第五話 西川先生






ショッピング、映画、お茶…そんなことをしているうちに



あっという間に夕方になった




西「この後、知人と会い約束をしてるので(ニコ)」



『そうなんですね! 楽しみです(ニコ)』



西「えぇ、僕も、楽しみです(ニコ)」







夕方…風見さんは用事があるから別の人がついてるはずだけど…



チラリ、と周囲を見渡す




『(まぁ風見さん以外の公安の人だから、私がわかるワケがない……………え?)』




一点、見覚えのある色が目に留まった




いやいや忙しいあの人がわざわざ自分の監視役になるなんて…



そう思ったが、向こうもこちらの視線に気づき


口角を上げた





『…(…あの人買って出たのか…;
降谷さんてば…;)』




西「##NAME4##先生?」



バッ
『はい(ニコ)』




西「では行きましょうか」



手を差し出され、右手を重ねる



『(ヤバイ…どこに行くのか全く聞いてなかった…;)』



一応自分に盗聴器は仕掛けている


風見さんに渡してあるが、今は降谷さんが持っていることだろう…




そして西川先生についていくと、だんだんとホテル街に…










…………あら~いきなりかぁ~









呑気にそう考えていると、さっさと連れ込まれ、さっさと部屋へと入っていった




西「よぉ、上野」



上「西川!久しぶり!」





入った瞬間わかった



コイツが売人だ、と



この部屋を包む甘ったるい異様な臭い



大麻などのクスリ独特の臭いだ




……少し、マズイか?





恐らく、ここまで部屋に充満していると言うことは、既にこの植野という男がクスリを使用したと言うこと


そしてここで今の今まで使っていて、在庫がない、なんて話しはないだろう


…だとすると…





『…すみません。私急用を思い出して「そんなことおっしゃらずに」




扉へ翻すが、後ろ手に両手を捕まれてしまう



西「せっかく植野が“教材”を持ってきてくれたんですし」



上「3人で仲良く“勉強”しましょう?」




『っ…んっ!?』




今までの努力は水の泡だが、仕方ない


そう決意し、力を籠めようとしたとき



口を何かでふさがれた






『ん~~~!!!』





そしてそのまま部屋へ連れ込まれ、ベッドに押さえつけられる






西「大丈夫ですよ


すぐ気持ちよくなりますから」










『(っ甘ったる…っ これ、“バラ”か!?)』



さすがにマズイと思ったが、既に遅かった



『っ…う…あっ?』



身体が熱くなる


そして中に浮くような浮遊感


と共に襲ってくる気持ち悪さ




わかってる…っ




バラの初期症状だっ







降谷さんに何とかこの状況を伝えたいが


あいにく盗聴器にバカ正直に助けは求められない


が…



意識保つのもキツイ…どんだけ強力なクスリなんだよ…っ


時間がないのも確か



確か盗聴器は袖口…



せめて手が解ければ小声でも伝わるのだが…





そういえば警察学校時代に…







あることを思い出し、行動に移した##NAME2##


西川たちからすれば、苦しんでいるが故の行動と捉えられただろう



だが、降谷さんなら…必ず気づいてくれる…






まだ…






だめ…







必死に意識を保とうとするが、上野という男に仰向けにされ



キスされた



と同時に口の中に液体が入ってくる




『っ、ぐ…っ ごほっ、ごほっ


な、なにをっ』




西「あぁ、さっき嗅がせたのはバラっていうクスリをハンカチに染み込ませたヤツ

んで、今のが原液ってワケ」






原液?






『っ…ば、ばら…? クスリ…?
固形じゃ…ない、の?』



西「…ほら、言ったろ?
こいつは無害な一般人だってな」


上「…そうみたいだな?」



『…っ』



グラグラする





西「まぁこれからながーい付き合いになるだろうし?教えてあげるよ」



上「バラってのはもとは液体で、それを結晶化させたときの形がバラに似てるからって由来なんだよね~」



西「“自分の理想図”を見れる

夢のクスリだ」





『…夢の、クスリ…?』




上「あぁ、そうだ

“俺達”が生み出した




理想のクスリさ!!」







理想のクスリ?







人の身体を破壊するものが…理想?





見ているのは結局夢で、現実は何も変わっていないのに?












『………………んな』



上「あ?」



『自惚れんなっ!!』





気力だけで体を起こし、片膝を立てる




『…っ、…人はっ!この世界じゃ結局は1人で立って歩かなきゃいけない!!!

でもっ手をかしてくれる人はいる

助けてくれる人がいるっ



今、私たちが生きている場所はここだ!!



それに目を背けてっ、ただ幻想に逃げてるだけの人間がっ


人助けしてるみたいにいうなっ!!!!!』
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