第42話
夢小説設定
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閣下に抱えられてロイは目を見開き、凝視する。
「君、結構酒飲んでたんだったな。
珍しく酔いが回ってるだろ」
「酔ってないですよ」
「そうやって笑ってるのが酔ってる証拠だ。
普段の君から軍刀にも触れたりしないだろう?
安心してくれているのは嬉しいが」
ケラケラと笑っているロイに閣下は苦笑いし、ロイの部屋のベットまで運ぶ。
「着替えられるか?」
「ん〜…これでいい、です」
「シワになるから。
ほら、着替えるぞ」
自力で出来てないロイに閣下はパジャマに着替えさせた。
「水、飲むか?」
「…父様」
「どうした?」
「もう部屋に戻るんですか?」
「君が眠るまで傍にいるよ」
「小さな頃、近所の子達が…
親に頬に…キス…されてて。
羨ましくも、切なくて。
お願いすれば…きっと困りながらもしてくれたかもしれない。
でも、僕は…息子では、ないから。
困らせるだけだって」
閣下は優しく頭を撫でてロイの頬にキスをする。
「おやすみ、ロイ。
いい夢を」
「…今のは違う。
微睡んで、ました」
「正気に戻ったか?
くくっ、可愛かったぞ」
枕に顔を埋めて撃沈しているロイに閣下は楽しそうに笑う。
「包容もキスも君が望むなら、いくらでもしてやるさ。
君は不満になるだろうけれど。
私が居なくなるまでずっと」
「…引き受けたら何をしてくれるんですか?」
「君が望むものならば」
「閣下の椅子も?」
「今すぐでなければ」
「…冗談ですよ」
ロイは微かに笑い、無意識に閣下の服を掴んで眠った。
こういうとこは不器用で甘えられないんだろうなと優しく頭を撫でる。
「今回は私から何かあげようとは言わんよ。
極端な話だが、例えば君が養子になりたいと言うならば受け入れよう」
「なっ!?」
「ありえない話だろう?
それ程の条件でも構わないということだよ」
「…貴方は私を困らせたいのですか?」
「結果的にそうなってしまっているのは申し訳ない」
閣下はロイのベットに腰掛けて優しく頭を撫でた。
「子守唄、歌ってください」
「…子守唄?」
「どんな歌でもいいです。
覚えてないから」
「私は歌は上手くはないが…」
ぎこちなくもポンポンと優しく肩を叩かれながら子守唄を歌ってくれた。
(…こういう思い出の記憶もなくなっていたのか)
初めて聞くはずなのに何故か不思議と懐かしくて切なくなった。
思い出したい気持ちとこのまま忘れていたい気持ちが交差する。
(私は小さな頃にマダムに歌ってもらっていたんだろうか)
それさえも靄が掛かったように記憶がなくなっている。
「すぅ…すぅ…」
「おやすみ、いい夢を」
穏やかな寝顔を浮かべるロイに閣下は頬にキスして去る。
(私は何をしたんだ。
小さな子供じゃないんだし。
酔っ払って甘えたと、思いたい)
恥ずかしさから目が覚めてもロイはベットから出れなかった。
「ロイ、おはよう。
起きていたか。
気にしなくていいからおいで。
二日酔いにはなってないのだろう?」
「…父様」
「それとも、昨日のように着替えさせてやろうか?」
「結構です!」
真っ赤になって叫び、背を向けて着替えるロイに閣下は笑う。
背中にある煙草の無数の火傷も当初よりは目立たなくなったが、それでも痛々しい痕がある。
「閣下…?」
「もう痛まないか?
こうなる前に、私が動いていれば」
「大丈夫です」
事件当初はしばらく激痛と高熱、トラウマにうなされていた。
ヒューズを始めとした仲間達は決してロイを1人にさせずに後ろに立つことはしなかった。
それを分かりながらもロイは誰に対しても指摘はしなかった。
「私の不注意ですから。
閣下は悪くありません」
「私があの時に君を連れて行けば、と何度も思ったよ」
「不運が重なっただけです」
「痛まないか?」
「…まだ稀に痛みはあります。
実際には痛くはないはずなのに。
脳の錯覚、でしょうね」
ロイは自分の腕にある火傷の痕に触れて困ったように笑う。
「君が恐怖と戦っている時に、何も助けてやれなかった」
「…閣下」
「本当に、すまなかった」
閣下に後ろから抱き締められて当初を思い出してロイは静かに涙が流れた。
「私は父様に助けて欲しかった訳じゃない!
けれど…っ」
「分かっている。
何も言わなくていい」
「うっ、く…ッ」
振り向いて正面から抱きつき、閣下は優しく頭を撫でてくれた。
「君に頼られたら嬉しいものだ。
格好悪い姿を見たって離れていくような人たちではないだろう?
勿論、私も頼られたら嬉しいよ。
君がそういうことが苦手なのも分かっているさ」
「…っズ」
「1人で戦う必要はない。
分けてくれて良いんだ」
震えて泣いているロイの肩を閣下は抱き寄せた。
-END-
2023.12.25
「君、結構酒飲んでたんだったな。
珍しく酔いが回ってるだろ」
「酔ってないですよ」
「そうやって笑ってるのが酔ってる証拠だ。
普段の君から軍刀にも触れたりしないだろう?
安心してくれているのは嬉しいが」
ケラケラと笑っているロイに閣下は苦笑いし、ロイの部屋のベットまで運ぶ。
「着替えられるか?」
「ん〜…これでいい、です」
「シワになるから。
ほら、着替えるぞ」
自力で出来てないロイに閣下はパジャマに着替えさせた。
「水、飲むか?」
「…父様」
「どうした?」
「もう部屋に戻るんですか?」
「君が眠るまで傍にいるよ」
「小さな頃、近所の子達が…
親に頬に…キス…されてて。
羨ましくも、切なくて。
お願いすれば…きっと困りながらもしてくれたかもしれない。
でも、僕は…息子では、ないから。
困らせるだけだって」
閣下は優しく頭を撫でてロイの頬にキスをする。
「おやすみ、ロイ。
いい夢を」
「…今のは違う。
微睡んで、ました」
「正気に戻ったか?
くくっ、可愛かったぞ」
枕に顔を埋めて撃沈しているロイに閣下は楽しそうに笑う。
「包容もキスも君が望むなら、いくらでもしてやるさ。
君は不満になるだろうけれど。
私が居なくなるまでずっと」
「…引き受けたら何をしてくれるんですか?」
「君が望むものならば」
「閣下の椅子も?」
「今すぐでなければ」
「…冗談ですよ」
ロイは微かに笑い、無意識に閣下の服を掴んで眠った。
こういうとこは不器用で甘えられないんだろうなと優しく頭を撫でる。
「今回は私から何かあげようとは言わんよ。
極端な話だが、例えば君が養子になりたいと言うならば受け入れよう」
「なっ!?」
「ありえない話だろう?
それ程の条件でも構わないということだよ」
「…貴方は私を困らせたいのですか?」
「結果的にそうなってしまっているのは申し訳ない」
閣下はロイのベットに腰掛けて優しく頭を撫でた。
「子守唄、歌ってください」
「…子守唄?」
「どんな歌でもいいです。
覚えてないから」
「私は歌は上手くはないが…」
ぎこちなくもポンポンと優しく肩を叩かれながら子守唄を歌ってくれた。
(…こういう思い出の記憶もなくなっていたのか)
初めて聞くはずなのに何故か不思議と懐かしくて切なくなった。
思い出したい気持ちとこのまま忘れていたい気持ちが交差する。
(私は小さな頃にマダムに歌ってもらっていたんだろうか)
それさえも靄が掛かったように記憶がなくなっている。
「すぅ…すぅ…」
「おやすみ、いい夢を」
穏やかな寝顔を浮かべるロイに閣下は頬にキスして去る。
(私は何をしたんだ。
小さな子供じゃないんだし。
酔っ払って甘えたと、思いたい)
恥ずかしさから目が覚めてもロイはベットから出れなかった。
「ロイ、おはよう。
起きていたか。
気にしなくていいからおいで。
二日酔いにはなってないのだろう?」
「…父様」
「それとも、昨日のように着替えさせてやろうか?」
「結構です!」
真っ赤になって叫び、背を向けて着替えるロイに閣下は笑う。
背中にある煙草の無数の火傷も当初よりは目立たなくなったが、それでも痛々しい痕がある。
「閣下…?」
「もう痛まないか?
こうなる前に、私が動いていれば」
「大丈夫です」
事件当初はしばらく激痛と高熱、トラウマにうなされていた。
ヒューズを始めとした仲間達は決してロイを1人にさせずに後ろに立つことはしなかった。
それを分かりながらもロイは誰に対しても指摘はしなかった。
「私の不注意ですから。
閣下は悪くありません」
「私があの時に君を連れて行けば、と何度も思ったよ」
「不運が重なっただけです」
「痛まないか?」
「…まだ稀に痛みはあります。
実際には痛くはないはずなのに。
脳の錯覚、でしょうね」
ロイは自分の腕にある火傷の痕に触れて困ったように笑う。
「君が恐怖と戦っている時に、何も助けてやれなかった」
「…閣下」
「本当に、すまなかった」
閣下に後ろから抱き締められて当初を思い出してロイは静かに涙が流れた。
「私は父様に助けて欲しかった訳じゃない!
けれど…っ」
「分かっている。
何も言わなくていい」
「うっ、く…ッ」
振り向いて正面から抱きつき、閣下は優しく頭を撫でてくれた。
「君に頼られたら嬉しいものだ。
格好悪い姿を見たって離れていくような人たちではないだろう?
勿論、私も頼られたら嬉しいよ。
君がそういうことが苦手なのも分かっているさ」
「…っズ」
「1人で戦う必要はない。
分けてくれて良いんだ」
震えて泣いているロイの肩を閣下は抱き寄せた。
-END-
2023.12.25