第12話 緋色シリーズ
沖矢の首に変声期がないと確認した瞬間、安室さんのスマホが着信を知らせる
沖「電話…鳴ってますけど…」
安「あ、あぁ…」
ピッ
安「どうした?遅かったな……え?
あ…赤井が!?」
『現在追跡中ですがっ、赤井がいるとなると無闇に発砲ができません…っ』
安「<ち…っ>」
降谷さんの悔しそうな声が聞こえるが、前の車を見ると赤井が拳銃を構えていた
『(マズイ!!!!)
すみません!!代わって下さい!!!』
そして何度も入れ替わってもらっている彼に申し訳ないと思いつつも、運転席に座り前に視線を向けた瞬間
パンッ
と銃声が聞こえた
そして右前輪を打ち抜かれた
『っ!!
全員!!!!歯食いしばって!!!
後続車!!!急ブレーキ!!!!』
車体を安定させようと必死に安定を保ち、後ろにいる部下達へ指示を出すがブレーキが間に合わなかったようで##NAME2##達が乗る車にぶつかる
『きゃあ!!!』
何とかブレーキを踏み続け、後続車から次々とくる衝撃に耐える
『っ…ああ゛!!!!もう!!!』
「っ、##NAME1##さん、お怪我は…」
『私は大丈夫ですっ!!
みなさん!ケガは!?』
車を降り、車内にいる部下や後続車にいた部下たちの安否確認を行っていると、脇から電話越しに降谷の声が聞こえた
安「<おい!!##NAME2##!!!!
応答しろ!おい!!>」
降谷の声で電話を繋ぎっぱなしだったと思い出し、再び電話を取る
『すみません。赤井が拳銃を発砲しました』
安「<あ…、赤井が拳銃を発砲!?
…それで追跡は!?>」
『先頭の車はタイヤに被弾してクラッシュ…後続車もそれに巻き込まれて走行不能者続出で…』
安「<動ける車があるなら奴を追え!!
今逃がしたら今度はどこに雲隠れするか…っ>」
『でも……っ………
いえ…
…追う必要はなくなったようです』
部下のけがの具合を見ながら降谷の指示を仰いでいると、目の前に停まる1台の車…
赤「大丈夫か?」
『…よくもまぁぬけぬけと…赤井秀一…』
安「<あ、赤井!? お、おい!赤井がそこにいるのか!?おい…っ!>」
赤「悪く思わんでくれよ…仕掛けてきたのはあんたらの方だし…
ああでもしなければ死人がでかけぬ勢いだったからな…」
『…あら、私がそんな無能な上司に見えまして?』
嫌味を込めて言えば「そうか、君がここの現場指揮官だったか…先ほどの状況判断にドライブテクニックは見事だったよ」とお褒めの言葉を
頂いた
…嬉しくない…
赤「そこで相談だが…今、君が持っている携帯と…さっき発砲したこの拳銃…交換してはくれないか?」
『…』
安「おいっ?どうしたっ?状況は!?
応答しろ!!」
赤「<久しぶりだな…
バーボン…いや…今は安室透君だったかな?>」
安「(赤井…秀一…っ)」
赤「君の連れの車をオシャカにしたお詫びに…ささやかな手土産を授けた…」
##NAME2##は自分と交換した拳銃を見る
どうやら楠田陸道が自殺に使用した拳銃だったらしい
そしてまさかの会話が聞こえた
赤「ここは日本…そういう事はFBIより君らの方が畑だろ?」
『!(…マズイ…こちらの正体がバレてる…おそらく、降谷さんも…)』
赤「組織にいた頃から疑ってはいたが…
あだ名が“ゼロ”だとあのボウヤに漏らしたのは失敗だったな…
“ゼロ”とあだ名される名前は数少ない…
調べやすかったよ…
降谷零君…」
『!!
…全員、銃を降ろしてください』
「し、しかしっ」
『降ろしてください』
「っ、はい…」
こちらの様子を伺いながら、降谷と話を続ける赤井
赤「恐らく俺の身柄を奴らに引き渡し、大手柄をあげて組織の中心近くに食い込む算段だったようだが…
これだけは言っておく…
目先の事に囚われて…
狩るべき相手を見誤らないで頂きたい…
君は、敵に回したくない男の1人なんでね…
それと…
彼の事は今でも悪かったと思っている」
『!!!(っ…、落ち着け…っ、今感情的になってもメリットはない…)』
赤「…君の部下は優秀だな」
安「<え?>」
赤「よし、キャメル車を出せ…」
そういうと、##NAME2##の携帯を投げてよこし、そのまま車を走らせた
『…降谷さん…』
携帯を耳に当て、未だつながる降谷さんへ声をかけるが…
おそらく、今彼の心中は乱れている…
応答がない…
『…零さん』
安「<!…あぁ、すまない
我々の正体を知られた以上、これ以上の深追いは危険…
撤収してください…
上には僕の方から話しますので…>」
『…了解しました』
ピッ
降谷との電話を切り、後ろを振り返れば軽傷ではあるがケガをした部下が数名…
その応急処置をしようと座り込むと、みんな落胆した声で私の名前を呼ぶ
この空気を換えようと、なるべく明るい声で言い放つ
『…さて!タクシーで帰りますよ!』
「「「…え?」」」
『こんなこともあろうかと、事前にタクシー会社に予約してました
今かけるので15分くらいでここまで迎えに来てくれるでしょう…あ。もしもし?』
そして予定通り来たタクシーに乗り込み、警察庁へと運転手に声をかけ、領収書も警察庁でと言い、部下たちを先に送り出す
そして最後の車に部下達と一緒に乗り込んだところで降谷さんから電話がかかってきた
『…ちょっと失礼。
はい。##NAME1##です』
降「<…>」
『…?
降谷さん?』
降「<…##NAME2##…>」
いつもより弱しい声で話しかけてくる降谷の声色から、作戦が失敗したこと、自分が敵の策にハマってしまっていた自分が不甲斐ない気持ちでいっぱいなのだろう…
『…はい』
降「<…すまない>」
『…何がですか?』
降「<俺は…>」
『…降谷さんは、今どうすれば最善の策なのかを考えて実行されました
そしてこれだけの人数を動かす責任と重圧にいつも耐えて、前を見据えてしっかりと立ち、私たちを支えてくれています
あなただけの責任ではありません
赤井がこちらに来る可能性を見いだせなかった、私の責任でもあります』
降「<だが…>」
久しぶりの赤井との対峙に加え作戦失敗…そうとう精神的に来ているようで、このまま家に帰れなかったらマズイなぁと思い、周りに部下がいるが腹をくくる
『零さん、今日はシチューがいいな』
降「<え…>」
「「「ぇ…」」」
降谷に加え、部下達も小さな驚きの声を上げるが気にしない
窓の外を眺めながら続ける
『野菜は大きめで、ちょっと味は濃いめで…
帰ったら…お腹いっぱい食べたいなぁ』
降「<あぁ…わかった>」
『ふふ、楽しみにしてる
ひとまず、本庁で…』
降「<あぁ>」
そう言って電話を切る
視線を感じ顔を部下達へ向けると、ポカーンという効果音が聞こえてきそうなマヌケ顔だ…
『…忘れてください…』
「いや無理です」
「やっとくっついたんですねぇ…おめでとうございます」
「##NAME1##さんに落ちる男の気持ちが、今、わかりました」
『ちょっと最後のそれどういう意味です?』
そんな談笑ができるほどに回復した状態で本庁へ戻れば、##NAME1##と降谷は理事官に呼ばれ最大級に怒られた