第10話 私と降谷さん






安室の家の駐車所に到着し、##NAME2##に声をかけるが起きる気配がない


脈や呼吸を確認すると、苦しそうではあるが弱くはない


助手席からパルを横抱きにして部屋へと向かう


扉を開け中に入ったところで、扉の閉まる音で目を覚ました




『う…』


降「起きたか

もう少しの辛抱だ」



寝室へ行き、横に寝かせる


『血がつく』と小声で言われたが、「大丈夫だ」と声をかけ頭を撫でる


再び『うっ』と苦痛を訴えたので救急箱を取りに行く


本来なら病院へ行ったほうが良いのだが…


組織の目があるかもしれない中で警察病院へ行くのは難しい…かといって普通の病院へ行けば警察へ連絡を入れられてしまう



バーボンも、パルも、けがをしたときはお互いのけがを見て治療していた


もちろん次の日には組織の目がないかを警戒しつつ警察病院へいくのだが…


つまり今日を乗り切れば…あと8時間乗り切れば朝一に行っても事情を分かってくれている医師が見てくれるはずだ



ひとまず鎮静剤と痛み止めを飲ませ、傷口を確認する


幸い玉は貫通しているため、今できることは止血


縫ってもいいのだが、麻酔がないときにそれはキツイだろうと判断しキツめに包帯を巻いていく


包帯の痛みで起きた##NAME2##に「まだ寝てろ」と声をかけ、何か温かいものでも飲ませようと立ち上ろうと膝を立てた時、後ろから服の袖を引っ張り止めた



降「どうした?」


『…』


降「…なにか温かいものでも持ってくるから、少しま『なんで…キスしたんですか…』…。


…悪かった。お前の気持ちも考えないで」



『そうではなく…あれは…ジンたちを欺くための…作戦ですか?』



降「…」



『答えてください…降谷さん…』



降「…」




立ち上がろうとたては膝を引っ込め、##NAME2##へ向き直る、片手で頬を撫で、袖をつかんでいた手をもう片方の手でつかんだ




































降「好きだ」





































静かに、部屋に響いた3文字




都合のいい夢なのか



現実なのかわからなくなった



頭の中が真っ白になった




降谷さんは目を伏せ、いつもより弱弱しい声で話し始めてくれた



降「好きになったのは…警察学校の時だったんだが…いつ、とまではわからない…気がついたら好きになってたんだ


…本当は、言うつもりはなかった



俺達はこんな職業だ…いつ、殉職するかもわからないし、潜入捜査の延長上で男女関係を持つこともある


何ヶ月も会えないことも、連絡すら取れないこともあるだろう


特に、今俺は降谷零、安室透、バーボンとそれぞれで態度も関わり方も異なる


##NAME2##と過ごせる時間も限られているし、外へ出るときは降谷零ではなく安室透だ…


本来の自分で出かける事はできても、それは危険を呼ぶだけでデメリットでしかない



…そんなめんどくさい男で君を縛りたくなかった


だから、この思いを告げる気はなかったんだが…」





再び##NAME2##へ顔を上げ、少し寂しそうに、諦めたような表情で笑った




降「…まさか、同じ部署で同じ組織に潜入するとは思わなかったよ


それに今日…君が撃たれた時、頭が真っ白になった…


あの一瞬は、バーボンではなく、完全に降谷零になっていた…潜入捜査官失格だな



でも、君を失うかもしれないと思った時…何も考えられなくなって、手も足も冷たくなって…



…##NAME2##…





君を守る為なら、喜んでこの命を懸ける



君の笑顔が見れるなら、“相棒”として側にいる



…こんな時に、急で…すまなかった」




苦笑を漏らし、再び立ち上がろうとしたところで##NAME2##が体を起こす




降「っ!おい!まだ寝て…っ」









今度は##NAME2##からキスを落とす








『私も、降谷さんが好きです』




降「…」





呆然としている降谷を見て少し笑いが零れる




『真面目で、日本のために毎日忙しいのに弱音も吐かずに完璧にこなして…


疲れも見せずに私たち部下の前に毅然と立つ


そんな降谷さんの信念と覚悟に、憧れたし尊敬してます



そしたら私も…気がついたら好きになってました





…私は、この日本を守りたいと思って公安に入りました





けど、日本を守りたいと思う気持ちと同様、降谷さんのことも守りたい




…潜入捜査官である私達は、普通の子と同じ事はできないかもしれません



でも、だからこそ、私は少しでも長く…




降谷さんのそばにいたい




明日死ぬかもしれないなんて、誰にでも言えます


ただ、私たちの方が死に近い場所にいるだけです



だから私は、降谷さんの足手まといにはなりたくなくて…射撃技術もナイフ術も諜報術も…



あなたに近づきたくて努力してきました



あなたの負担にはなりたくなかったから…



あなたも、少しでも守れる可能性があるのなら


私はきっと、どんなことでもやり遂げられる



また、降谷さんの隣に立ちたいから





…絶対に死なない、とは約束はできません…




でも、私は命が尽きるその瞬間まで、あなたの元へ帰ろうという想いは尽きないでしょう



最後の最後まで…降谷さんの顔が浮かぶ自信、ありますもん』






笑いかけると、涙目になっている降谷さんがいた


抱きしめたくなって手を伸ばすと、腕の中に降谷さんの方から入ってきて抱きしめる形となった



抱きしめている降谷さんの手は少し震えていた




降「…##NAME2##…っ」



『…降谷さん…大好きです』




そういうと、少し息をのむ声が聞こえた




『…降谷さんの泣き顔、私以外の人に見せないでくださいね?』



降「…お前もな…」





降谷さんに言われて初めて気がついた



自分の頬を伝う涙に



きっと、言葉は交わさずとも2人にはわかっていた












いつ、殺されるかも、死ぬかもわからない



絶対、生きて帰る…約束はできない


してしまったら、裏切ってしまう可能性がある



嘘はつきたくない



時間があとどれだけ残されているかはわからない



それでも、日本の為に、あなたの為に













生きたい












と強く、強く思ったんだ
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