1.

 桜が散ってもいじめは終わらない。助けてくれる人はいなかった。言葉に、暴力に、ただひたすらに耐えるしかなかった。俺は感情を表に出すことをやめ、下を向いて話すようになり、次第に人を信じられなくなっていった。もちろん友達なんていなかった。
 小学四年生になった。四年経ってもいじめられっ子というポジションは変わらない。
 そろそろクラブ活動が始まるらしい。なにも興味の湧かない俺は、帰宅部を選ぼうとしていた。
 昼休み、俺は一人男子トイレの個室で時間を過ごす。狭いけど、俺が俺でいられるのはここしかなかった。春なのに空気はひんやりとしている。壁の白いタイルは俺を冷たく見つめ返す。
 次の授業は情報、というらしい。みんなでパソコン室というところに行くそうだ。どうせつまらない授業に違いない。またペアを作れって言われてひとりぼっちになるんだ。それで先生と組まされる。みんなに笑われる。俺は情報の授業に一切期待していなかった。
 教室に戻ると、学年が変わって新しくなった、背の高いいじめっ子が俺を見下ろしていた。クラスの中では小さい俺は、それだけで「チビ!」と新たなレッテルを貼られていた。
「次の授業、パソコン使うんだってさ。大神、どうせパソコンもできないんだろ?」
 またからかわれた。俺は下を向いていつものように心を無にする。こうすればすぐに終わるって知っているから。反応したらもっと長引く。気づかれぬよう静かに、細く長く息を吐いて、俺は心を乱されないようにした。
「はんのーなしかよ」
「つまんねーの」
 つまらない、つまらない、と足音が俺の耳を通っては抜けていく。
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