第三話 組織の任務
『あ。ジンとウォッカは退室してください』
ジ「…わかった」
ウ「え?ア、アニキ…!?」
パルの申し出に素直に従ったジンに驚きつつも後ろをついていくウォッカ
勘違いされたくないから言っておく
『私のやり方を盗まれたくないだけですから、安心してください?ウォッカ
ジンも理解してくれています
あと…
お目汚しになりますから(ニコ)』
それからジンとウォッカは「報告は終わり次第しろ。後始末はこっちでやる」とだけ言って部屋を出て行った
そして自前の盗聴盗撮発見器を始動させて安全を確認する
『さて…
お待たせしました』
男に話しかけるが、ガクガクを震えるだけで耳に入っていないだろう
『…私の目を見てください』
男は数秒、固まっていたが
ゆっくりと顔を上げた
そして少し目を見開いていた
…たぶん、“パル”の顔から“##NAME1####NAME2##”になっているからだろう
『…先ほどはああいいましたが…
あなたを助けたい
詳しく話を聞かせてくれませんか?』
男「し、信用できるか!!!!
どうせそういって情報を取るだけ取って殺す気だろう!?」
『そう思うのも無理はないですが…
私の目、もう一度見てくださいますか?』
男「…」
ここで警察手帳を見せれば一番早い、が…
彼が“本当に”タダの資産家だという確証もない
もし、これがジンたちが仕掛けた罠だったら?
彼が本当は組織の人間だったら?
本当にクスリの情報が欲しいためだけにこの組織に入り込んできたの?
こちらが手札を見せるのは相手が本当の事を話してくれた後で、だ
男「…俺は…っ
普段は資産家で…、っ、でもそれだけじゃ食っていけなかったからクスリの売買に手ェだしたんだ…っ!
最初は少しだけのつもりだったんだ!
けどっ
“アイツら”にもっと、もっとって煽られてるうちにっ、この組織のクスリの事が耳に入ってきて…っ
その情報を取ってこないとっ
妻を殺すって脅されたんだ!!」
………ちょっと待て
『…その“アイツら”とは?』
男「…俺と会ってるやつは“窪倉(くぼくら)”って男だった
だが窪倉の上に幹部とボスがいるみたいな口ぶりだった」
『と、いうことはあなたを脅してきたその窪倉も使われてた可能性がありますね』
…思ったより根が深そう…めんどうになってきた…
『その窪倉という男とは連絡は取ってますか?』
男「あ、あぁ…こっちのクスリがなくなったら窪倉が補充に来てたから…」
と、いうことは窪倉が所属する組織自体クスリ
を生成していると考えていいだろう
その窪倉に脅されて黒の組織のクスリ開発技術に目をつけた、と…
『この組織の事はその窪倉から?』
男「そうだ…」
『なぜそんな危険な…あぁ、奥さんを盾にされたのか…』
家族を盾に、かぁ…
『でも奥さんを盾にとられたからって、逃げることもできましたよね?引っ越しとか…
そういう考えには至らなかったんですか?』
男「考えたさ!!
けどっ、金を借りてて…っ」
なるほど
『つまり、事の発端は資産家業の方で金を借りてて?その返済が間に合わなくなってクスリ売買に手を出すよう唆(そそのか)され
返済がまだ間に合わなくてとうとう奥さんを盾に取られてこの組織に行って来いと言われた、と…』
男「…そうだ」
『事情は分かりました
この組織に入るのを手引きしたのは?』
男「…」
『大丈夫、悪いようにはしません
(私は、ね…)』
男「…_____だ」
『わかりました…
ちょっと待ってくださいね?』
部屋から顔を出し、ジンとウォッカがいないことを確認する
気配でいないことはわかっているが、念の為だ
…というか信用しすぎじゃない?大丈夫?
心配になってしまう
一先ずいないと確認できたので、こちらの情報も与えよう
なんせ…どんな理由があろうとこの人も逮捕対象なのだから
『では、あなたの信頼に答えましょう』
胸元から警察手帳を取り出す
『警察庁警備局警備企画課所属公安警察官
##NAME2####NAME1##と申します』