………。」
(挨拶を返さないのは閣下の前でも変わらないな。
別に気にしないけれど。
レイブン中将のことだから“贔屓だけの昇格の弱い若造に”なんて思っているんだろうな)
穏やかに挨拶する閣下と睨むような視線と舌打ちに相変わらずだなとロイは苦笑いしながら見送る。
ロイが気にしてないから尚更、面白くないのだろう。
「…やれやれ。
相変わらずのようだな」
「アレくらいで済むなら、まだ良い方ですよ」
「寒そうだな。
ストールくらいは持っているだろう。
して来なさい」
「…はい」
クシャミをするロイに苦笑いし、閣下に言われる前に補佐官が部屋の温度を高くした。
「寒…っ」
「だから、ストールをしなさいと言っているだろう」
「ちょっ、閣下!」
「鍛えてるなら寒くない。
煙草の残り香でもするか?」
「ん…、安心する香りです」
「そういうとこは子供のようで可愛らしいな」
「…意味が分かりませんが」
視察で閣下のストールを貸してもらえるのはロイゆえだろう。
「花の香り…?」
「あぁ、よく気づいたな。
まだ数本しか咲いてないのに」
「この辺りはよく花が咲くんだ」
「春になると賑わうんだよ」
「こういう場所は知らなかったです」
「春先も事件が多いからな」
「まぁ、そうですね」
「地方程ではないが。
中央でも綺麗に花が咲く。
温かくなったら、また来ようか」
「…その時に事件がなければ」
「君はすぐに呼ばれてしまうからね」
「そう思うなら、将軍達の教育をどうにかしてください。
使える将軍なんてやり方は除いても、北方のオリヴィエ少将くらいですよ」
「我が子は手厳しいな」
「肩を抱かないでください」
「いいではないか」
楽しそうに笑う閣下にロイは呆れながらも苦笑いする。
「それにしても、君が女性じゃなくてよかったな」
「何故ですか?」
「レイブン中将は身体に触れるから」
「あぁ、セクハラですか」
((ハッキリと言った!))
「私が女性なら、父様もセクハラになるのでは?
女性でなくてもセクハラになりますけど」
「…気をつけよう」
「冗談です。
父様なら大丈夫ですよ」
こうやって青空を眺めて、のんびりする日があるのもいいなと思う。
「ローイ!
閣下を連れて散歩かよ」
「ヒューズ、その言い方はどうなんだよ。
あれ、非番だったか?」
「そうそう。
グレイシアとエリシアと買い物」
「そうか。
楽しんで来いよ」
ロイは屈んでエリシアの頭を優しく撫でて微笑む。
最初の頃は血で汚れた手で触れて良いのかと躊躇していたロイだが、こうして当たり前のように触れられる。
半ば強引にヒューズが触れさせていたのもあるが、セルシアと出会えたのも大きいのだろう。
「綺麗な髪留めだな」
「うん!
買ってもらったの」
「それはよかったな」
『ロイさん、発見!
大総統もお疲れ様です!』
「あんたは犬なんっスか、リーゼル大佐」
「セルシア。
事件か?」
『小心者達が暴れていただけです』
「その言い方はどうなんっスか。
事実ですけど」
呆れながらもハボックはついて来て、閣下に敬礼する。
「なんだ?」
『唇、乾燥してないなと』
セルシアに唇を指で触れられて、ロイは瞬きする。
「最近は乾燥するからな。
あぁ、そういうことか」
『納得しないでください。
乾燥し易いんです』
それもあって最近は触れ合うのを避けられていたようだ。
『風の錬金術師だからとか言われるんですよ!』
「国家錬金術師の二つ名は揶揄られ易いからな。
研究費に税金が使われてるし、仕方ないんだけれど」
不満顔で愚痴るセルシアにロイは微笑んで頬を撫でた。
その後ろに追いついたブレダに咳き込まれ、ロイは肩を竦めて離した。
「大総統。
あまりロイを連れ回さないでくださいよ。
ただでさえ、嫉妬されやすいんですから」
「…気をつけよう」
「本当に分かってます?」
「ヒューズ、諦めも肝心だ」
閣下に肩を抱かれてロイは諦めたようにため息をつく。
ヒューズが敬礼してグレイシアとエリシアを連れて帰って行った。
『一足先に私達も失礼します。
報告書を作成次第、中尉に渡しておきますから』
「分かった。
気をつけて帰るように」
『はい、マスタング中将も』
「ありがとう。
なるべく早く帰れたらいいのだが」
((…大総統次第だからな))
無理だろうなとロイも思っていて、閣下のあとをついて歩く。
((どっちに対しての護衛なのか分からないな))
国民達もその光景に慣れているので言葉に出すこともない。
-END-
2023.12.30
「おはようございます」
「ロイ、おはよう」
「レイブン中将、おはようございます」
「………。」
(挨拶を返さないのは閣下の前でも変わらないな。
別に気にしないけれど。
レイブン中将のことだから“贔屓だけの昇格の弱い若造に”なんて思っているんだろうな)
穏やかに挨拶する閣下と睨むような視線と舌打ちに相変わらずだなとロイは苦笑いしながら見送る。
ロイが気にしてないから尚更、面白くないのだろう。
「…やれやれ。
相変わらずのようだな」
「アレくらいで済むなら、まだ良い方ですよ」
「寒そうだな。
ストールくらいは持っているだろう。
して来なさい」
「…はい」
クシャミをするロイに苦笑いし、閣下に言われる前に補佐官が部屋の温度を高くした。
「寒…っ」
「だから、ストールをしなさいと言っているだろう」
「ちょっ、閣下!」
「鍛えてるなら寒くない。
煙草の残り香でもするか?」
「ん…、安心する香りです」
「そういうとこは子供のようで可愛らしいな」
「…意味が分かりませんが」
視察で閣下のストールを貸してもらえるのはロイゆえだろう。
「花の香り…?」
「あぁ、よく気づいたな。
まだ数本しか咲いてないのに」
「この辺りはよく花が咲くんだ」
「春になると賑わうんだよ」
「こういう場所は知らなかったです」
「春先も事件が多いからな」
「まぁ、そうですね」
「地方程ではないが。
中央でも綺麗に花が咲く。
温かくなったら、また来ようか」
「…その時に事件がなければ」
「君はすぐに呼ばれてしまうからね」
「そう思うなら、将軍達の教育をどうにかしてください。
使える将軍なんてやり方は除いても、北方のオリヴィエ少将くらいですよ」
「我が子は手厳しいな」
「肩を抱かないでください」
「いいではないか」
楽しそうに笑う閣下にロイは呆れながらも苦笑いする。
「それにしても、君が女性じゃなくてよかったな」
「何故ですか?」
「レイブン中将は身体に触れるから」
「あぁ、セクハラですか」
((ハッキリと言った!))
「私が女性なら、父様もセクハラになるのでは?
女性でなくてもセクハラになりますけど」
「…気をつけよう」
「冗談です。
父様なら大丈夫ですよ」
こうやって青空を眺めて、のんびりする日があるのもいいなと思う。
「ローイ!
閣下を連れて散歩かよ」
「ヒューズ、その言い方はどうなんだよ。
あれ、非番だったか?」
「そうそう。
グレイシアとエリシアと買い物」
「そうか。
楽しんで来いよ」
ロイは屈んでエリシアの頭を優しく撫でて微笑む。
最初の頃は血で汚れた手で触れて良いのかと躊躇していたロイだが、こうして当たり前のように触れられる。
半ば強引にヒューズが触れさせていたのもあるが、セルシアと出会えたのも大きいのだろう。
「綺麗な髪留めだな」
「うん!
買ってもらったの」
「それはよかったな」
『ロイさん、発見!
大総統もお疲れ様です!』
「あんたは犬なんっスか、リーゼル大佐」
「セルシア。
事件か?」
『小心者達が暴れていただけです』
「その言い方はどうなんっスか。
事実ですけど」
呆れながらもハボックはついて来て、閣下に敬礼する。
「なんだ?」
『唇、乾燥してないなと』
セルシアに唇を指で触れられて、ロイは瞬きする。
「最近は乾燥するからな。
あぁ、そういうことか」
『納得しないでください。
乾燥し易いんです』
それもあって最近は触れ合うのを避けられていたようだ。
『風の錬金術師だからとか言われるんですよ!』
「国家錬金術師の二つ名は揶揄られ易いからな。
研究費に税金が使われてるし、仕方ないんだけれど」
不満顔で愚痴るセルシアにロイは微笑んで頬を撫でた。
その後ろに追いついたブレダに咳き込まれ、ロイは肩を竦めて離した。
「大総統。
あまりロイを連れ回さないでくださいよ。
ただでさえ、嫉妬されやすいんですから」
「…気をつけよう」
「本当に分かってます?」
「ヒューズ、諦めも肝心だ」
閣下に肩を抱かれてロイは諦めたようにため息をつく。
ヒューズが敬礼してグレイシアとエリシアを連れて帰って行った。
『一足先に私達も失礼します。
報告書を作成次第、中尉に渡しておきますから』
「分かった。
気をつけて帰るように」
『はい、マスタング中将も』
「ありがとう。
なるべく早く帰れたらいいのだが」
((…大総統次第だからな))
無理だろうなとロイも思っていて、閣下のあとをついて歩く。
((どっちに対しての護衛なのか分からないな))
国民達もその光景に慣れているので言葉に出すこともない。
-END-
2023.12.30