1.

 中学二年生、三年生と二年弱かけて、わかったことがある。
 満月の日の夜に、動物になること。
 十二月は全身が変化してしまうこと。
 初めて迎えた十二月の満月の日はなぜだかあまり記憶がない。走る四本の足裏に住宅街の屋根の冷たさが伝わってくる感覚と、両眼で見つめる月の光がなんとも甘美な心地だったことだけを覚えている。気づけば山中で眠っていて、人間の姿に戻っていたところを朝一で登ってきた登山客に発見されて保護されたのだ。その山は施設から二十駅も離れた場所に位置していた。
 施設では中学生だからと個室が与えられていたため、たとえおかしな体になっていても、部屋にこもりさえすれば誰にも気づかれなかった。毎月の歪な動物の部分を目に焼き付けていたら、俺はどうやらそこらの犬ではなく、日本では絶滅した狼という動物に変化しているようだった。
 検索結果に出てきた狼の画像を今でも鮮明に覚えている。他の動物を襲い、肉を食らい、口元を血液で赤黒く汚した狼の画像が。その一枚の写真は、俺の人でない部分に対する嫌悪感をより増長させた。俺もいつかこうなってしまうのではないかと、誰かを食い殺してしまうのではないかと、自らを恐れた。
 しかし、見た目全てが変わってしまっても声だけは人間のままだった。狼の姿なのに人間の声ですすり泣く姿は、滑稽に見えるだろう。俺は人間と狼、どちらにもなりきれずにいるのかと考えるとあいまいな立ち位置に嫌気が差した。
 医者も笑うくらいだ。誰かに打ち明けたところで、どうせ笑われるに決まっている。このことは隠しておくべきだ。
 そう考え、満月の夜を怯えながら一人で何度も耐えた。自分の下の名前に入っている「月」の字がひどく恨めしかった。
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