1.
情報の授業でタイピングの楽しさを知ってしまった俺は、パソコン部への入部を決めた。顧問の講師は貪欲に速さと正確さを求める俺を歓迎し、授業で習う範囲より広いことを色々と教えてくれた。
講師のタイピングは俺のそれと比較にならないくらい速く、正確だった。両手の指が瞬く間に動き、タイピングサイトで指示された問題をミスなくクリアしていく。スコアも俺の到達したことのない、はるか上のランクだった。一文字ずつぽちぽちと打つ俺とは違っていて、彼のことを俺は尊敬するようになっていた。
小学校を卒業し、中学校でもパソコン部に入った。地元の中学だったからいじめは相変わらずだったが、週一のクラブ活動を支えにどうにか学校に通った。
部活動のタイピングに物足りなさを覚えた俺は、小学校の情報の講師と個人的に連絡を取り合い、会って相談した。すると、家でも練習したらもっと楽しくなるということで、安くパソコンを入手する方法を教えてもらった。しかし、提示された金額はお小遣いでは途方もない時間のかかるものだった。
俺にとってパソコンは、はるか遠いものなんだ。学校で使わせてもらっているのはその学校のおかげなんだ。俺が使う資格なんて、本当はないんだ。
諦めかけた俺に、講師はお下がりのノートパソコンをくれた。黒く小さく、型落ちしているものの、先ほど中古のサイトで見たパソコンよりも随分いいものだった。
「いいんですか?」
「もちろん。大神くんの役に立てたら嬉しい」
やはり口の端だけ上げて笑う講師は、卒業しても俺の憧れのままだった。
そしてそのノートパソコンを使い、タイピング技術を帰宅してからも磨いた俺は、パソコン部で尊敬されるようになっていた。
「月臣すげーじゃん!」
「指の動き見えねー……」
「今度教えて!」
パソコン部では誰も俺のことを責めない。俺と同じような人が集まるからだろうか。褒められて嬉しかったのに、俺は笑うことができずに感謝をぼそぼそと伝えることしかできなかった。そんな自分が嫌だった。
その頃だった。体に異変が起き始めたのは。
講師のタイピングは俺のそれと比較にならないくらい速く、正確だった。両手の指が瞬く間に動き、タイピングサイトで指示された問題をミスなくクリアしていく。スコアも俺の到達したことのない、はるか上のランクだった。一文字ずつぽちぽちと打つ俺とは違っていて、彼のことを俺は尊敬するようになっていた。
小学校を卒業し、中学校でもパソコン部に入った。地元の中学だったからいじめは相変わらずだったが、週一のクラブ活動を支えにどうにか学校に通った。
部活動のタイピングに物足りなさを覚えた俺は、小学校の情報の講師と個人的に連絡を取り合い、会って相談した。すると、家でも練習したらもっと楽しくなるということで、安くパソコンを入手する方法を教えてもらった。しかし、提示された金額はお小遣いでは途方もない時間のかかるものだった。
俺にとってパソコンは、はるか遠いものなんだ。学校で使わせてもらっているのはその学校のおかげなんだ。俺が使う資格なんて、本当はないんだ。
諦めかけた俺に、講師はお下がりのノートパソコンをくれた。黒く小さく、型落ちしているものの、先ほど中古のサイトで見たパソコンよりも随分いいものだった。
「いいんですか?」
「もちろん。大神くんの役に立てたら嬉しい」
やはり口の端だけ上げて笑う講師は、卒業しても俺の憧れのままだった。
そしてそのノートパソコンを使い、タイピング技術を帰宅してからも磨いた俺は、パソコン部で尊敬されるようになっていた。
「月臣すげーじゃん!」
「指の動き見えねー……」
「今度教えて!」
パソコン部では誰も俺のことを責めない。俺と同じような人が集まるからだろうか。褒められて嬉しかったのに、俺は笑うことができずに感謝をぼそぼそと伝えることしかできなかった。そんな自分が嫌だった。
その頃だった。体に異変が起き始めたのは。
