第7話 探偵隊の夜想曲
蘭「ほ、本人って…」
安「毛利先生がトイレに入ろうとしたときに丁度返信が来ましたよね?
コナン君や##NAME4##さんが入ろうとしたときも…タイミングが良すぎて不自然だとは思いませんか?」
コ「それにトイレの前の床にさ、何かを引きずったような痕跡があったよ?」
安「おそらく、その誰かは…
何らかの事情で依頼人を連れ込み、まだあのトイレの中に隠れているんですよ」
コナンと安室で事務所に起こっている怪奇現象の謎を解いている時だった
パンッ
乾いた音が響き渡った
コナンは一目散にトイレへと向かい扉をあける
中には両手足を拘束されガムテープで口を塞がれた女性の傍らで、男が拳銃を持ったままうなだれていた
『っ蘭さん、こちらへ』
蘭「え、は、はいっ!」
『コナンくんも』
コ「え、や僕は…」
『子どもが見るものではありません』
コ「…はぁい…」
蘭を外へ誘導しつつコナンへ声をかけた
最初は動かないつもりだったようだが、少しキツく言い放ち半ば無理矢理外へと連れだした
『…(いくら殺人現場を見慣れているとはいえ…この子には悪影響でしかない
…に、しても…)』
人が死んでいるのを目の前で見たのに、いくら慣れているとはいえ動揺した様子も見せなかった
『…(どういうことだろう…)』
トイレに居た女性は樫塚圭と言う毛利さんの依頼人だった
その件で事務所を訪れたら、自殺した男にスタンガンで気絶させられ、ガムテープで拘束された、ということらしい
目「それで、樫塚さん
毛利くんたちが帰って来て焦ったこの男は銃口を口の中に入れて発砲し自殺したというわけですな?」
樫「はい…逃げないようにブーツを脱がされ靴紐まで抜かれました」
目「しかし何の目的で貴女をトイレへ?」
樫「ず、ずっと…質問責めにあっていました
この鍵はどこの鍵だ…早く言わないと殺すぞって」
安室とコナンはそれぞれに思うところがあるらしく、険しい表情をしていた
樫「凄く、焦っていたみたいです
早くそのロッカーを見つけないとやばいって言ってましたから」
目「しかしねぇ樫塚さん
本当にあの男に見覚えは無いのかね?目的が貴女のお兄さんの遺品なら、お兄さんの知り合いと言う可能性が高いんだが…」
樫「兄の友人には…あまりあったことがありませんから」
安「ちなみに、お兄さんは何で亡くなったんですか?」
樫「…」
安室が右側から問いかけるが彼女は無反応
答えたくないのかとも思ったが、なんの反応なく、となると聞こえていない…?その距離で…?
安「亡くなったお兄さんの死因は?」
樫「あ、はい…4日前に事故で…
これが兄ですけど」
安「へえ、待ち受けにしてるんですね」
『ずいぶん仲の良いご兄妹だったんですね』
もう一度声量を上げて問いかけた時にやっと気づいた様だ
そしてこの待ち受け写真…
兄弟、というか…
ふ、と視線を上げると目の前に安室の顔があった
コクッと頷き降谷の表情をのぞかせた所を見ると、安室も彼女の右耳が聞こえていないことに気づいたようだ
ならなぜ右耳が聞こえてないのか…
持病でなければ考えられることは1つだろう
目「携帯電話といえば、自殺した男のこの携帯、妙なんだよ…」
目暮警部がそうこぼしたので、意識をそちらに移す
その携帯電話のメールの送信履歴が、樫塚さんを装って「会うは場所を変えたい」という毛利探偵に宛てたメール以外は全て削除されていたらしい
しかも新しい機種ではなさそうなのに受信、送信メールが1つだけに電話帳も真っ白
男はあとは樫塚さんの携帯を使って送信していたらしい
毛「型落ちした携帯を安く買ったんじゃないんスか?
ほとんど傷ついてないし…」
目「それにだ、携帯と一緒に男のポケットに入っていた小銭や財布も引っ掛かる」
目暮警部は男のポケットの中身を説明してくれた
男の上着のポケットには樫塚さんから取ったコインロッカーの鍵、スタンガン、タバコ、ライター
そして小銭は全部で5千円近くも入っており、財布の中身は1万円札が2枚、5千円札が5枚、千円札が47枚
安「あの、すみません。もしよろしければポケットの中に入っていた物を見せてもらえませんか?」
コ「おじさんも見たいよね?」
毛「え?あ、ああ、そうだな…」
目「そういえば、樫塚さん」
樫「はい」
目「トイレの遺体の足元に落ちていた2枚のタオルのうち、片方の先が濡れていたようですが、なぜだかわかるかね?」
樫「さぁ、私には…怖くてずっとうつむいていましたから…」
目「それと、そのタオルの下にあったあなたのブーツの靴ヒモの先に結び目があって、ブーツに引っ掛かっていたんだが…」
樫塚「あれは子供の頃からの癖です…」
兄から教えてもらったというそれに、また涙ぐむ樫塚さん
彼女を見て毛利さんは「事情聴取は明日」と改めて事情聴取することになったので彼女に身分証明書を求めたが、あいにく持っておらず明日保険証を提出することとなった
安「あの、家に帰るなら、僕の車でお送りしましょうか?」
『(…何を考えているのだろう降谷さんは…)』
思わず表情は変えないが降谷をガン見してしまった
安「近くの駐車場に停めてありますし、もしかしたらあの男の仲間があなたの家のそばで待ち伏せてるかもしれませんし…
##NAME4##さんもお送りする予定でしたから、遠慮なさらず」
樫「わざわざすいません」
安「いえいえ、そんな。礼には及びませんよ」
樫塚さんも頷いた事で、彼女を家に送る事になった
目「…ところで、だ。
なぜ彼らがここにいるんだね?」
毛「いや~、実は安室くん、私の一番弟子なったんスよ!」
目「弟子ィ!?」
毛「##NAME3##先生とはたまたまお会いしまして!」
目「ったく、まーた君の周りに探偵が1人増えたわけか…」
目暮警部の言葉に降谷が反応する
安「え、またって?」
目「ああ、君のほかにもいるんだよ…
最近、毛利君と一緒にチョロチョロ現場に顔を出す、若い女探偵がな…」
安「へぇー…若い女性の探偵ですか
それは是非、会ってみたいですね…」
一瞬、安室の声のまま鋭くなった視線は降谷の物になった
世良真純さんか…
蘭ちゃんと同じ帝丹高校でクラスメイトの女子高生
たまに学校をサボる(探偵業で)ようなので##NAME3##として会うのはこの間がはじめてだったが…
降谷さんがなぜ彼女に興味を持っているのかはわからないが…恐らく赤井さん絡みだろう
赤井秀一とはまだパルというコードネームを与えられていないときに数回任務を共にした
彼のスナイパーとしての腕は本物で、こちらも安心して敵に突っ込むことができた
そんな彼がFBIの赤井秀一だと降谷さんから聞かされた時はビックリしすぎて固まってしまった
今は死んだらしいが、降谷さんは「あの男が死ぬはずがない。生きている」と断言した
…つまりはそういうことだろう