第四話 クスリ
『すみません。降谷さん』
降「何がだ?」
『付き合ってるって勘違いされてて…ご迷惑かけました…;』
車の中へ入るなり降谷へ謝罪する
潜入中の降谷にとっては特定の彼女ができるというだけでもマイナス要因になりえる
やっぱり今後ポアロへは行かないほうが良いのでは…
そう思っていたのに、降谷から帰ってきた返事が意外過ぎて固まってしまった
降「…むしろ安室と##NAME4##が付き合っているほうが都合がいいんじゃないか?」
『……(キョトン)』
降「…嫌か?」
『いえっそういうわけでは…
けど安室透は私立探偵でポアロでバイトしている好青年なのに…彼女なんか作って支障が出るんじゃ…』
降「そうでもないさ
それに…」
『それに…?』
降「…ポアロの売上になるのは嬉しいが…
潜入捜査官が頻繁にSNSに顔が出るのはマズイだろう?」
『あぁ;確かにそうですね;』
つまり、女子高生に写真を撮られSNSに上げられるのがよろしくないから、彼女ができたことにして少し波を落ち着かせようという魂胆の様だ
降「梓さんも少し困ってたしな…炎上するって」
ピクッ
『……………わかりました
でも今日梓さんに付き合ってないと言ってしまったので、本格的に彼女として動くのは1ヶ月後にしましょう』
降「わかった
…で?お前は何を悩んでるんだ?」
『…(キョトン)
…え?さっきのって登庁するから一緒に来いっていう意味じゃ…』
“梓さん”呼びに思わず反応してしまったが、降谷は気がついていないようだ
危な…と思っていると、意外な質問が飛んできて2度目のキョトンをしてしまった
私の返答を聞いた降谷さんが大きくため息をついた
降「…お前、彼氏いたよな?」
『…なぜ降谷さんが私の彼氏情報を知ってるんですか;』
思わず上司に対してではなく降谷“先輩”として返してしまった
降谷さんも気づいてるが、気にしてない…
というよりは降谷さんも今は私を部下ではなく後輩として扱うつもりだろう
降「諸伏を筆頭に調べてたぞ
…警察学校時代は月一で告白されていたともな」
『…;
高校時代は確かにいましたけど;
警察学校時代はいませんでしたよ…
毎日へとへとで起きて寝るの繰り返しでしたし;
っていうかなんで高校の時の事知ってるんです!?もしかして祐実(ゆみ)が話しました!?』
坂田祐実
高校から警察学校まで同じでよくつるんでいた
成績も1位が##NAME2##、2位が祐実で運動も2人で独占していた
…おしゃべりで彼女は松田先輩の事が好きだったはず…
確定した
降「…まぁ大方お前の予想通りだ」
『…(今後会ったらシメる)』
降「確か今は捜査一課にいるんだったな」
『はい
本当は警視庁公安部から誘われてたみたいですけど、“現場で人の為にバタバタ動いてるほうが性に合ってる”
そういって今もバタバタしてるみたいですね…』
降「そうか…」
警察庁警備局警備企画課所属の公安警察官
ここに入ったからには覚悟はできていた
危険な場所に身を置くのだから…
親しい友人と連絡をするだけで巻き込んでしまう可能性がある
一応降谷さんには入社当初、祐実なら「同じ警察官だし問題はない。が、巻き込まれる可能性もゼロじゃない…あとはお前の判断に任せる」と気遣ってくれた
ただでさえ女性職員が少ないからと気を使ってくれたのだが…祐実を巻き込む可能性を残したくなかった
今はそれでよかったと思っている
成り行きでならともかく、故意に連絡を取っていて組織に怪しまれ人質に取られたりしたら…
それもジンが相手だったら人質にするよりまず殺すだろう
そう思うとゾッとする
そう考えているうちに着いたようだ
降「着いたぞ」
『はい
…はぁ~…これから書類地獄かぁ…』
降「さっさと終わらすぞ」
『はぁい』
現在18:00ちょうど
日付を超える前には帰れそうだ