第四話 クスリ
降谷side
扉の前で待っていると、しばらくしてベッドのきしむ音が聞こえた
普段の##NAME2##は、一度相手をその気にさせて油断させてから酒を薦め、酔わせて情報を聞き出す
酔って記憶をなくすことが多いからだ
ターゲットの始末命令が出ていなければ、大体は酔わせて記憶を失くして去る
これでターゲットの命を奪わずに情報を取り、かつ証拠を残さないやり方だった
にも関わらず…
ギジッ ギィッ
降「…ん?」
聞こえてきたのはスプリングが軋む音
…ここに来るまでに相当飲ませたはずだが…
酒に強い男だったようだな
そして聞こえてくる##NAME2##の声…
降「…勘弁してくれ…;」
嫌悪感からではない
誰が好き好んで好きな女が他の男(任務とはいえ)に抱かれる時間を聞いていなければならないんだ
一瞬、この場から離れようかとも思ったが…
間違って中に入られたらそれこそ##NAME2##の努力が無駄になる
諦めてスマホをイジり、事前に準備していたウイルスをここの監視カメラと繋がるコンピュターへ送る
これで無人映像とすり替えられるはずだ
…………あとは…
どうやってこの時間をやり過ごすか…
イヤホンで音楽でも聴いていようかと思ったが、それでは##NAME2##の身に危険が迫っているか察知できない
…つまり…
『んっ…はぁっ…っ』
…………耐えるしかない…
そしてしばらくしてシャワーの音が聞こえた
…が、かれこれ20分は経つ
化粧などはこのホテルを出るまで落とせないだろうし、髪形も時間短縮の為には濡らさないほうが無難だろう
…事後処理とも考えられるが、##NAME2##がそんなヘマをするはずがない
……………ということは
降「(身体を洗っているだけ…のはずだが…まさか何度も洗っているのか?)」
そう思っているとシャワーが終わり、ものの3分ほどで部屋から出てきた
『すみません。遅くなりました』
バ「気にするな
…終わったのか?」
『えぇ、無事に…あとは帰るだけです』
そう言ってエレベーターへと向かう##NAME2##の後ろ姿を見て、違和感を覚えた
降「(?…歩き方、か?………まさか;)」
エレベーターを待ている間に##NAME2##の顔を伺うと、少し苦しそうな表情だった
降「…(やはり…腰か…;)」
歩き方、立ち姿、そして決定的なのは苦しそうな表情
無意識に左手が##NAME2##の腰へと回った
『!?
…え、っと…降谷さん?』
突然の行動に驚いたようで、焦ったようにこちらを見上げる
自分でもこの行動に驚いていたので、誤魔化すように##NAME2##を労わった
降「…今回は手ごわいやつだったみたいだな」
『!…すみません』
降「謝る必要はない
叱っているわけじゃないんだ
ただ…たぶん、相当無茶させられただろう?」
『っ!////』
叱ったつもりはないが…勘違いさせてしまったようなので訂正する
身体を労わる言葉をかけたが…この様子では自分の声が俺に聞かれていたことにも気づいているだろう
固まってしまった##NAME2##を見て思わず笑いが凝れてしまった
『っ!わ、笑わないでくださいよ!///』
降「いや、すまない
…今日は戻って、ゆっくり休め
疲れただろう?」
腰に当てていた左手を頭へ移動しポンポンと撫でた
だがその手に##NAME2##は手を被せ、頭から外した
『上司がまだ頑張っているのに、部下の私が帰るわけにはいきません
でしょ?(ニコ)』
負けん気の強い##NAME2##が簡単に言うことを聞くとは思っていなかったが…
顔を上げ鋭い、力強眼光を向ける##NAME2##に圧倒されてしまった
少し真面目すぎないか?
降「…はぁ。今日くらい、甘えていいんだぞ?」
項垂れるように左手を下した降谷に、##NAME2##はクスクスと笑いながら到着したエレベーターに乗り込んだ
『でも、今回は##NAME3####NAME4##としても僥倖でした』
降「僥倖?」
『えぇ。まさかの、藤岡祐樹は…
バラの密売組織の幹部でした』