episode4 初上陸
『___と、いうわけです』
ロ「…そうか…」
『…気持ち悪いでしょう?(苦笑)』
ロ「いや…よく耐えたな」
そう言ってローは##NAME2##の頭をポンポンと撫でた
自虐的に言ったその言葉に、大人は皆口をつむぎ、「でも今は楽しいので!」と笑い飛ばすのがいつもの流れだった
だから、キャプテンにも笑ってあげなきゃと顔を上げただけなのに
そんなに優しい目で頭を撫でられたのは初めてだった…
私の過去を話したときに聞いた、キャプテンの過去
それは、私と境遇がよく似ていて…
思わず抱きしめてしまった程だった
ロ「俺は耐えられなくて、この世界をぶっ壊そうと思った
なのにお前は、十何年も耐えて、守り切ったんだ
…泣きてぇんなら泣け
もう、耐える必要もねぇだろ?」
そう言ったローの言葉に答えるように、##NAME1##の瞳からは大粒の雫がこぼれ落ちた
止めようとしても、止まらないそれに、##NAME2##もどうしていいのかわからなかった
ただ、ローが何も言わずに上着を頭からかぶせて抱き寄せてくれた
その行動は、昔のあいつと同じだった
恋人というわけではなかった
ただの同期で、親友と呼べる唯一のやつだった
大切な人だった
大切な人の大切な人
自分と歳も変わらない
あいつと過ごした時間はこちらの方が多いはずなのに
キャプテンの行動ひとつひとつがあいつと重なる
あぁ…私たちの中であいつはこんなにも生き生きとしている
キャプテンが、あいつの意志を受け継いで、繋いでくれてる
そしてロー自身の温かさに触れた##NAME1##は
そのまま深い暗闇へと意識を落としていった
『ん…っ……私…
ん!?;』
ガバッと起き上がった##NAME1##の視界には映ったのは、大量の本、本、本…
1度来たことがある部屋だと気づいたと同時に、横に気配を感じた
ギ、ギ、ギ、と横に顔を向ければ、そこには背中を向けて寝ている我らがキャプテンの姿
…上半身裸だが…
『(ん!?まてまてまてっ、昨日っ、昨日は何を…
歓迎会して、シャチが寝たから代わりに船番して、キャプテンが来てくれて、海軍での事を話して…
え、え!?まさか泣き疲れてそのまま寝たの!?キャプテンほったらかして!?
…嘘でしょ…)』
ロ「何してる」
ズーンと頭を抱えて落ち込んでいると、寝ていたはずのローがこちらを向いていた
『…おはようございますキャプテン
…えっと…き、昨日は…すみませんでした…(汗)』
ロ「別に…
さすがに寝てるイッカクの部屋に入ってお前を置くわけにはいかねーからここに運んだだけだ」
『…お手数をおかけしました…(汗)』
ロ「うるせぇ
悪ぃーと思ってんなら、朝メシ持ってこい」
『喜んで!;』
脱兎の如く部屋を出た##NAME1##の後ろで、ローが悪い笑みを浮かべている事など##NAME1##は気づきもしなかった
バンッ
『おはよう!!!』
そう言って勢いよく食堂の扉を開け、みんなに向けて挨拶をしながら一目散にコックへと駆け寄った
『キャプテンの朝ごはんください!』
「お、おう… ##NAME1##も朝メシ食べてくか?」
『キャプテンにご飯お届けしたら食べにくるよ(泣)』
「…あー…いや、お前のもまとめて作るから一緒に持ってけ」
『いやでも「手間が減るから持ってけ」…はいぃ…』
そう言って奥へと消えて行ったコックの背中を見守りつつカウンターへ腰掛けると、水を持ったベポが寄ってきた
ベ「##NAME1##おはよう!」
『おはよーベポ
ベポは体調大丈夫?』
ベ「俺は大丈夫!シャチとペンギンは二日酔いだけどな!」
ベポが指差す方へ顔を向けると、明らかにだるそうにしている男2人の姿が入ってきた
あちらも気づいたようで、ひらっと手を上げて振ってくれたのでこちらも手を振ると
ピシッ
という音とともに固まった
『? 2人ともどうし「##NAME1##、お前昨日どこにいた?」…酔い潰れたシャチの代わりに船番してましたけど(ジトッ)』
問い詰めてくるペンギンに驚きながらも、嫌味を込めてシャチに視線を向けると、「わ、わりぃ」とバツが悪そうな顔をした
まぁ帽子のおかげで顔の半分は見えないのだが…
シャ「ってそうじゃなくて!昨日!どこで寝たんだ!?」
『…キャプテンの部屋だけど…』
そういうと、食堂がどよめいた
そして一斉に##NAME1##の周りへと集まり、口々に…
「キャプテンと"ベッド"で寝たのか!?」「同じ部屋ってだけで別々で寝たんだよな!?な!?」「何もなかったか!?」「どこか体に異常はないか!?」
…さすがに何が言いたいのかがわかった
『キャプテンがクルーに手出すわけないじゃない;
っていうかなんでみんなそんなに慌てて…』
ぺ「##NAME1##、自分が何着てるかわかってるか?」
『え?何って自分のふ……く…………
え!?;
……まさかこれ……;』
##NAME1##が身に纏っているのは、手を飲み込んでぶらりと垂れ下がっているブラウス、おそらくローのものと思われるトラ柄のジャージをはいていた
そこまで理解し、なんでみんながここまで慌てふためいていたのかがわかった
男女が同じ部屋で寝て、女が男物の服を着て出てきたら…
…そういうことだろう
ロ「おい」
食堂に響いた一声に、またピシッと固まった
##NAME1##が入口を見るように伸び上がると、そこには少しばかり楽しそうに笑うローの姿があった
ロ「おせーぞ、##NAME1##」
『…私で遊んだでしょ、キャプテン(ムスッ)』
ロ「それは…どっちの意味だ?(ニヤリ)」
ローの発言に##NAME1##は呆れたが、他のクルー達は顔を赤くして騒ぎ立てた
「どっちの意味!?」
「どういう意味だ!?」
「や、やっぱり##NAME1##とキャプテンは…!!」
「ちげーよ!##NAME1##は"私に自分の服を着せてみんなを驚かせて遊んだでしょ"って言いたかったんだよ!!」
「キャプテンのあの顔!!レア!!かっこいい!!」
『(やっぱりみんな、キャプテンのこと大好きなのね…からかわれて遊ばれてるけど…(苦笑)
まぁ、みんな楽しそうだし、いいか…)』
《島がみえたぞー!!》
館内放送により、みんなの興味はがキャプテンと私から新しい島へと移った
みんなが慌ただしく上陸の準備を進める中、私も手伝おうと席を立とうとすると、コックに朝食を勧められた
そこへローもやってきて、結局食堂で2人で食べることになった
だが新人がキャプテンと優雅に朝食をいただくわけにはいかない
『私は上陸準備を済ませてから食べますよ』
ロ「やらせとけ」
間髪入れずにそういうキャプテンに、『でも…』と準備に駆け回っているみんなの方を見るが、キャプテンは見向きもしない
ロ「ここは海軍じゃない」
ポツリ、と呟いたローの言葉に、全ての想いを込められたのを察した
海軍にいた頃のように規則に縛られない
自分の事を優先していい
自由でいいのだ、と…
ロ「大体、てめーの仕事サボって新人に船番任せるやつがいるんだぞ
んなこと気にしてどーすんだ」
なんか…シャチのおかげで全てが台無しになった気分だ…
『…それもそうですね』
キャプテンの言葉に同意して、一緒に朝食をいただくことにした
おまけ
『え、キャプテン…パン、ダメなんですか?』
ロ「…悪ぃか」
『悪くはないけど…パン嫌いな人は初めて見ました』
コック「船長、梅干しもダメなんだよな」
『え?おにぎり好きなのに??』
ロ「(ギロッ)」
『じゃあその中身は何なんです?』
コック「こんぶだ」
『な〜る』