1.
佐原さんは俺の目の前で足を止めた。焦るバイトを一瞥すると、いつもの声色でこう呟いた。
「かっこ悪いところ、見られちゃったね」
俺はスマホから顔を上げて、少しだけ佐原さんの顔をうかがう。彼は苦笑いをして俺を見つめていた。
「負けないよ」
いつもの明るい声だったが、こちらを見つめるその焦げ茶の両眼には確かな闘志が宿っていた。年下のこんなちっぽけな男なんか出し抜いてやる、結ばれるのは自分だと、主張しているかのように。
「……」
俺はなにもできず、おろおろと視線を左右に動かす。こんな、身長も社会的地位も笑顔だって負けている俺は、どうやったらこの人に対抗できるというのだ。
佐原さんは数秒俺の前にいたかと思うと、怯えるライバルに満足したのか踵を返して裏口へ向かった。その先に綾部さんの姿はもうなかった。
佐原さんの背中をどのように見ればいいのか、わからなくなった。数少ない尊敬している大人なのに、好きな人が同じであるということ、たったそれだけのことで、こんなにも思考はまとまらなくなる。
ドアの閉まる音が聞こえる。帰路に向かうバイト仲間が動けない俺を通り越していく。
「かっこ悪いところ、見られちゃったね」
俺はスマホから顔を上げて、少しだけ佐原さんの顔をうかがう。彼は苦笑いをして俺を見つめていた。
「負けないよ」
いつもの明るい声だったが、こちらを見つめるその焦げ茶の両眼には確かな闘志が宿っていた。年下のこんなちっぽけな男なんか出し抜いてやる、結ばれるのは自分だと、主張しているかのように。
「……」
俺はなにもできず、おろおろと視線を左右に動かす。こんな、身長も社会的地位も笑顔だって負けている俺は、どうやったらこの人に対抗できるというのだ。
佐原さんは数秒俺の前にいたかと思うと、怯えるライバルに満足したのか踵を返して裏口へ向かった。その先に綾部さんの姿はもうなかった。
佐原さんの背中をどのように見ればいいのか、わからなくなった。数少ない尊敬している大人なのに、好きな人が同じであるということ、たったそれだけのことで、こんなにも思考はまとまらなくなる。
ドアの閉まる音が聞こえる。帰路に向かうバイト仲間が動けない俺を通り越していく。
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