第35話
夢小説設定
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結局は閣下に半ば強引にロイは大浴場の脱衣場に連れて来られた。
「…どうして一緒に入らなくてはならないんですか」
「まぁ、いいではないか」
「よくないから言ってるんですが」
「脱がしてやろうか?」
「変態発言はおやめください」
呆れながらロイはため息をついて諦めるしかない。
「やはり、残っているな」
「えっ?」
「煙草の火傷の跡。
腕よりも背中の方が酷いな」
「押さえつけられて腕よりも強く押し付けられましたから」
「…すまんな」
「閣下が謝ることでは。
すみません、隠すべきでした」
「そんな必要ないだろう?」
「気色悪いかと」
「バカだな、君は。
心配はしてもそんなこと思わんよ。
誰かに言われたか?」
「……っ…」
俯いて唇を噛み締め、小さな子供のように首を振るロイに微かに笑って閣下は優しく頭を撫でる。
背中を見られるのは僅かな人物でヒューズもセルシアも心配そうに顔を歪めただけだった。
「マスタング将軍」
「は、はい…」
「この事件のことも傷の跡も隠すべきではない。
君を弱いと言う輩もいるだろう。
堂々としてなさい。
夏になったら隠さずに半袖になりなさい」
「ですが!」
「これは君の闘いの証だ。
恥じるべき跡ではない」
「…閣下」
「さあ、入ろうか」
(わざとなのか?
裸になれば自然と見れる。
いや、まさかな)
閣下を追いかける形でロイも脱衣場から大浴場に向かう。
ロイは錬金術の道具をセルシアに預け、閣下は軍刀を補佐官に預けて行った。
信頼の証でもあるが、敵意がないという表明。
そうしなければお互いの部下が不安になるから。
「どうしてここまでしてくださるのですか?
私が父の子でもそこまでする必要はないはずです」
「…どうしてだろうな。
誤魔化すのではなく、私も分からんのだよ。
確かにウィルの息子というのは特別ではあるが、それだけでは私もここまでしない。
君は私に忘れていた感覚を思い出させてくれたから、かな」
「忘れていた感覚…?」
意味が分からずにロイは不思議そうに首を傾げる。
「忙しいとそういう感覚も薄れていってしまって。
人間らしい感覚かな。
感覚が鈍っていたんだ。
もちろん家族はいるが、そうではなくて。
楽しみや喜びよりも心配なんて感覚は薄れていたからな。
君には何度、心配かけられたことやら」
「す、すみません…」
「はっはっ!
それが嬉しかったんだよ。
君に慕われるのも。
階級があるから心から信頼されなくてもな」
「それは…」
「いいんだ、それは当然だ。
父と呼ばれるのも本心で私は嬉しいんだよ」
「利用してるのも多少はあります。
でも、父のように思ってなければ呼びません」
「そうか。
それは嬉しいな」
穏やかに微笑んで閣下はロイの頭を撫でた。
離れて湯槽に浸かっていたが、距離を詰められてロイは諦めたようにため息をつく。
「…父様。
近すぎます」
「ロイが離れるからだろう?」
「これだけ広いなら離れるかと思いますが?」
「いいではないか。
君はあまり近寄ってくれないし」
「閣下に自ら近づくなんてありえませんよ」
「そうか?
ロイなら大歓迎だが」
「意味が分かりません」
「冷たいなぁ~」
「普通です」
「…泣いた時は可愛かったのに。
軍服を掴んで」
「んなっ!
ゲホッ…ゲホッ…」
「おやおや、大丈夫かい?」
「だ、誰のせいで…っ」
動揺して滑って咳き込むロイに閣下は楽しそうに笑う。
(…やれやれ。
どこまで計算なんだか。
そういえば、湯槽に浸かる習慣はこの国にはないよな。
マダムの家にもあったが、小さい頃に聞いたら異国の文化だと。
中尉は驚いてたし。
セルシアは本で知ってたのか、本物だとはしゃいでいたらしいが)
閣下は驚いていないから異国のものを知ってたのかもしれない。
「どうした?」
「湯槽は知っていたのですか?
この国にはない文化ですから」
「市民達も驚いて子供達は喜んでいたみたいだな。
昔にウィルに教えてもらったんだ。
ロイも知ってたのか?」
「私を引き取ってくれた人の家でありました。
異国のものとは教えてもらっていましたけど、そこまで詳しくは…」
湯槽に浸かりながら閣下がウィルから教わったことをロイに伝えてくれる。
「…どうして一緒に入らなくてはならないんですか」
「まぁ、いいではないか」
「よくないから言ってるんですが」
「脱がしてやろうか?」
「変態発言はおやめください」
呆れながらロイはため息をついて諦めるしかない。
「やはり、残っているな」
「えっ?」
「煙草の火傷の跡。
腕よりも背中の方が酷いな」
「押さえつけられて腕よりも強く押し付けられましたから」
「…すまんな」
「閣下が謝ることでは。
すみません、隠すべきでした」
「そんな必要ないだろう?」
「気色悪いかと」
「バカだな、君は。
心配はしてもそんなこと思わんよ。
誰かに言われたか?」
「……っ…」
俯いて唇を噛み締め、小さな子供のように首を振るロイに微かに笑って閣下は優しく頭を撫でる。
背中を見られるのは僅かな人物でヒューズもセルシアも心配そうに顔を歪めただけだった。
「マスタング将軍」
「は、はい…」
「この事件のことも傷の跡も隠すべきではない。
君を弱いと言う輩もいるだろう。
堂々としてなさい。
夏になったら隠さずに半袖になりなさい」
「ですが!」
「これは君の闘いの証だ。
恥じるべき跡ではない」
「…閣下」
「さあ、入ろうか」
(わざとなのか?
裸になれば自然と見れる。
いや、まさかな)
閣下を追いかける形でロイも脱衣場から大浴場に向かう。
ロイは錬金術の道具をセルシアに預け、閣下は軍刀を補佐官に預けて行った。
信頼の証でもあるが、敵意がないという表明。
そうしなければお互いの部下が不安になるから。
「どうしてここまでしてくださるのですか?
私が父の子でもそこまでする必要はないはずです」
「…どうしてだろうな。
誤魔化すのではなく、私も分からんのだよ。
確かにウィルの息子というのは特別ではあるが、それだけでは私もここまでしない。
君は私に忘れていた感覚を思い出させてくれたから、かな」
「忘れていた感覚…?」
意味が分からずにロイは不思議そうに首を傾げる。
「忙しいとそういう感覚も薄れていってしまって。
人間らしい感覚かな。
感覚が鈍っていたんだ。
もちろん家族はいるが、そうではなくて。
楽しみや喜びよりも心配なんて感覚は薄れていたからな。
君には何度、心配かけられたことやら」
「す、すみません…」
「はっはっ!
それが嬉しかったんだよ。
君に慕われるのも。
階級があるから心から信頼されなくてもな」
「それは…」
「いいんだ、それは当然だ。
父と呼ばれるのも本心で私は嬉しいんだよ」
「利用してるのも多少はあります。
でも、父のように思ってなければ呼びません」
「そうか。
それは嬉しいな」
穏やかに微笑んで閣下はロイの頭を撫でた。
離れて湯槽に浸かっていたが、距離を詰められてロイは諦めたようにため息をつく。
「…父様。
近すぎます」
「ロイが離れるからだろう?」
「これだけ広いなら離れるかと思いますが?」
「いいではないか。
君はあまり近寄ってくれないし」
「閣下に自ら近づくなんてありえませんよ」
「そうか?
ロイなら大歓迎だが」
「意味が分かりません」
「冷たいなぁ~」
「普通です」
「…泣いた時は可愛かったのに。
軍服を掴んで」
「んなっ!
ゲホッ…ゲホッ…」
「おやおや、大丈夫かい?」
「だ、誰のせいで…っ」
動揺して滑って咳き込むロイに閣下は楽しそうに笑う。
(…やれやれ。
どこまで計算なんだか。
そういえば、湯槽に浸かる習慣はこの国にはないよな。
マダムの家にもあったが、小さい頃に聞いたら異国の文化だと。
中尉は驚いてたし。
セルシアは本で知ってたのか、本物だとはしゃいでいたらしいが)
閣下は驚いていないから異国のものを知ってたのかもしれない。
「どうした?」
「湯槽は知っていたのですか?
この国にはない文化ですから」
「市民達も驚いて子供達は喜んでいたみたいだな。
昔にウィルに教えてもらったんだ。
ロイも知ってたのか?」
「私を引き取ってくれた人の家でありました。
異国のものとは教えてもらっていましたけど、そこまで詳しくは…」
湯槽に浸かりながら閣下がウィルから教わったことをロイに伝えてくれる。