第10話 私と降谷さん








昔話に花を咲かせたあと、普通に翌日、登庁した





もちろん、なにもない




…あったらビックリだが…




同じタイミングで同じ時間に登庁したのが初めてだったからか、『おはようございます』「おはよう」と入った瞬間、みんな動きを止めてこちらを凝視した




『?』



降「なんだ…」




降谷さんが声をかけるが、固まったまま…



とりあえず席に着くかと思い至ったと事で後ろからバサッっと書類を全て落とす風見さんがいた





『だ、大丈夫ですか!?;』



風「…おはようございます…」



降「…徹夜か?」


風「いえ…自分も今登庁したところで…」





全く書類を拾う気配もなく、ただ駆け寄る##NAME2##と立ったままの降谷を交互に見て固まるだけの風見を見て##NAME2##と降谷は首をかしげる




降「…何かあるなら言えよ?」




悩みでもあるのかと、あるなら聞くぞとの意味も込めていったのだろうが「いえ…」とまたフリーズしてしまった



『…本当に、どうされたんですか?』



訳が分からないまま自分の席へ向かう降谷の背中を目視しながら口元を手で隠し風見へ声をかける



風「…##NAME1##さん、昨日はどちらへ帰られたんですか?」



『昨日?
…実は安室と##NAME3##でちょっと動いてて、その流れで降谷さんの家にお邪魔しちゃっ「何もなかったか?」…て……ないですよ』



風「本当か?本当に大丈夫なんだな?」




両肩を捕まれゆさゆさと揺さぶれながらも真面目に答えておいた




『…降谷さんがそんな貞操なしなワケないでしょう?

あの人が相手にと望むならより取り見取りでしょうが』



風「それはそうだが…」



『…もしかしてみんな、私と降谷さんが一線超えたとでも?』



風「同じボディーソープの匂いがして何もないというほうが難しいと思うぞ」



『…たしかに…』




確かに昨日は突然だったため服装は化粧道具は一式持っていたが、シャンプーなどはさすがに手元になく降谷さんのを使わせてもらった


特にこだわりもないからありがたく使わせていただいたのだが…


まさかこんな疑いをかけられるとは…



降「##NAME2##、そろそろ始めないと間に合わなくなるぞ」



わざわざ入口まで戻ってきてくれて、風見さんに「書類大丈夫か?」と声をかけるのは流石の一言


だからこの人は人望が厚い



『すみません』「大丈夫です」とそれぞれに答えると満足そうに「そうか」とだけ答えまた席へと戻る


##NAME2##も今日の予定を頭で整理しながら、ふと気づく



『…降谷さん』


降「なんだ」


『今日、もしかしてバーボンとですか?』


降「そうらしいな」


『…了解です』




そういえば昼にベルモットから呼び出されていたのだ


ベ「私だけだと大変だから、あなたも協力して?」


と、あるホテルで開かれるパーティーに出席するのだが、ガードが堅い為2手に分かれて情報を取りたい、と…


そして「男手も必要ね」と言っていた


…ベルモットが探りで頼る男と言えばバーボンだ


その結論に至ったのがつい数秒前



あー、ならこの書類の山午前中でできる限り終わらせなくちゃなーと愚痴りながらもやる気スイッチを入れた時だった



PULLLL  PULLLL 




この音は…




『…バーボン』



降「! 全員、作業を止めろ!

音を出すな!」



急に言われた降谷さんの指示にも即座に対応する所は流石だと思う


なんせ相手が相手だ


すぐに出なければすぐ疑ってくる



めんどくさい男だ…




部屋が無音になったことを確認して電話に出る




パルとして






『…なに?ジン』



一瞬で##NAME1####NAME2##からパルに切り替わった声や雰囲気を間近で見て、気配で驚いていることが伝わる

…あぁ、なるほど、“全員退出”の指示を出さなかったのは勉強も含めて、か…


抜け目のない人だ…


相手はジンだぞ…授業料高くつくぞ~と思いつつチラ、と視線を向ければ不敵に笑う私の上司


あ。これ私の思考読まれてるな



スピーカーはこちらの音も拾われてしまうので、音量は少しでも聞こえるようにと大きくした




ジ「<お前、今日あの女と任務だろ>」



『だったら?』



ジ「<あの女のターゲットとは別に、組織にもぐりこんだネズミの飼い主がいる>」



『…ふぅ~ん?

それで、それを私にどうしろと?』



ジ「<どこまで情報を掴んだか吐かせろ

後は好きにしろ>」




と、いうことは公安で匿える、か


ベルモットがいるが、バーボンと一緒ならいつもよりやりやすいだろう



会話を聞いていた降谷さんが頷いてくれてるので、後で手は回してくれるはずだ



『わかりました

…にしても最近多くないですか?セキュリティー甘々で吐き気がするんですけど?』



ジ「<ふん、ネズミは炙り出す

てめぇの脳に風穴が空かないことを祈るんだな>」




『あら、つい先日私に照準あててた人が言うんですか?』



先日の怒りを思い出し少し殺気をの滲ませながら挑発的に答えると「…」と黙り込んでしまった


めずらしい…反省しているのだろうか…



『はぁ、いいです。NOCの疑いが晴れたなら何も言いません


…殺意は湧きましたがね?


ひとまずその件はわかりました。その男の詳細をメールで送ってください』



ジ「<あぁ。報告を忘れるな>」



『了解』




話は終わりか、と耳元から電話を離すと「それと」と続けた…なんだ。一度で言ってくれ




ジ「<お前、バーボンと組んでこそこそ嗅ぎまわっるらしいな?>」



上司の潜入時の名前は公安でも知る人は多くない


わずかに知っている人たちの空気がピリっと張り詰める



この間ので納得してなかったか…まぁしないわな


どうするか、と思考すると、携帯の背に頬を当てるように降谷さんが近づいてきた


つまり携帯を##NAME2##と降谷で挟んでいる状態である




バ「僕が何か?」



ジ「<…ち、てめぇもいたか>」



バ「あまりパルをイジメないであげてください?

僕のワガママに付き合ってもらっているので…あぁ、嫉妬したなら、“しばらくお貸ししますよ”?」




つまりそれは返せよという意味も込められており…ジンには効かないと思うけど…




ジ「<ちっ…あまり調子に乗るなよ、バーボン>」



バ「おや怖い

でも申し訳ありませんが、パルは譲る気ありませんから」




ジ「<ふん…また連絡する>」






そう言ってジンが切ったことを確認してから「もういいぞ」とみんなに声をかける降谷さん



1回の任務で2つやることがあるのかーと携帯を机に放り伸びをすると「で、」と降谷が見下ろす



…あれ、ちょっと怒ってる?なんで?



降「ジンに照準あてられたとか、バーボンとコソコソと、とか…色々聞きたいことがるんだが?(ニコ)」



『…や、ほら、ベルモットが最近ジンがネズミが入ってるって気にしてるよ~バーボンもかって疑ってるよ~と言ってたので伏線としてですね!;「俺が聞きたいのがそっちじゃないことくらい、優秀なお前ならわかっているよな?」………………すみません;』



降「はぁ、まぁいい

次からはどんな細かい情報でも俺へ報告しろ


一応、パルの疑いは晴れてるみたいだしな…」



ポン、と頭に手を乗せた


きっと、疑いを晴らすために無理難題を押し付けられたと…それが暗殺であったと察してくれたのだろう


この人が撫でてくれるときは大体それを知った時だ



組織に潜入して初めて、もう何度も暗殺任務はこなしていたのに、少しの油断で腹に一発銃弾を受けた時に降谷さんに言われた





降「1人でなんでもやろうとするな!

あの場には俺もいた!俺を使え!


自分の身を犠牲にしてでも日本を守りたいと思うなら警察官なんて辞めろ!!


死ぬ気で生きて戻って、少しでも長く日本を、人々を守れるように努力しろ!」





そして泣きじゃくる私の頭に、あの大きな手を乗せてなだめてくれた



あの後からだ


降谷さんは私が無理してそうな時や落ちこんでいる時…私をなだめる時は必ず頭を撫でてくれる



案外安心するのだ。これは私の安定剤に成り代わってきていると思う



降「さ、この山をさっさと片付けるぞ」



『はい!』
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