ピクリと反応したロイ同様に中尉とセルシアも気づき、その反応にハボック達も言葉が止まる。


「マスタング少将、準備が出来ましたので会場に来てください。
マスコミ各社も招待しておりますので今回は１階の会議室で行います。
連絡が出来ずに申し訳ありません。
いつもの閣下の思いつきで私共も今朝に聞かされ、連絡する前に貴方が囲まれる事態になりました」
「…大丈夫です」


閣下は自分の補佐官にも知らせずに独自の行動だったようだ。


度々あるようで補佐官は呆れたようなため息をつく。


『マスタング将軍、行ってらっしゃいませ』
「お気をつけて」
「では、行って来る」


敬礼で見送られてロイは執務室から呼びに来た閣下の補佐官と向かう。


安全に配慮して授与式ではマスコミ関係者は例外だが、閣下と補佐官１名と授与する当事者しか入室は許されない。


マスコミ関係者は厳重に荷物検査とボディーチェックもされて、液体の持ち込み禁止でカメラも１社で１台と制限されていた。


(…マスコミの数が多いんだが。
これは平和と言えば、平和なのだろうけど)


マスコミの数に驚きながら表情には出さず、ロイは敬礼して入室する。


授与式なのでロイは礼装着用で室内と閣下の前なので帽子は不要と通達があった。


「マスタング将軍、おめでとうございます。
最年少将軍に昇進されて異例の早さでの勲章授与ですね」
「ありがとうございます。
私だけの力ではありません。
今後も変わりません」
「閣下はどうでしょうか？」
「国家錬金術師でもあり、優秀な人材です。
優秀だからこその若くしての将軍昇格ですが、昔ながらの考えの者もいて彼の立場も大変なんでしょうね。
かと言って特別扱いは出来ませんが、優秀な人材を駄目にしたりはしませんよ。
マスタング少将には今後も期待しております」


ロイを認めることで“若い軍人も見ている”というアピールで昇進人事の改善で国民の支持率を上げる狙いがある。


それを含めてロイは理解した上で受け取っているのだから。


「これからも精進致します！」
「期待しておる」


補佐官が勲章を持って来ると閣下はロイの軍服に付けた。


ロイは閣下に敬礼し、授与式が終わって改めてマスコミの囲み取材。


「授与式ってこんなに華やかと言うべきか、生中継されるんですか？」
「いや…通常はしないな」
「マスコミを呼ぶのも異例だし、ロイだって利用されてるのも理解してんだろうけどな」
「異例尽くしですね」
「あの人は目立ちますね」
「どちらにしても凄いっスね」


授与式が生中継されている映像にヒューズも混ざりながら見つめていた。


2016.12.24