第32話
夢小説設定
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想像を越えた苦痛と激痛でそれでも耐えられたのはやはり、ロイの強さなのだろう。
「格好悪くてすまない」
『そんなことありません。
ずっと強くて完璧な人間なんて今いませんよ。
どれだけ辛かったのか。
この傷がロイさんの闘いの証です。
傷が消えても忘れることはないんでしょうね。
私達は経験はないから想像でしか理解が出来ないことが悔しいです。
私が…、私達がロイさんを助けに行きたかった!
助けに行けずにごめんなさい』
「セルシア…」
ロイの心にトラウマを多少なり与えたが、ロイだけではなくてセルシアや中尉達にも後悔と罪悪感を与えた。
『我慢する必要ないんですよ』
「……っ…」
『大丈夫ですよ』
「本当は怖かった!
目を覚ます度に意味が分からないままに殴られて蹴られて。
暴言を浴びされて反論も許されなくて!」
『ロイさんっ!』
「うあぁっ…
うっ、く…ッ」
しがみついて来るロイにセルシアが抱き締める。
『…ロイさん?』
「すぅ…すぅ…」
声が聞こえなくなって重みに感じ、顔を覗き込むと寝ていて苦笑い。
『よいしょ…、っと』
いくら痩せたと言われていても成人男性なので重い。
ベットにどうにか寝かせてその隣に自分も寝る。
ロイは目を覚ますとセルシアがきゅっと自分の手を握ってくれていることに気づく。
(…泣き疲れて眠るなんて私は子供なのか。
でも、全部受け入れてくれた)
それだけで救われたような気がして心が軽くなった。
起きるには少し早いが、静かに手を剥がしてセルシアに布団を掛け直して寝室から出る。
「はぁ~っ…
涙腺が緩むほど、私はまだ年ではないんだがな」
最近になって泣くことが増えたとロイは苦笑い。
シャワーを浴びて濡れた前髪を掻き上げ、ため息をつく。
セルシアが見ていたら格好いいと騒いでいたのだろう。
『…ロイさん?』
「おはよう」
『あっ、おはようございます。
ごめんなさい。
寝坊しちゃって』
「寝るには時間ないから起きたんだよ。
セルシアが寝坊した訳ではない。
夜勤だし、まだ時間あるだろう?」
『お腹空いてます?』
「まだそんなには」
『すぐに着替えて来ますね』
「ゆっくりで構わんよ」
パタパタと走って行くセルシアにロイは微笑みながら新聞を読む。
『お待たせしました!』
「そんなに急がなくても。
さあ、食べようか」
『作ってくれたんですか?』
「簡単なものだけど」
ロイは簡単と言ってるが、ふわふわのスクランブルエッグを始めとしたメニューはまるでホテルの朝食だ。
出掛ける前に抱き合ってキスを交わした。
「では、行って来る。
すれ違いになるだろうし。次に会えるのは年明け後だな」
『行ってらっしゃい。
はい、年明け後に』
「気をつけろよ」
これではどちらが先に出勤するのか分からない。
(自分が出来ないからって私に八つ当たりしないで欲しいのだが。
まったく、相変わらずだな)
数少なくなっても嫌味は閣下が居ない前では変わらない。
閣下に一喝されても見えない場所では傲慢な態度も嫌味も変わってはいないようだ。
「あれ…?
ヒューズ、グランドピアノはまだあるのか?」
「引き取りに時間掛かるんだよ。
それなら国民にも人気だし、レンタルにしてるんだ。
手続きも終わったから弾いても構わんぞ。
軍で弾けるのはおまえさんだけだからな」
「…そうだな」
ロイの為に残していると言っても過言ではないだろう。
「ありゃりゃ。
これはまたかなり激しい曲だこと。
リザちゃん、何かあった?」
「いつものことなのですが。
今日は執拗に言われていたので」
「なるほどな。
口だけは達者だし」
楽譜もないのにロイは簡単そうに弾いているが、テンポも速くて難易度の高いと素人にも有名な曲だ。
荒々しさもあるが、弾く度に激しさが増してゆく。
何曲かオリジナルも入れて弾くとロイはグランドピアノの電源を切る。
「中尉、待たせたな」
「…いいえ。
もうよろしいのですか?」
「大丈夫だよ。
このまま事件がないといいな。
いや、事件はなくても騒動はあるだろうけど」
「そうですね。
早番の時点であったようですから」
「騒ぐなとは言わないが、限度があるだろうに」
呆れたようにロイは苦笑いして中尉と戻って行く。
(この調子では夜勤は大変だな。
セルシアがいるから事件の面では大丈夫だろう。
酔っ払いとかに絡まれないといいんだけどな)
書類作業しながらロイはチラッと中尉を見た。
「何かありましたか?」
「いや、この時間帯に中尉と2人なのは久しぶりだなと思ってな。
セルシアが居ないのもハボック達が居ないのも」
「夜勤と強化パトロールもありますからね。
そういえば、ウィンリィちゃんには手紙のお返事を書きましたか?」
「…君は私の親か」
「失礼しました。
いえ、思わず」
「書いたよ。
内容は内緒だけど」
「ふふっ、そうですか」
楽しそうに笑う中尉に一瞬驚きながらもロイは微かに笑った。
「…やれやれ。
君達も変わらんな」
「将軍、リーゼル大佐が居ないのですからあまり煽らないでください」
「失礼だな。
セルシアに援護はされてるが、頼ってばかりではないぞ」
「失礼しました」
「何を言い合ってるんだ!
ふははっ!
雨が降って来たな。
マスタング将軍、また副官に守ってもらうのか?」
((…知らないのか))
野次馬の国民達は次の展開が読めてため息をつく。
「格好悪くてすまない」
『そんなことありません。
ずっと強くて完璧な人間なんて今いませんよ。
どれだけ辛かったのか。
この傷がロイさんの闘いの証です。
傷が消えても忘れることはないんでしょうね。
私達は経験はないから想像でしか理解が出来ないことが悔しいです。
私が…、私達がロイさんを助けに行きたかった!
助けに行けずにごめんなさい』
「セルシア…」
ロイの心にトラウマを多少なり与えたが、ロイだけではなくてセルシアや中尉達にも後悔と罪悪感を与えた。
『我慢する必要ないんですよ』
「……っ…」
『大丈夫ですよ』
「本当は怖かった!
目を覚ます度に意味が分からないままに殴られて蹴られて。
暴言を浴びされて反論も許されなくて!」
『ロイさんっ!』
「うあぁっ…
うっ、く…ッ」
しがみついて来るロイにセルシアが抱き締める。
『…ロイさん?』
「すぅ…すぅ…」
声が聞こえなくなって重みに感じ、顔を覗き込むと寝ていて苦笑い。
『よいしょ…、っと』
いくら痩せたと言われていても成人男性なので重い。
ベットにどうにか寝かせてその隣に自分も寝る。
ロイは目を覚ますとセルシアがきゅっと自分の手を握ってくれていることに気づく。
(…泣き疲れて眠るなんて私は子供なのか。
でも、全部受け入れてくれた)
それだけで救われたような気がして心が軽くなった。
起きるには少し早いが、静かに手を剥がしてセルシアに布団を掛け直して寝室から出る。
「はぁ~っ…
涙腺が緩むほど、私はまだ年ではないんだがな」
最近になって泣くことが増えたとロイは苦笑い。
シャワーを浴びて濡れた前髪を掻き上げ、ため息をつく。
セルシアが見ていたら格好いいと騒いでいたのだろう。
『…ロイさん?』
「おはよう」
『あっ、おはようございます。
ごめんなさい。
寝坊しちゃって』
「寝るには時間ないから起きたんだよ。
セルシアが寝坊した訳ではない。
夜勤だし、まだ時間あるだろう?」
『お腹空いてます?』
「まだそんなには」
『すぐに着替えて来ますね』
「ゆっくりで構わんよ」
パタパタと走って行くセルシアにロイは微笑みながら新聞を読む。
『お待たせしました!』
「そんなに急がなくても。
さあ、食べようか」
『作ってくれたんですか?』
「簡単なものだけど」
ロイは簡単と言ってるが、ふわふわのスクランブルエッグを始めとしたメニューはまるでホテルの朝食だ。
出掛ける前に抱き合ってキスを交わした。
「では、行って来る。
すれ違いになるだろうし。次に会えるのは年明け後だな」
『行ってらっしゃい。
はい、年明け後に』
「気をつけろよ」
これではどちらが先に出勤するのか分からない。
(自分が出来ないからって私に八つ当たりしないで欲しいのだが。
まったく、相変わらずだな)
数少なくなっても嫌味は閣下が居ない前では変わらない。
閣下に一喝されても見えない場所では傲慢な態度も嫌味も変わってはいないようだ。
「あれ…?
ヒューズ、グランドピアノはまだあるのか?」
「引き取りに時間掛かるんだよ。
それなら国民にも人気だし、レンタルにしてるんだ。
手続きも終わったから弾いても構わんぞ。
軍で弾けるのはおまえさんだけだからな」
「…そうだな」
ロイの為に残していると言っても過言ではないだろう。
「ありゃりゃ。
これはまたかなり激しい曲だこと。
リザちゃん、何かあった?」
「いつものことなのですが。
今日は執拗に言われていたので」
「なるほどな。
口だけは達者だし」
楽譜もないのにロイは簡単そうに弾いているが、テンポも速くて難易度の高いと素人にも有名な曲だ。
荒々しさもあるが、弾く度に激しさが増してゆく。
何曲かオリジナルも入れて弾くとロイはグランドピアノの電源を切る。
「中尉、待たせたな」
「…いいえ。
もうよろしいのですか?」
「大丈夫だよ。
このまま事件がないといいな。
いや、事件はなくても騒動はあるだろうけど」
「そうですね。
早番の時点であったようですから」
「騒ぐなとは言わないが、限度があるだろうに」
呆れたようにロイは苦笑いして中尉と戻って行く。
(この調子では夜勤は大変だな。
セルシアがいるから事件の面では大丈夫だろう。
酔っ払いとかに絡まれないといいんだけどな)
書類作業しながらロイはチラッと中尉を見た。
「何かありましたか?」
「いや、この時間帯に中尉と2人なのは久しぶりだなと思ってな。
セルシアが居ないのもハボック達が居ないのも」
「夜勤と強化パトロールもありますからね。
そういえば、ウィンリィちゃんには手紙のお返事を書きましたか?」
「…君は私の親か」
「失礼しました。
いえ、思わず」
「書いたよ。
内容は内緒だけど」
「ふふっ、そうですか」
楽しそうに笑う中尉に一瞬驚きながらもロイは微かに笑った。
「…やれやれ。
君達も変わらんな」
「将軍、リーゼル大佐が居ないのですからあまり煽らないでください」
「失礼だな。
セルシアに援護はされてるが、頼ってばかりではないぞ」
「失礼しました」
「何を言い合ってるんだ!
ふははっ!
雨が降って来たな。
マスタング将軍、また副官に守ってもらうのか?」
((…知らないのか))
野次馬の国民達は次の展開が読めてため息をつく。