episode4 初上陸



宴は朝まで続き、1人、2人と寝落ちしていって食堂は寝室へと早変わりした


キャプテンも自室に戻り、イッカクはお風呂まで済ませて寝るという女子力を見せつけられた


そんな中私は、持ち前酒豪力を発揮し
(気を遣ってあまり強いモノを飲んでいなかったこともあるが…)





船番交代を命じられた







歓迎会とは……






『解せない…
はぁ〜、全く…船番が酔っ払って寝落ちしてどうすんのよ…シャチのバカ』


だが、この歓迎会のお陰で一気に仲間たちとの距離が近くなった


みんなが口を揃えて「タメ口!敬語禁止!!遠慮すんな!」と言われ、元々猫被るのが苦手な私は自前の口の悪さを発揮してみた


なのに…海賊のサガなのか…
みんなは気にせず、素の私を受け入れてくれた


警戒心が強い私が、出会って2日で素を出そう。と思えたのも驚きだった



なぜそう思ったかは自分でもわからない



『(ん〜…なんでだろ…海軍に裏切られたばっかりなのに…いや、元々海軍には脅されてたもんだしまた違うんだけど…

…ここの空気は、あいつの面影が見えるから…かな…)』


ロ「いきなりサボってんのか
いい度胸だな」


『Σぅわっ!?!?
キャプテン!?え!?自室で寝てたんじゃ…!?』


ロ「目が覚めてな
船番のシャチが寝てるから誰が船番してんのか確認しに来ただけだ
まさか主役が船番してるとはな」


『私もまさか船番が酔っ払って寝落ちするとは思いませんでした(怒)』


シャチの無責任さを愚痴ったら、クスクスと笑いながらコーヒーを手渡してくれた



夜の海は冷えるので、ありがたく受け取る



もらったコーヒーに口をつけながら、横に座ったキャプテンの顔をチラリと覗けば、視線は合わないものの口元が笑っているのが見えた


なぜか…私も嬉しい気持ちになる



ロ「あいつらとは上手くやっていけそうだな」


唐突に放ったローの言葉に##NAME2##は一瞬固まるが、先程の歓迎会を思い出して笑った



『ふふっそうですね
みんなあったかくて…思わず素で話しちゃいました


…きっと、キャプテンがあったかいからですね(ニコッ)』



そういえば、今度はローが固まる番だった



『? キャプテン?』


ロ「…んなことを俺に言うやつは、お前が初めてだ」


『…そうですか?
飲み会で自分に気を遣わせまいとカウンターで呑んで、潰れた人がいたらさりげなく視界に入れておいて、ここに来る前に食堂のあたりから音がしたからみんなに毛布かけてたんでしょ?


ま、掛け方は雑になってそうですけど(クスクス)


今だって、シャチが酔い潰れるから誰かが船番をやってるんだろうと信じて
コーヒーを自分の分と2つ持ってきて下さった


これをあったかいと言わなくて何と言います(ケラケラケラ)』



ロ「…」


照れたのか、ローは無言でコーヒーを口につけるだけで返事をしなかった


それをみた##NAME2##は、声に出さないように心の中でまた笑ったのだ


声に出したら、きっと怒るだろうと思ったからだ(正解)



ロ「お前と…あの人はどんな関係だったんだ?」


あの人…それはきっと、私達を巡り合わせるきっかけをくれた人の事だろう


キャプテンにとっても、とても大切に想っていた人なのだとわかる


##NAME1##は目を細め、懐かしむように話し出した


『…前にも言いましたが、同期で…悪友、という言葉がしっくりくるかもしれませんね

私は本部にいることが多かったので、彼の上司とパイプ役になってました

月に一度会う程度でしたけど

…同期というのもあって、色々懇意にしてましたね

キャプテンのこと、同情もあっただろうけど、楽しそうに話してましたよ

こっちが聞き飽きるくらいにね(ケラケラ)』



カラカラと笑う##NAME1##を横目に聞いていたローだったが、コーヒーに口をつけてからポツリと言葉を零した


ロ「…俺もあの人からお前の話しを聞いていた

…あの人は…お前を"可哀想なやつなんだ""助けてやりたいのに、俺にはそんな力がないから助けられない"と言っていた」


『!…』


ロ「前にも言ったが、話したくないならいい
だが、お前はもう"ハートの海賊のクルーだ"という事を


忘れるな」



俯いて何も反応がない##NAME2##に、ローをしばらく待ったものの、話す気が無いと判断し立ち上がる



ぐんっ


と右腕が引っ張られて立ち上がりきるころができなかった


ゆっくり、腕の先を見れば、##NAME2##が俯いたままローの腕を掴んでいた


ロ「…どうした」


ローの声がけに、顔を上げた##NAME2##の顔は、不安と恐怖の色がみてとれた


それに気づいたローは「無理にとは言ってねぇ」と再び##NAME2##に言い放つが、##NAME2##は1度俯き、次に顔を上げたときには覚悟を決めていた



『私の話しを聞いて…私の存在が邪魔に思うかもしれません

その時は、船を降りろ、と、遠慮なく…言ってください

たった2日の付き合いだけど…たった2日だけの時間だったけど…

私は、ここのみんなが好きになった


大切だと思えた


あいつのお願いなんて願い下げたって思ってたのに


あなたを守りたいと思ってる


だから、「もういい」え…?』



ローは##NAME2##と視線が合うようにしゃがみ込むと、真っ直ぐ、##NAME2##の瞳を見つめた


ロ「いいか、俺がお前をこの船へ誘ったのは"俺自身の意思"だ


あの人から言われたからじゃねぇ


その上で、お前の話しを知りたいと思ったのは、お前は俺の部下でハートの海賊団のクルーだからだ


お前がどんなものを抱えて、何に怯えてるのかも俺にはわからねぇ




だがこれだけははっきり言っておくぞ




どんなもんを抱えてようが、お前はハートの海賊団のクルーだ
お前が嫌だと言わねぇ限り、この船から降りる事はない



まぁ、嫌だっつっても手放す気はないがな…?(ニヤリ)」





『…ふ、あははは!
全く…いい漢ね、キャプテン(ニカッ)』


ロ「今頃気づいたのか?」


『ふふ、そうかも
…(ほんと、私って人に恵まれるよなぁ…)

…わかりました
全て、お話しします』
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