第37話
夢小説設定
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広報担当者が依頼したマナー講師にテーブルマナーやダンス作法をテストされることになった。
「これでよろしいですか?」
「テーブルマナーはディナーもティータイムも完璧です」
「ダンスも女性に恥を掻かせないどころかリードしつつも楽しませ、強引さは微塵もない紳士です」
複数のマナー講師から完璧とベタ褒めされていた。
講師達が退出して閣下は満足そうに笑顔で頷く。
「だから、言っただろう?
ロイには不要だと」
「育ちは一般家庭に引き取られたはずでは…」
「確かに一般家庭ですが、私に様々なことを学ばせてくれました。
片親だと私が肩身の狭い思いをされないように。
必ずではなくてもいつか必要になる時が来ると言って。
そのお陰で卒業パーティーのダンスパーティーでは恥も失敗もなかったのですが」
((…怒ってる))
唖然としている広報担当者を見てロイはにっこりと笑う。
「すみませんでした」
「私はマナーが出来てないとレッテルを貼られていたということでしょうか?」
「あっ、いえ…」
「とりあえずは貸しにしておきますよ。
貴方に否定権はないのでそのつもりで。
テスト時間は約6時間ですか。
では、6時間が私の元で動いてもらえるということですね。
覚悟しといてくださいね」
青ざめて逃げるように去って行く様子にロイは微かに笑う。
「…マスタング将軍」
「うむ、少し脅し過ぎたか」
「半分本気だろう?」
「まさか、補佐官のように悪質ではないですよ」
「言うようになったな」
ロイと補佐官の言い合いもいつものやりとりだ。
時間が空くとロイは墓参りに行くようにしていた。
(ずっと来れなかったし、これくらいの親孝行しか私には出来ないから)
掃除をして買って来た花を入れて見つめる。
(生きていたらどんな両親でどういう生活だったのだろうか。
考えても無駄なのに考えてしまう。
やはり、今になって実感する。
封じ込めていたけど、寂しくて切なくて悲しくてたまらなかったんだ)
遊びに行った記憶もなくて改めて実感した。
もちろん、それは自分だけではないのだが。
「…また来ていたのか」
「閣下!」
「自分の両親の墓参りだからそれは構わないが、そんな顔で来られたら亡くなった両親も心配するぞ」
「えっ?」
(…やれやれ。
自覚がないのか)
小さくため息をついて苦笑いする閣下にロイは首を傾げる。
「遊びに行こうか」
「あの、どちらに?
ちょっ…閣下!」
「いいから来なさい」
腕を引かれて半ば強引に連れ歩かされてしまう。
「ここは…?」
「まだ冬だから景色はそこまでよくないが。
春や夏は綺麗なんだ。
いつか、その季節に婚約者を連れて来てあげなさい」
「えっ?」
「…ウィルが成長したら君と一緒に来たいと言ってた場所だ」
一瞬驚き、ロイは戸惑ったように閣下を見つめる。
ロイの頭を優しく撫でて閣下は隣で景色を見つめる。
「ウィルが君を連れて行きたいと生前に言っていた場所がある。
実際に行った場所もあるのだが、君は赤ん坊立ったから覚えてないのも無理もない。
私が案内してやるし、一緒にゆっくり行こう。
必要なら妻もみんなも誘って」
「……っ…」
「大丈夫だよ、ロイ。
寂しいなら寂しいと大人でも言ってもいいんだ」
「どうしてそこまで?
親友の子だからってしてくれるのですか?
そこまで私にしてくださる必要はないはずです」
泣きそうになってロイは唇を噛み締めて見つめる。
「…そうだな。
同情がなかった訳ではないし、最初は放っておけなくて。
今は純粋に息子のように思って勝手だが、ウィルの代わりに私がしようと思ってる。
私はウィルを…、君の両親を助けられなかった。
もちろん、君の両親だけではないけれど。
ウィルに私は何度も助けられた。
精神的な面で。
私は孤独でそれが当たり前だと思っていた」
「閣下が?」
「君は私をどう見てるんだ。
今とは真逆で暗かったんだよ」
驚いてロイは瞬きして閣下を凝視してしまう。
「…すみません」
「ウィルも陽気な訳ではなかったんだが。
君とヒューズ中佐みたいだな。
私が困っているとすぐに何事もないように手を差し伸べてくれるのがウィルだった」
初めて聞く父との思い出に戸惑いながらも耳を傾ける。
「ありがとうございます」
「いや、君以外には話せない内容だからな」
勝手悪くて妻には話せないと呟く閣下にロイは苦笑い。
「これでよろしいですか?」
「テーブルマナーはディナーもティータイムも完璧です」
「ダンスも女性に恥を掻かせないどころかリードしつつも楽しませ、強引さは微塵もない紳士です」
複数のマナー講師から完璧とベタ褒めされていた。
講師達が退出して閣下は満足そうに笑顔で頷く。
「だから、言っただろう?
ロイには不要だと」
「育ちは一般家庭に引き取られたはずでは…」
「確かに一般家庭ですが、私に様々なことを学ばせてくれました。
片親だと私が肩身の狭い思いをされないように。
必ずではなくてもいつか必要になる時が来ると言って。
そのお陰で卒業パーティーのダンスパーティーでは恥も失敗もなかったのですが」
((…怒ってる))
唖然としている広報担当者を見てロイはにっこりと笑う。
「すみませんでした」
「私はマナーが出来てないとレッテルを貼られていたということでしょうか?」
「あっ、いえ…」
「とりあえずは貸しにしておきますよ。
貴方に否定権はないのでそのつもりで。
テスト時間は約6時間ですか。
では、6時間が私の元で動いてもらえるということですね。
覚悟しといてくださいね」
青ざめて逃げるように去って行く様子にロイは微かに笑う。
「…マスタング将軍」
「うむ、少し脅し過ぎたか」
「半分本気だろう?」
「まさか、補佐官のように悪質ではないですよ」
「言うようになったな」
ロイと補佐官の言い合いもいつものやりとりだ。
時間が空くとロイは墓参りに行くようにしていた。
(ずっと来れなかったし、これくらいの親孝行しか私には出来ないから)
掃除をして買って来た花を入れて見つめる。
(生きていたらどんな両親でどういう生活だったのだろうか。
考えても無駄なのに考えてしまう。
やはり、今になって実感する。
封じ込めていたけど、寂しくて切なくて悲しくてたまらなかったんだ)
遊びに行った記憶もなくて改めて実感した。
もちろん、それは自分だけではないのだが。
「…また来ていたのか」
「閣下!」
「自分の両親の墓参りだからそれは構わないが、そんな顔で来られたら亡くなった両親も心配するぞ」
「えっ?」
(…やれやれ。
自覚がないのか)
小さくため息をついて苦笑いする閣下にロイは首を傾げる。
「遊びに行こうか」
「あの、どちらに?
ちょっ…閣下!」
「いいから来なさい」
腕を引かれて半ば強引に連れ歩かされてしまう。
「ここは…?」
「まだ冬だから景色はそこまでよくないが。
春や夏は綺麗なんだ。
いつか、その季節に婚約者を連れて来てあげなさい」
「えっ?」
「…ウィルが成長したら君と一緒に来たいと言ってた場所だ」
一瞬驚き、ロイは戸惑ったように閣下を見つめる。
ロイの頭を優しく撫でて閣下は隣で景色を見つめる。
「ウィルが君を連れて行きたいと生前に言っていた場所がある。
実際に行った場所もあるのだが、君は赤ん坊立ったから覚えてないのも無理もない。
私が案内してやるし、一緒にゆっくり行こう。
必要なら妻もみんなも誘って」
「……っ…」
「大丈夫だよ、ロイ。
寂しいなら寂しいと大人でも言ってもいいんだ」
「どうしてそこまで?
親友の子だからってしてくれるのですか?
そこまで私にしてくださる必要はないはずです」
泣きそうになってロイは唇を噛み締めて見つめる。
「…そうだな。
同情がなかった訳ではないし、最初は放っておけなくて。
今は純粋に息子のように思って勝手だが、ウィルの代わりに私がしようと思ってる。
私はウィルを…、君の両親を助けられなかった。
もちろん、君の両親だけではないけれど。
ウィルに私は何度も助けられた。
精神的な面で。
私は孤独でそれが当たり前だと思っていた」
「閣下が?」
「君は私をどう見てるんだ。
今とは真逆で暗かったんだよ」
驚いてロイは瞬きして閣下を凝視してしまう。
「…すみません」
「ウィルも陽気な訳ではなかったんだが。
君とヒューズ中佐みたいだな。
私が困っているとすぐに何事もないように手を差し伸べてくれるのがウィルだった」
初めて聞く父との思い出に戸惑いながらも耳を傾ける。
「ありがとうございます」
「いや、君以外には話せない内容だからな」
勝手悪くて妻には話せないと呟く閣下にロイは苦笑い。